【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第六章 家族と暮らす

106 あなたを知りたくて  赤璃

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「急に、何の話?」

 驚いてから気を取り直した風に、朱実あけみが言った。
 それとも本当に驚いている?分からない。私ごときでは、その心の内は見えない。

「なると話をしていたの。好きな人と嫌いな人の話。なるは好きな人がたくさんいるけど、嫌いと思う人っているのかしら、と思って聞いてみたくて。そうしたらね、即答で赤虎せきとらさまが嫌いなんですって。他はいないって言うからあなたはどうなのかしら、と思ったのよ。あなたは、なると緋色ひいろ殿下の婚姻届を受理していなかったでしょう、二年間も。それで、なるは少し嫌な目にあったじゃない?だから、朱実あけみのことはどう思ってるの?って聞いてみたの」
「へええ。それは興味深いな。それで?私のことは嫌いではないの?」
「ええ。赤虎せきとらさまと同じようになるに銃を向けた人だけれど、弾が当たっていないし緋色ひいろ殿下に謝ったから嫌いではないんですって」
「ずいぶん昔の話だね……。だから緋色ひいろに銃を向けたことがあるかと私に尋ねたの?ならば銃を向けたよ?」
「その時、なるは緋色ひいろ殿下の腕の中にいたそうじゃない?なるに向けたその銃口は、緋色ひいろ殿下にも向いているわ」
成人なるひとはそう思ったってこと?私が緋色ひいろに銃を向けるなんて、本当にあり得ないよ」
「その状況は、誰が見ても聞いても、あなたは弟に銃を向けていると言うと思うわ。そして、緋色ひいろ殿下には向けていないけれど、なるには銃を向けたって何でもないことのように言うけれど、なるにも銃を向けてはいけなかったでしょう?だって既に緋色ひいろ殿下の大切な人だと分かっていたじゃない。なるを撃った赤虎せきとらさまはまだ皇族であったのに、その赤虎せきとらさまに怪我を負わせた緋色ひいろ殿下やその部下を不問にした上、赤虎せきとらさまを臣籍降下したんだから」

 薄く笑みを浮かべながら淡々と話す朱実あけみは、事実を述べているからこんなに冷静なのだろうか。淡々と話されると、次第に熱を帯びながら説明している私の分が悪いような気がしてくる。

「その辺りの采配は陛下の判断だよ。私は皇太子に過ぎないからね。皇族に残すなら赤虎せきとらより緋色ひいろだとの意見は述べさせてもらったけれども」
「そんな話じゃない!」
「ん?」

 柔らかく問い直されると、ますます苛々は募る。

「なるを緋色ひいろ殿下の伴侶と認めることだって陛下の賢明な御判断でしょう?その御気持ちに反して婚姻届を受理せず、あまつさえなるを殺そうとしたことは事実なのかと聞いているの!」
「私が成人なるひとを危ぶんでいたのは事実だよ。陛下の御気持ちに反したつもりはなかったけれどね。私が成人なるひとに銃を向けた際の事情としては、近衛隊の刷新を行うために自らの護衛の実力を知りたくて試したんだ。本気で撃とうとした訳じゃない。その上、最強の常陸丸ひたちまる緋色ひいろ成人なるひとのごく近くに居たんだよ。私ごときが銃を向けたところで、当たる訳がないだろう?」

 ううー、と唸ってしまいそうだった。そもそも銃を向けなければ、当たるも当たらないもないのだ。どんな事情があろうと、銃を二人に向けてはいけなかった。だってそれは、最も確実に人を殺せる手段なのだから。朱実あけみなら他に、いくらでも方法を思い付いていただろうに。

「本気で撃とうとしたよ」

 私が唸る横で、のんびりとお茶を飲んでいたなるが口を開いた。この子は、いつだってちゃんと話を聞いている。正確に、真っ直ぐに。

「それは、心外だな」
「だって俺は、殺気を感じて起きた」

 そう。それよ。殺す気だったのがいけないの!
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