【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

113 そういうこと  成人

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「申し訳……。申し訳ありませんでした……」

 震える声で言って、包拳礼の形で頭を下げる椿つばき。泣きそうな時の声で体も震わせている。俺たちの向かいの席に座ってる人が全員で、同じように頭を下げた。後ろに控えていた護衛たちも。
 ふーん……?
 緋色ひいろを見ると、眉の間にしわができている。
 うーん……?

「守れない、ということがどういう事か、教えることで罰としよう」
「え……?」

 緋色ひいろは、椿つばきの、申し訳ありませんでした、が良くない、と思ったんだね。口だけで、ごめんなさいと言っても意味は無いんだよ、って見可みかが怒られているのを見たことがある。あれと似てる。
 ちょっと良くないことしちゃって、緋椀ひまり茉璃まつりの長いお話が始まりそうになって、早く終わらせたい見可みかはとにかく謝って。それで、何に謝ったんだ?って聞かれて分からなかったりすると、もっと怒られる。
 ちゃんと考えればいいのに、って俺は思うんだけど、とりあえず、ごめんなさいって言っちゃうんだってさ。謝れって言われたから謝ったのにって、見可みかは言ってた。謝るって、口でごめんなさいを言うだけじゃ駄目なんだなあって、その時に知った。黙ってるのは駄目だけど、口でも言わなくちゃいけないけど、何に謝ったのか分からないのも駄目なんだ。難しいけど、考えないとおんなじ失敗しちゃう。俺は、怒られるの嫌いだから、失敗は一回で終わらせたいな。だから、考えてから言わないと。
 緋見呼ひみこさまはね。構わぬ、って言うんだけどね。

何をしても構わぬ」

 あ。口から出てた。皆がこっちを見てる。
 これね、緋見呼ひみこさまが言ってたんだよ。
 ふ、と緋色ひいろが笑う。あ、眉の間のしわが取れたね。

「髪を切れ」

 椿つばきの髪が、括った紐の先から落ちた。坂寄さかきの髪も。梅香うめかの髪は、肩口の辺りから先が綺麗に消えた。長いし、括ってないから、床に落としたら掃除が大変だもんね。切って回収したんだね。大角だいかくの髪ももちろん、括った先が回収された。椿つばき坂寄さかきの髪は、回収せずに目の前に落とされた。見えるように。分かるように。水瀬みなせ、流石!
 護衛二人は、政己まさみ村次むらつぐに押さえられた後で髪を切られた。頑張った。でも、あるじたちの髪を切られちゃったから残念。
 才蔵さいぞう弐角にかくの髪は無事。頑張ったね、才蔵さいぞう鼓与こと佐鳥さとりの小さな刃物を叩き落としたんだ!
 もちろん、じいやや村正むらまさは動かなかったよ。半助はんすけ常陸丸ひたちまるも。その他に来てた一ノ瀬も。絶対防げない攻撃はしていない。椿つばきも動いていたら、三人の人を三人の護衛で守ることができていた。こちらも三人。もともと姿も見えていたし、簡単だったはず。才蔵さいぞうには二人いったけど、弐角にかくの髪は無事だったでしょ?

「あ、あああああ!」

 ソファから腰を浮かしかけていた椿つばきが、大きな声を上げた。
 
「今、弐角にかく以外の首は落ちたぞ」

 そういうこと。
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