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第七章 冠婚葬祭
140 当たり前 弐角
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「半助は、明日もここにいる?」
成人さまの言葉に、おるやろと突っ込みそうになった。明日は結婚式なんやから、主役がおらんくてどうする。
まあでも……。
そういうことやないんやろな。明日ってのはこれから先ってことやろ。成人さまやからな。分かっとるよ。
父上の、珍しい感情の吐露に戸惑った。俺は臣の生活を何度か見とる。けど、父上はこうして見るんは初めてやったな。臣がうちに帰ってくる未来は無いんやろなって俺はとうに思っとったけど、父上はまだいつか帰ってくることを願っとったんか。そうか。
半助が成人さまに答える前に人の気配がして、食堂と厨房の間の戸が開く。
「すみません、父上。わざわざ来てくださっとるのに出迎えもできんと。成人くん、ありがとう」
手を拭きながら食堂に入ってきた臣の明るい声。けど、平伏する半助にまず目がいったようや。
「え?あれ?なんやろ。父上、半助に何かしたんです?」
臣なりの尖った声は、それでもどこか優しい響きがあって笑てしまう。
父上は、それどころではないようやけど。
「いや、壱臣、これは……」
「違う。臣」
半助が身を起こして、とりなした。
「俺が、殿へご挨拶をしてたんや。ほら、正式にな、その、臣をくださいて言うてへんかったから」
潤んだ目で言うても、それだけやとは思われへんやろ。
少し口を挟もうかと思たが、それより前に臣が半助の隣に座って言った。
「な、なんや。いや、改めて聞くとちょっと恥ずかし……。あ、いやそうやなくて、そ、そういう挨拶は、二人で揃ってするもんちゃうの?」
俺たちは顔がそっくりやって言われるけど、ほんまかな、と最近思う。俺、あんな可愛らしい顔できひんやろ。照れたりちょっと拗ねたり、臣は何しても可愛いし和む。
「……そやな」
眩しいものを見るように半助の目が細められた。半助の、色んなとこに入っとった力が抜けていっとんが分かる。
「ほな、父上。ええと……。あ、そや。うち、結婚します。あ、いや、もうしとったな。ほな、しました、かな?ん?いや、ちゃうか。明日、結婚式します?」
「ぶはっ」
堪え切れずに吹き出してしもた。半助の肩も震えとる。父上は、なんやぽかんとしとるし、義父上と義母上は笑顔や。隣の橙々も、くすくすと笑い出した。
臣やなあ、と思ったり、こんな人やったんやなと思ったり。臣のこと何ほども知らんけど、これはきっと臣らしい姿なんやろなあ。
「そ、そうか。おめでとう……」
「ありがとうございます」
父上の間の抜けた返事。弾んだ臣の声。
「ふふ」
成人さまも笑っとる。あ、さっきの返事、まだやったんちゃうかな?
「壱臣は、明日もうちにいるねえ」
いる?って聞くんやないんか。臣は明日もおるんか。
話の流れが分からん臣は少し首を傾げて。でも、すぐに笑顔になった。
「おるよ?明日も明後日もその次も。当たり前やん。な、半助」
「はい……!」
半助の自然な笑顔。
当たり前。
うん。
分かっとった。分かっとったよ……。
成人さまの言葉に、おるやろと突っ込みそうになった。明日は結婚式なんやから、主役がおらんくてどうする。
まあでも……。
そういうことやないんやろな。明日ってのはこれから先ってことやろ。成人さまやからな。分かっとるよ。
父上の、珍しい感情の吐露に戸惑った。俺は臣の生活を何度か見とる。けど、父上はこうして見るんは初めてやったな。臣がうちに帰ってくる未来は無いんやろなって俺はとうに思っとったけど、父上はまだいつか帰ってくることを願っとったんか。そうか。
半助が成人さまに答える前に人の気配がして、食堂と厨房の間の戸が開く。
「すみません、父上。わざわざ来てくださっとるのに出迎えもできんと。成人くん、ありがとう」
手を拭きながら食堂に入ってきた臣の明るい声。けど、平伏する半助にまず目がいったようや。
「え?あれ?なんやろ。父上、半助に何かしたんです?」
臣なりの尖った声は、それでもどこか優しい響きがあって笑てしまう。
父上は、それどころではないようやけど。
「いや、壱臣、これは……」
「違う。臣」
半助が身を起こして、とりなした。
「俺が、殿へご挨拶をしてたんや。ほら、正式にな、その、臣をくださいて言うてへんかったから」
潤んだ目で言うても、それだけやとは思われへんやろ。
少し口を挟もうかと思たが、それより前に臣が半助の隣に座って言った。
「な、なんや。いや、改めて聞くとちょっと恥ずかし……。あ、いやそうやなくて、そ、そういう挨拶は、二人で揃ってするもんちゃうの?」
俺たちは顔がそっくりやって言われるけど、ほんまかな、と最近思う。俺、あんな可愛らしい顔できひんやろ。照れたりちょっと拗ねたり、臣は何しても可愛いし和む。
「……そやな」
眩しいものを見るように半助の目が細められた。半助の、色んなとこに入っとった力が抜けていっとんが分かる。
「ほな、父上。ええと……。あ、そや。うち、結婚します。あ、いや、もうしとったな。ほな、しました、かな?ん?いや、ちゃうか。明日、結婚式します?」
「ぶはっ」
堪え切れずに吹き出してしもた。半助の肩も震えとる。父上は、なんやぽかんとしとるし、義父上と義母上は笑顔や。隣の橙々も、くすくすと笑い出した。
臣やなあ、と思ったり、こんな人やったんやなと思ったり。臣のこと何ほども知らんけど、これはきっと臣らしい姿なんやろなあ。
「そ、そうか。おめでとう……」
「ありがとうございます」
父上の間の抜けた返事。弾んだ臣の声。
「ふふ」
成人さまも笑っとる。あ、さっきの返事、まだやったんちゃうかな?
「壱臣は、明日もうちにいるねえ」
いる?って聞くんやないんか。臣は明日もおるんか。
話の流れが分からん臣は少し首を傾げて。でも、すぐに笑顔になった。
「おるよ?明日も明後日もその次も。当たり前やん。な、半助」
「はい……!」
半助の自然な笑顔。
当たり前。
うん。
分かっとった。分かっとったよ……。
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