【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
575 / 1,325
第六章 家族と暮らす

10 優しい人  成人

しおりを挟む
 嬉しい言葉を聞いて、俺はぎゅっと緋色ひいろの服を掴んだ。
 俺が死ぬまで、変わることはない。
 緋色ひいろの言葉が頭の中で止まってる。
 俺が死ぬまで?緋色ひいろが死ぬまで、俺はずっと緋色ひいろの伴侶ってこと?俺が先に死んでも、ずっと緋色ひいろの伴侶は俺だけ?きっと俺は、緋色ひいろより先に死んじゃうけど、その後も俺を一番好きでいてくれる?
 嬉しい!
 
「何だ?ここから入れたのがそんなに嬉しかったのか?」

 俺に合わせて歩いてくれながら緋色ひいろが言う。
 違うよー。入り口なんてどこでもいいし。何なら、お城に入れなくても別に構わない。

緋色ひいろ、好き。大好き」
「知ってるよ」

 緋色ひいろは俺を抱っこして、口にちゅっとした。

「えへへ」

 嬉しくてそのまましがみついてるうちに、小さな部屋に入っていた。机と椅子が四つと、小さな水場がある。それと鍵のついた棚。兵士が一人中に居て、何か書類を書いていた。
 
「どうかしたか……」

 部屋に居た兵士は何か言いかけて、緋色ひいろを見た途端に素早く立ち上がり、包拳礼の姿勢を取った。
 おお、すごい。早い。

「仕事中に邪魔をしてすまない。出してほしい書類がある」
「はっ」

 この人も、昨日扉の前に立っていた人だな。三人で交代で入り口を守っているのかな。

成人なるひとのことを俺の愛し子と書いてある文書と、この入り口を通ることのできる人間の名簿だ」
「は。いえ、しかしそれは……」
「出せ」

 部屋に居た兵士は、じいやに引きずられるように部屋に入ってきた兵士をちらりと見た。その兵士が、すっかり疲れたような顔で首を縦に振る。
 それを見て、部屋に居た兵士が、腰に付けていた鍵を棚の扉にぶら下がる鍵の鍵穴に差し込んで外した。棚の中には書類が幾つか積み上がっていて、そっと何枚か捲っては確認した後で二枚取り出す。
 すぐに目を通した緋色ひいろが、ふん、と小さく呟いてそれを常陸丸ひたちまるに渡した。

「殿下!」
「何だ?」
「それは、誰もが見ていい文書ではございません!」

 声を上げながら、常陸丸ひたちまるの手から書類を奪い返そうとした兵士は、常陸丸ひたちまるに片手で押さえられた。

「戸籍課に行きますか」

 兵士を片手で制圧して、書類にざっと目を通した常陸丸ひたちまるが言った時には、緋色ひいろはもう部屋の戸を開けていた。

緋色ひいろ殿下!規則は守って頂きたく……」
「黙れ。近衛隊の文書を近衛隊の常陸丸ひたちまるが読むことに、何の問題がある?」
「あ、いや、は……」
  
 え?もしかして、この人、常陸丸ひたちまるも皇族を護る近衛隊だということを忘れてたの?今日は、きっちり正装してるのに?

「弁えろ。近衛隊の序列を持ち出されたいのか?」
「いえ。いいえ!ご無礼の程、誠に申し訳なく……」
「俺ではなく、常陸丸ひたちまる成人なるひとに謝れ。此度の件、この文書に従った行動であると言うことで、直接の咎めはせん。だが、お前らの顔は覚えた。俺の不興を買ったこと努々ゆめゆめ忘れるな」
 
 常陸丸ひたちまるとじいやに手を離された兵士二人は、床に正座をして、大きく頭を下げた。

「無礼を働き、誠に申し訳ございませんでした」

 立ち止まって謝る時間を与えた緋色ひいろは、やっぱり優しい。
しおりを挟む
感想 2,500

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...