【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
592 / 1,325
第六章 家族と暮らす

27 留守番の朝  力丸

しおりを挟む
「時間がかかる?」

 朝、朱実あけみ殿下は挨拶もそこそこに緋色ひいろ殿下を呼んで来て欲しい、と言った。俺は、時間がかかります、と答えるしかない。

「はい。たぶん、いつもの温泉宿か動物園だと思うんで。そうですね、往復三時間……と説得の時間、休憩時間も欲しいです。半日で連れ帰れたら褒めてください」
「は?え?家にいない?」
「いませんよ」

 胸に沸き上がるむかむかを抑えきれずに、ぶっきらぼうな物言いになってしまう。
 くそー。成人なるひとの護衛、なんで半助はんすけなんだよ。俺でいいじゃん。

「朝出たのか?いや、昨日すぐに結婚休暇届は返しただろう?」
「俺が家に帰った時にはもう、いなかったです」

 謁見室で、祝いの言葉を述べるお偉いさん達を眺めている間に、行っちまいましたよーっと。あー、昨日俺が休みだったら、連れてってもらえたのかなあ。くそー。明日休みだから、追いかけようかな。成人なるひとと義姉上の体力合わせだから、そんなにすぐ移動しないだろ。今日は動物園で間違いない。そのまま、同じ宿にもう一泊。問題はその後だな。結婚休暇って最大七日間取れるんだっけ?緋色ひいろ殿下は絶対、目一杯使う。じゃあきっとそのまま動物園の向こう側に行く。なら、どこだ?

「では、結婚休暇を取っているってことか?許可していないのに?」

 あああ、もう。
 今、緋色ひいろ殿下と兄上の行動を読んでるんだから邪魔しないで欲しい。

「まあ、結婚したら結婚休暇は取れるものですし」
「結婚……」
「何か、婚姻届が受理されていなかったのが、昨日受理されたらしいので間違ってはいないかと」
緋色ひいろはとうに、結婚記念の旅行なんて行ったじゃないか」
「行きましたねえ。赤璃あかり殿下が成人なるひとに教えた新婚旅行。兄上と義姉上も一緒に行きました。成人なるひと、嬉しすぎて楽しすぎて、新婚旅行は温泉と動物園に行くもんだと思ってますし、周りに勧めて回ってましたもん。で、緋椀ひまりさまも広末ひろすえもお勧めの温泉に行って、良かった良かったってまた知り合いに勧めて……。あー!」

 そういうことか!

「な、なんだ?」
「あ、すいません。いえ、えーと、半助はんすけ連れてったのってそういうことかと思いまして」
半助はんすけを連れていった……」
「はい。成人なるひとに護衛付けるって話で、緋色ひいろ殿下が半助はんすけを選んだって言うから、何でだよって思ってたけど、新婚旅行じゃん。壱臣いちおみさんもいなかったもん。あー、もう。なんだよ。いいなあ、くそっ」

 はあ。じゃあまあ、仕方ないか。
 あ、連れ戻して来いって言うなら、追いかけます。連れて帰れる気はしないけど、一応、仕事はします!えーと、命令書があれば届けて、帰って来てくださいってお願いの姿勢は貫きます。
 行きたいな、とわくわくしながら朱実あけみ殿下の前でぴしりと姿勢を正して待つ。

「あ、あの」

 隣で大きな体が困ったように揺れる。
 あ、忘れてた。

朱実あけみ殿下。半助はんすけの代わりに本日、俺と護衛を務めます。禅院ぜんいん武瑠たけるです」
「よろしくお願いします」

 がちがちに緊張した大きな体が包拳礼の形で固まった。いや、そんなに緊張してたら動けないぞ……。
 これを朱実あけみ殿下の側に置いて出掛けるのは無理かあ。
しおりを挟む
感想 2,500

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...