【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

106 最終通告  緋色

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椿つばき
「はっ」

 部屋に呼ばれ、親の謝り倒す姿を見て言葉もなくしていた娘が、びくりと体を揺らす。

「諦めはついたのか」
「諦め……ですか?」
「このまま、ここで下働きをするか?」
「下働き……。いえ、私はまだ、護衛の訓練を……」
「え?」

 声を上げたのは成人なるひとだ。バッグから取り出したお気に入りのメモ用紙を膝に置いて、何やら書いていた。それで、抱かせてくれなかったのか?俺の膝に乗れば、メモ用紙を持ってやるのに。
 なになに?
 ぎょうぎょうしい?
 こたびのしぎ?
 うーん。
 成人なるひとの辞書では厳しいな。
 ああ。もう少し上等な辞書を買ってやろうか。青葉あおばにもらった品を、成人なるひとがあまりに大切にしているものだから、その考えが浮かばなかった。あれに載っていなければ、こちらを見てみろ、というように、幾つか買っておくか。灯可とうかあたりの使用しているものが、良いかもしれん。

椿つばきに護衛は無理だって、俺、言ったけど」
「し、しかし。護衛を続けたいか、と緋色ひいろ殿下に問われて、私は、はい、と返事を致しました。そうして、こちらに連れて来て頂き、おしごと、を……」
「護衛の仕事をすると言い張るのなら、弐角にかくの嫁の身の安全のために、その仕事ができない状況にするしかあるまい」
「私は、弱くありません!」

 応接室に、本日離宮にいた一ノ瀬が幾人も、音もなく姿を現す。今日も弐角にかくと共にあった才蔵さいぞうが、ただ弐角にかくだけを護ろうと動くのが見えた。入室を許可していた六車むぐるまの護衛も、少し遅れて同じような動きを見せる。武器を出さないのは、。姿は見えなくとも、一ノ瀬が在ったことを。分かる者には分かるように、気配を薄く広げていたのだから。
 俺の後ろから、常陸丸ひたちまるが威圧を放つ。成人なるひとの後ろの半助はんすけからも、冷たい圧がかかる。

「あ。あ……」

 引き攣った声を上げたのは、六車むぐるま親子と、成人なるひとに無礼を働いたという侍女。
 中途半端に鍛えている椿つばきには、より伝わるものがあったのだろう。真っ青になって立ち上がろうとするその肩を、優しい手が押さえた。

「え……?」

 大して力があるとも見えぬその手に押さえられ、椿つばきは身じろぎ一つできない。

「自らの実力を正しく知らぬ者は、決して強くなれません」

 振り返らなくとも、水瀬みなせの声は分かったのだろう。
 椿つばきの体から、がくりと力が抜けるのが見えた。
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