【本編完結】人形と皇子

かずえ

文字の大きさ
818 / 1,325
第七章 冠婚葬祭

107 人事の基準  緋色

しおりを挟む
水瀬みなせ。苦労をかけた」

 丸投げした自覚はある。ま、適材適所だ。水瀬みなせに、それなりの特別報酬は出したが、この矜恃の高い娘の相手は、面倒臭かったことだろう。仕事は、何もまともにできない上に、体調まで崩した、ときたものだ。流石に、身の回りの世話などうちの者にさせる気は無い、と侍女を呼んだが、この侍女がまた侍女の分も弁えず、娘の体調が回復した後まで居座ろうとする傲慢さ。
 生活と仕事の出来なさで言えば、三郎さぶろうは、更に酷かった気はする。だが、誰も、面倒をかけられて困る、とは言わなかった。三郎さぶろうが何かをできるようになる度、指導した者が報告し合い、喜んでいたものだ。成人なるひとへの接し方とも似たうちの者の様子に、上手くやれそうだと置いておいた。はじめのうちは、今にも儚くなりそうで放っておけなかった、ということもあるが。

「勿体なきお言葉、恐悦至極にございます」

 水瀬みなせが、普段はしない丁寧な様子で包拳礼を取り、言葉を紡ぐ。自らのことを何も知らぬ娘と、その侍女に、少しでも悟らせるためか。
 俺と、その伴侶がどのような位置にいるのか、自らの立ち位置はどこなのか。

「二人とも帰る?坂寄さかきは縫い物が上手だから、結婚式の衣装ができるまでいてもいいけど」

 無礼を働かれたことなど気にもかけない成人なるひとが、けろりとそんな提案をする。
 まあ、涼乃絵すずのえもあの侍女を、縫い物の腕に関してはなかなかの戦力だと言っていた。役に立つなら俺に異論は無い。結婚式の衣装の発注を一組増やしたしな。いや、あれは衣装室の奴らが勝手に、俺と成人なるひとのデザインも上げてきたのであって、俺から作れと指示したわけではなかったぞ。
 あんな素晴らしいデザインを見せられたら、成人なるひとに着せたくなるだろうが。……うん。俺の所為じゃない。
 その上、七条作治さくじのはしゃぎっぷりを見ていたら、羨ましくもなるだろう?緋椀ひまりの衣装もまた、素晴らしかった。少し女性っぽいデザインであることを緋椀ひまりは気にしていたが、よく似合っていた。まだまだシンプルな作りであったから、更に飾りは増えて、より緋椀ひまりの美しさに似合うように整えられて、着用することになるのだろう。
 美しい、と言われることを嫌って、髪を短く刈り込み、軍服ばかり着ていた緋椀ひまりが、いつの間にか似合う長さに髪を整え、柔らかい素材の服を着て、優しい色合いの上掛けを羽織っているのだから、恐れ入る。作治さくじは、どう言いくるめたのやら。流石の手腕だ。
 まあつまり、役に立つ侍女だけは、臨時雇いで衣装室に置いてもいいということか。夜に、離宮うちに訪ねてくることさえしなければ、俺はそれでもいい。それさえ無ければ、俺には関係の無い人事だ。
 どうせ中へ入ることもできずに追い返されるというのに、姫様のお側に置いてほしいと毎晩来るのは、迷惑だったからな。

「では、娘だけ連れて帰れ。これで話は終いだ」
しおりを挟む
感想 2,500

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...