【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

16 うちへ帰ろう  緋色

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「邪魔して悪かった」
「いえ」

 退出の挨拶をすると、八条薫は残念そうに頭を下げた。

「殿下。そのうち私と、ゆっくり話す時間を取って頂きたい。私は、殿下の提案された、国民全てに名字を渡す案を実現しようと思っています。その際に、全国民のきっちりとした戸籍を作成して、皆がなるべく平等に学んだり、免許を取ることのできる国にしたい。あれは、見事な案です!協力しあいましょう」
「…………ん、そうか」

 仕事をしばらく投げ出して、遊び回るつもりだと言い出し難くなってしまったな。家出も、難しいか。

「はは」

 常陸丸ひたちまるが笑っている。俺がしばらく仕事をさぼろうとしていたことがバレてるんだろう。

「……結婚休暇が終わってからでいいか?」
「ええ、ええ、勿論です。せっかくの制度ですからお使いください。お二人が仲睦まじいことは、国民の喜びですよ」

 そうでない者も、それなりに居るようだが。まあここは、その言葉を有り難く受け取っておくか。

「俺は、しばらく城へは出仕せん。話したいなら離宮の執務室へ来い。お前の机を用意しておく」
「え?」
「殿下。流石に戸籍課の部署長を引き抜くのはそう簡単には……」

 うるさいぞ、常陸丸ひたちまる

かおるの机を、うちの執務室にも置いておくと言っただけだろ」
「はいはい。それでは八条さま、この度はお騒がせした上にお時間を取らせてしまい、すみませんでした。殿下と成人なるひとの戸籍の作成、ありがとうございます」
かおる、ありがと。俺の名前、綺麗に書いてくれて、ありがと」

 ぺこりと頭を下げる成人なるひとが可愛い。
 そうだ。
 俺は、拾った当初からこいつを可愛いと思っていたな。その気持ちは、全く変わることなく何年も経っている。戦争で疲れた精神が見せた間違いにしては、長いことだ。間違いでも構わない。気持ちが変わらない限り、俺は成人なるひとの側を離れないのだから。

緋色ひいろ

 俺に伸ばされる右手を掴む。俺を見るその表情かおが、とても好きだ。
 成人なるひとからの気持ちは、面白いくらいに伝わってくる。何も話さなかった時でさえ、緋色ひいろ大好き、という声が聞こえてくるかのようだった。

「近衛隊室に戸籍の写しを持って行って情報を修正したら、休暇届けを出して離宮うちに帰ろう」

 せっかく城に出入り自由になったのに悪いな、成人なるひと
 俺たちはしばらく、城へは近寄らない。
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