【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

20 前へ  朱実

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 あれは、敵の兵器だった。はっきりと確かめられてはいないが、うちの兵士を幾人も殺したに違いない兵器だったのだ。
 今、人の子のように過ごしているからといって、簡単に人扱いできるものではない。緋色ひいろは一体いつになったら目を覚ましてくれるのだろう……。

「お寛ぎのところ、申し訳ございません」

 す、と侍女が寄ってくる。

「近衛隊長が、皇太子殿下にお話を、と」
「ああ」

 お互いの時間が合わず、今日は話すことを諦めていたが、わざわざ訪ねて来てくれたのか。

「会おう」

 立ち上がりかける私の手を、赤璃あかりが押さえた。

「ここでお話を聞けばいいわ。授乳はすんだし」
「あ、いや、少し出てくる」
「お願い、少し待って」

 見ると朱音あかねは、乳を咥えたまま動きを止めている。赤璃あかりは慣れた仕草でその頬をつついて口を離させると、手早く自らの服を元に戻し、縦に抱き上げた。せっかく寝ているのに?と思ってみていると、優しく背中をとん、とん、とん、と叩く。幾度か繰り返すと、朱音あかねの口からけぽり、と音がして飲んだ乳が少しこぼれ出た。

「あ」
「ふふ。上手」

 焦った私をよそに、優しく笑った赤璃あかりが横向きに抱き直す。朱音あかねの乳の付いた口元を優しく拭いて、寝やすいように抱え直す様子をただ見ていた。

「布団へは置かないのか?」
「すぐに置いたらぐずるのよ。少し腕の中で安心させてから移すわね」

 これとよく似た会話を緋色ひいろとしたような気がする。
 そう。成人なるひとだ。あれはよく、緋色ひいろの胸にうつ伏せて寝るのだ。
 すぐに離すとぐずるからな。しばらくこのまま寝かせてやるんだよ。
 口元を緩めながらそんなことを言っていた……。

「失礼します」

 余計なことを考えていたら、近衛隊長が部屋へと入室してきてしまった。
 しまったな。別の部屋へと移動するつもりが。
 
「この度は、皇子殿下のご誕生、誠におめでとうございます」

 ぴしりと綺麗な包拳礼を決めて、禅院ぜんいん守武もりたけが立っている。

「ああ、ありがとう。わざわざ足を運ばせてすまなかったね。座ってくれ」
「は」

 どうにも予定通りに進まない事態というのはままあるものだ。それが、ひと息に押し寄せてくるというのが頂けないが、慌ててもどうにもならぬ。起きた出来事を変えられぬ以上、この先を自分にとって良いように動かしていくしかないのだから。

「今日の出来事を教えてくれるかな?」
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