【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
692 / 1,325
第六章 家族と暮らす

127 つーん  成人

しおりを挟む
「ほら、成人なるひと。今日のおやつ、プリンだぞ、プリン。冷たいおやつは、久しぶりじゃないか?」

 つーん。
 プリンは嬉しいけど、今、緋色ひいろとはしゃべらない。

「おや?成人なるひとと殿下、喧嘩中ですか?珍しい」

 くすくすとさいの笑い声。

「喧嘩ではないだろ。喧嘩中の奴が、喧嘩相手の膝の上に座ったりしないと思うぞ?」

 睦峯むつみね、今日は執務室に居たね。執務室で仕事してると、ちゃんと休憩を取るようにさいとお互いに見張り合えるからいいんだって。仲良しだ。
 休憩、大事。
 
成人なるひと、お冠ですよね?」

 おかんむりって何?
 まあいいや。
 俺は、プリンを食べてお茶を飲んだら、お手紙を書かなくちゃならない。忙しいんだよ。調べる言葉を増やさないで。
 書くのは、ごめんなさい、の手紙だ。ああ、何だろう、こう、気持ちが落ち込む。だって、悪いことしちゃった。解読を間違えてた上に、次のお手紙を読んでなかったから、間に合わなかったんだもんなあ。

「お冠って何だ?」

 睦峯むつみねが聞いてくれた。

「おや、使いませんか?私のさとのお国言葉でしたかね。怒っているとか不機嫌とか、そういった風な意味です」
「はは。ああ、ちと、へそは曲げてるな」

 緋色ひいろが笑う。
 へそは曲げてる?
 もうっ。分からないことばっかり!
 むう、と尖らせた口に、プリンを乗せたスプーンが近付いてくる。
 …………今日も、最高に美味しい。

「どうされたんです?」

 プリンを食べながら、さいが言った。さいはいつも、とても綺麗な仕草で食べるなあ。

「ちいと笑いすぎた。俺が悪かったよ、成人なるひと。すまん」

 う。謝ってるのに、つーんってしてたら駄目なんだっけ?でも、簡単にいいよって言いたくない。
 どうしよう。
 仕方ないから、小さい声でいいよって言う。

「あのな、そんなに気にやむことないって。あいつは、お前の定義では、家族でも友だちでも無いだろ?なら、参加資格がないじゃねえか」

 ん?あれ?そういえば、そうか。
 一緒に住んでる好きな人でも無いし、もちろん友だちじゃない。それなら、お誕生日会に来られなくても仕方ない。
 俺はまた、緋色ひいろが口元に運んでくれるプリンをぱくっと食べる。
 うん、美味しい。
 
緋色ひいろの友だちでもない?」
「もちろん、違う」

 うーん。
 それなら、お返事が遅くなってごめんなさいって言ってから、皇太子殿下は家族でも友だちでもないので、一緒にお誕生日会できません、ごめんなさいって書くのか?
 うーん。
 何か、こう、すっきりしない。
 こういうとき、どうしたらいいんだろ。難しいなあ。
 でも、お手紙を読み間違えたのは俺が悪かったな。難しかったけどさ。頑張ったんだけどさ。そんで、次のお手紙を、俺がすぐに読まなかったのも悪かったよね?
 て、いうか。

緋色ひいろが、お手紙を読んでくれてたら良かったんじゃない?」

 そしたら、間違えなかったじゃん。
 やっぱりさっきのいいよ、は取り消しだ。
しおりを挟む
感想 2,500

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...