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第六章 家族と暮らす
8 正面入り口の受付 成人
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城の正面の入り口にはまだ、行列はできていなかった。
「並んでない」
「門がまだ、一般には開いていないからな。この時間に門を出入りできるのは、通行証を持っている者だけだ。食材を運ぶ店の者や、通いで仕事に来る文官や使用人だな。警備隊や兵士は、基本的に城の敷地内に居住している。文官や使用人も、独り身は特に、敷地内に居住している者が多いぞ。城を挟んで離宮と反対側の区画に居住区があって、そこからの通いだ。外部の者は門で一度、通行証を確認している上、食材の搬入口や使用人の入り口は別にある。正面から城に入る時にも、通行証を見せるだけだから、並ぶようなことにはならない」
入り口、色々あるのか。
俺、通行証ってのを持ってない。もらっておけば良かったなあ。今まで、無くても入れたから知らなかった。
「通行証……」
「赤い服を着ていたら、どの入り口でも止められるはずはないんだがな」
そうなの?服の赤色が通行証?
俺は昨日も上着に、お気に入りの赤いポンチョを着ていたんだけど、入れなかったな。あれ?
正面の入り口には、特別な受付ができている。今日も、皇子様誕生のお祝いを言いに来た人や、お祝いの品を届けに来た人をしっかりと確認するんだろう。
俺たちが近付くと、受付の準備をしていた人も、警備の人も、掃除中の使用人も、登城してきた人も、全員が一斉に包拳礼の姿勢を取った。揃った礼は、背筋が伸びた美しいものだ。緋色への敬意。俺も自然と背筋が伸びる。隣の緋色はいつも通りの様子で、ああ、おはよう、と言った。
くうぅ。緋色、格好いい。
「少し聞きたいんだが」
「はっ」
緋色に話しかけられた受付の人が、返事をしながら顔を上げた。少し驚いている。
緋色は、俺の肩を抱くように自分の体にくっつけて受付の人を正面から見る。
「こいつ、知ってるよな?」
「は、はいっ」
いつもの、城に常設の受付の人ではない、皇子様誕生に伴って設置された特別な受付の人だから、俺は相手に見覚えはない。それにいつもは、入り口の警備の兵士に挨拶したら通してもらえていたから、いつもの受付の人でも、そんなに覚えてる訳じゃない。
ごめん。俺はあなたを知らない。
でも、その人ははっきりと言った。
「存じ上げております」
「名を?立場を?」
「成人さまは、緋色殿下のご伴侶でございます」
「その通りだ。成人が、俺と共にいなくても分かるか?」
「はい!」
返事は明確だった。
当たり前のことだと言いたげに、その人は緋色を正面から見上げる。でも、緋色は更に質問を続けた。
こんなに続けるなんて、緋色らしくない。
「この服装でなくても?」
今日は正装で行く、と緋色が言ったから、二人とも真っ赤な軍服だ。皇族しか身に付けることのできない赤。上から下まで真っ赤。これなら、誰が見たって皇族だと分かる。それを身に付けている人間のことを知らなくても、その貴色を見れば、誰もが礼を取るだろう。
けれど、俺が持ってる服の中には、目立たないように少しだけしか赤が使われていないものもあって、緋色の伴侶だと一目で分からない時がある。例えば、大好きな白いくまのパーカーは、帽子に付いてる目が赤いだけだから、正面からは赤色が見えない。
でも、緋色と話す受付の人の返事は明確だった。
「もちろんでございます」
「だよな。すまなかった。ありがとう」
緋色は、城の中へは入らずに踵を返した。
「よし。確認は済んだ。次行くぞ」
え?ここから入らないの?
「並んでない」
「門がまだ、一般には開いていないからな。この時間に門を出入りできるのは、通行証を持っている者だけだ。食材を運ぶ店の者や、通いで仕事に来る文官や使用人だな。警備隊や兵士は、基本的に城の敷地内に居住している。文官や使用人も、独り身は特に、敷地内に居住している者が多いぞ。城を挟んで離宮と反対側の区画に居住区があって、そこからの通いだ。外部の者は門で一度、通行証を確認している上、食材の搬入口や使用人の入り口は別にある。正面から城に入る時にも、通行証を見せるだけだから、並ぶようなことにはならない」
入り口、色々あるのか。
俺、通行証ってのを持ってない。もらっておけば良かったなあ。今まで、無くても入れたから知らなかった。
「通行証……」
「赤い服を着ていたら、どの入り口でも止められるはずはないんだがな」
そうなの?服の赤色が通行証?
俺は昨日も上着に、お気に入りの赤いポンチョを着ていたんだけど、入れなかったな。あれ?
正面の入り口には、特別な受付ができている。今日も、皇子様誕生のお祝いを言いに来た人や、お祝いの品を届けに来た人をしっかりと確認するんだろう。
俺たちが近付くと、受付の準備をしていた人も、警備の人も、掃除中の使用人も、登城してきた人も、全員が一斉に包拳礼の姿勢を取った。揃った礼は、背筋が伸びた美しいものだ。緋色への敬意。俺も自然と背筋が伸びる。隣の緋色はいつも通りの様子で、ああ、おはよう、と言った。
くうぅ。緋色、格好いい。
「少し聞きたいんだが」
「はっ」
緋色に話しかけられた受付の人が、返事をしながら顔を上げた。少し驚いている。
緋色は、俺の肩を抱くように自分の体にくっつけて受付の人を正面から見る。
「こいつ、知ってるよな?」
「は、はいっ」
いつもの、城に常設の受付の人ではない、皇子様誕生に伴って設置された特別な受付の人だから、俺は相手に見覚えはない。それにいつもは、入り口の警備の兵士に挨拶したら通してもらえていたから、いつもの受付の人でも、そんなに覚えてる訳じゃない。
ごめん。俺はあなたを知らない。
でも、その人ははっきりと言った。
「存じ上げております」
「名を?立場を?」
「成人さまは、緋色殿下のご伴侶でございます」
「その通りだ。成人が、俺と共にいなくても分かるか?」
「はい!」
返事は明確だった。
当たり前のことだと言いたげに、その人は緋色を正面から見上げる。でも、緋色は更に質問を続けた。
こんなに続けるなんて、緋色らしくない。
「この服装でなくても?」
今日は正装で行く、と緋色が言ったから、二人とも真っ赤な軍服だ。皇族しか身に付けることのできない赤。上から下まで真っ赤。これなら、誰が見たって皇族だと分かる。それを身に付けている人間のことを知らなくても、その貴色を見れば、誰もが礼を取るだろう。
けれど、俺が持ってる服の中には、目立たないように少しだけしか赤が使われていないものもあって、緋色の伴侶だと一目で分からない時がある。例えば、大好きな白いくまのパーカーは、帽子に付いてる目が赤いだけだから、正面からは赤色が見えない。
でも、緋色と話す受付の人の返事は明確だった。
「もちろんでございます」
「だよな。すまなかった。ありがとう」
緋色は、城の中へは入らずに踵を返した。
「よし。確認は済んだ。次行くぞ」
え?ここから入らないの?
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