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第六章 家族と暮らす
45 晴れない心 朱実
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「おはようございます、皇太子殿下」
清々しい笑顔で力丸が言った。良い休みを過ごしたらしい。とてもとても機嫌が良い。こちらが心休まらない二日間を過ごしたというのに!
どんな休みであったかはもちろん把握している。休みの二日間、力丸は緋色と共にあったのだから。緋色の行動を全て把握している私が、共にあった力丸の行動も知っているのは当然だ。だが、簡単な報告書には書かれていない部分の旅の様子を聞きたかった。できれば、力丸から話してはくれまいか。
そんな期待を込めてしっかりと視線を送りながら、
「おはよう」
と、返事を返した。
笑顔の力丸は、綺麗な包拳礼の姿勢で頭を下げると、いつもの護衛の位置へと下がっていく。同じように挨拶をして下がっていた弥壌とも笑顔を交わしただけで、無駄口を叩くことはない。
当たり前だ。
そう当たり前のことだ。
この国の兵士たちの頂点に立つ近衛隊。そこに所属するためには、武の才能だけでなく主の側近くにあって、決して存在を邪魔だと感じさせないことが求められる。泉門院家は、そこが素晴らしい。護衛として気を配っていながらも、こちらまで強張るような緊張感を感じさせることがないのだ。まるで自然に近くにいながら、いざというときには無類の強さを発揮する。
敵に遭遇したときにも、護衛対象に危険が及ばないようにするだけでなく、不安になることがないように気を配っているのか、酷く殺伐とした雰囲気を出すことはない。……今まで遭遇した相手の実力が大したものでは無かったのかもしれないが。その上、見目が良いのだから、私が緋色を羨んで、家格がどうこう言う声を抑え、弥壌を近衛隊へと引っ張りこんだのは我儘ではないと思う。弥壌を近衛隊に入れた時、特例で近衛隊に所属させられていた常陸丸は喜んだのだから、誰にとっても良い話だったはずだ。
力丸には小さな頃から目をつけていて、まだ学生のうちにも見習いだとか何とか言って側に置いたりした。常陸丸は六歳から緋色の側にいるのだから、私の小さな我儘を咎められる謂れはない。
上手いこと自分の側に置けたと思ったのに、力丸にとっては私はただの仕事相手で、私には気安いのだと喜んでいた態度も、報告書に書かれた緋色との様子を読む限り、力丸にとっては仕事用の態度であったのだ。
何の連絡もせずに合流して、当たり前のように共に遊んで帰ってきた。
緋色にも力丸にも、それが特別なことで無かったことは、報告書から読み取れる。なんだ、それは。どうしたら、そんな関係が築けるというのだ。
力丸が戻ってきてもなお、私の心が晴れることはないのだと知った……。
清々しい笑顔で力丸が言った。良い休みを過ごしたらしい。とてもとても機嫌が良い。こちらが心休まらない二日間を過ごしたというのに!
どんな休みであったかはもちろん把握している。休みの二日間、力丸は緋色と共にあったのだから。緋色の行動を全て把握している私が、共にあった力丸の行動も知っているのは当然だ。だが、簡単な報告書には書かれていない部分の旅の様子を聞きたかった。できれば、力丸から話してはくれまいか。
そんな期待を込めてしっかりと視線を送りながら、
「おはよう」
と、返事を返した。
笑顔の力丸は、綺麗な包拳礼の姿勢で頭を下げると、いつもの護衛の位置へと下がっていく。同じように挨拶をして下がっていた弥壌とも笑顔を交わしただけで、無駄口を叩くことはない。
当たり前だ。
そう当たり前のことだ。
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敵に遭遇したときにも、護衛対象に危険が及ばないようにするだけでなく、不安になることがないように気を配っているのか、酷く殺伐とした雰囲気を出すことはない。……今まで遭遇した相手の実力が大したものでは無かったのかもしれないが。その上、見目が良いのだから、私が緋色を羨んで、家格がどうこう言う声を抑え、弥壌を近衛隊へと引っ張りこんだのは我儘ではないと思う。弥壌を近衛隊に入れた時、特例で近衛隊に所属させられていた常陸丸は喜んだのだから、誰にとっても良い話だったはずだ。
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上手いこと自分の側に置けたと思ったのに、力丸にとっては私はただの仕事相手で、私には気安いのだと喜んでいた態度も、報告書に書かれた緋色との様子を読む限り、力丸にとっては仕事用の態度であったのだ。
何の連絡もせずに合流して、当たり前のように共に遊んで帰ってきた。
緋色にも力丸にも、それが特別なことで無かったことは、報告書から読み取れる。なんだ、それは。どうしたら、そんな関係が築けるというのだ。
力丸が戻ってきてもなお、私の心が晴れることはないのだと知った……。
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