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第七章 冠婚葬祭
20 約束 乙羽
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「祖母は最近ずっと、私は幸せ者だって言ってました」
少し落ち着いた斑鹿乃が、私から離れて涙を拭く。
「私は幸せ者だ。ひ孫は可愛いし、孫の婿さんは働き者だし、斑鹿乃と乙羽さまは幸せそうだしって」
「わたし……たちが幸せそうだから、吉野も幸せなの?」
「はい。そうなんですって」
「そうなの……」
吉野の幸せは、他の人が幸せでいるのを見ることだったの?
首を傾げる私に、斑鹿乃はふふ、と笑う。
「何となく、分かります。私も今日、乙羽さまがお元気でいらして幸せでした」
「え?」
「きっと、悲しんでくださっていると思ったから。祖母がいなくなった事実に押し潰されていらっしゃらなければいいのに、と気に掛かっておりました」
そう……そうね。
吉野がいないのに、どうして私は生きていかなければいけないの、とは思ったわ。吉野がいなければ、とうに無かった命。共に無くなってもいいのじゃないかって。
でも。
「常陸丸と約束したから。二人で長生きするって」
「はい」
「忘れそうだったけど、なるが思い出させてくれたから」
「はい」
斑鹿乃は笑って頷いた。
「私とも、約束しませんか。おばあちゃんになっても、こうして一緒にお話をするって」
「おばあちゃん……。私が?」
想像もできなくて、笑ってしまう。自分は長生きできないと知っていたから。けれどよく考えたら、予想より遥かに長く生きている。
「ええ。おばあちゃんですよ。末良の子どものお世話を一緒にするんです」
末良の子ども。末良の……?
今なるの膝の上で、絵本を読んでもらって大笑いしている小さな子どもが、私たちのような大人になるまでの長い時間を共に生きると約束しろって言うの?
「大変なことを、言うのね……」
それは、とても壮大な夢。
「そうでもありません。あっという間です。あっという間。末良なんて、ほんの少し前までこの世界に居なかったんですからね」
「ふ、ふふ」
この世界に、って大袈裟ね。でも、そうなのかしら。そういえば斑鹿乃は、小説を読むのが好きだった。
「何の本の受け売り?」
「最近は絵本ばかりです。それも、同じのを何回も」
子どもは、繰り返しが好き。お気に入りの同じものを、何回でも差し出してくる。私は、末良に、同じ本を何回も読んでと要求されると、またなの、とうんざりしてしまうけれど、斑鹿乃やなるは何回でも付き合うから凄い。
斑鹿乃はお母さんだから付き合ってるのかもしれないけれど、なるはまだ、同じ子どもだから何回でも楽しいのかしら?
「何かの本の受け売りじゃありませんよ。私の実感です。気付いたら一日なんて終わってて、末良はいつの間にか、お話したり立って歩いたりしてるんです。もう毎日、びっくり。だから、あっという間です、きっと。皆で年齢を重ねて、十年も二十年もこうして楽しくお話しましょう」
「なるも?」
ふと、口をついた。
「ええ。成人さまも、もちろん。おじいちゃんになって、末良の子どもを膝の上に乗せられて、絵本を読まれるんです」
なるが、おじいちゃん……。
「ふふ。ふふふふ」
なるが、おじいちゃん?
想像して、笑ってしまう。おじいちゃんになっても、緋色殿下とくっついて仲良くしてるのかしら。しわしわの顔になったりするのかしら。
「あは。あはははは」
そんな未来なら、見てみたい。
皆で、ずっと。
なんて素敵な約束だろう。
少し落ち着いた斑鹿乃が、私から離れて涙を拭く。
「私は幸せ者だ。ひ孫は可愛いし、孫の婿さんは働き者だし、斑鹿乃と乙羽さまは幸せそうだしって」
「わたし……たちが幸せそうだから、吉野も幸せなの?」
「はい。そうなんですって」
「そうなの……」
吉野の幸せは、他の人が幸せでいるのを見ることだったの?
首を傾げる私に、斑鹿乃はふふ、と笑う。
「何となく、分かります。私も今日、乙羽さまがお元気でいらして幸せでした」
「え?」
「きっと、悲しんでくださっていると思ったから。祖母がいなくなった事実に押し潰されていらっしゃらなければいいのに、と気に掛かっておりました」
そう……そうね。
吉野がいないのに、どうして私は生きていかなければいけないの、とは思ったわ。吉野がいなければ、とうに無かった命。共に無くなってもいいのじゃないかって。
でも。
「常陸丸と約束したから。二人で長生きするって」
「はい」
「忘れそうだったけど、なるが思い出させてくれたから」
「はい」
斑鹿乃は笑って頷いた。
「私とも、約束しませんか。おばあちゃんになっても、こうして一緒にお話をするって」
「おばあちゃん……。私が?」
想像もできなくて、笑ってしまう。自分は長生きできないと知っていたから。けれどよく考えたら、予想より遥かに長く生きている。
「ええ。おばあちゃんですよ。末良の子どものお世話を一緒にするんです」
末良の子ども。末良の……?
今なるの膝の上で、絵本を読んでもらって大笑いしている小さな子どもが、私たちのような大人になるまでの長い時間を共に生きると約束しろって言うの?
「大変なことを、言うのね……」
それは、とても壮大な夢。
「そうでもありません。あっという間です。あっという間。末良なんて、ほんの少し前までこの世界に居なかったんですからね」
「ふ、ふふ」
この世界に、って大袈裟ね。でも、そうなのかしら。そういえば斑鹿乃は、小説を読むのが好きだった。
「何の本の受け売り?」
「最近は絵本ばかりです。それも、同じのを何回も」
子どもは、繰り返しが好き。お気に入りの同じものを、何回でも差し出してくる。私は、末良に、同じ本を何回も読んでと要求されると、またなの、とうんざりしてしまうけれど、斑鹿乃やなるは何回でも付き合うから凄い。
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ふと、口をついた。
「ええ。成人さまも、もちろん。おじいちゃんになって、末良の子どもを膝の上に乗せられて、絵本を読まれるんです」
なるが、おじいちゃん……。
「ふふ。ふふふふ」
なるが、おじいちゃん?
想像して、笑ってしまう。おじいちゃんになっても、緋色殿下とくっついて仲良くしてるのかしら。しわしわの顔になったりするのかしら。
「あは。あはははは」
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皆で、ずっと。
なんて素敵な約束だろう。
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