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第七章 冠婚葬祭
148 このよき日に 緋色
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「三郎」
「あ、ちち……いえ、その……」
写真を撮るためにと親族を集めた控え室で、九条の一員として部屋の端に控えていた三郎に壱鷹が声をかけた。
現在の身分としてはほぼ同等。属国の国主と宗主国の政を担う主要九家の跡取りだ。どちらから声をかけても、おかしな事はない。
「息災か」
「はい。い、壱鷹さまにはご無沙汰を致しております。ご挨拶が遅れまして、誠に申し訳ございません」
丁寧に言って頭を下げた三郎に、壱鷹は少しだけ言葉を詰まらせた。
「いや、姿を見なんだ故……」
「は、いえ。その、元気……です」
思い返せば昨夜、食堂に三郎の姿はなかった。朝も。九鬼家が来ていると聞いて遠慮したのだろう。部屋で食事をとっていればいいが、そうでないなら説教案件だ。
「これは九鬼どの。改めてご挨拶申し上げる。九条の隠居じゃ。昨晩は、息子夫夫の結婚式前夜という事でな。祝い酒に孫を付き合わせておった」
そういえば、利胤も見なかったか。いつでも、何かと理由をつけて人一倍酒を楽しむじい様が、息子夫夫の結婚式という一大行事で飲まない訳がない。どちらかの部屋で食事をとっていたと見える。
そうだな。もう三郎は一人ではなかった。
「九条どの。挨拶痛み入る。大変に、その、うちの……が世話になり」
「はっはっはっ。世話になっているのはわしじゃ。わしの酒を取り上げる手が増えてかなわんわい」
利胤は、かなわん、と言いつつ嬉しそうに破顔する。その強さで戦場を駆け回り、最強の名をほしいままにしていた武神は、離宮ではただの酒飲みのじじいだ。
勝てない、と常陸丸が言うのだから、未だ最強の称号はその上にあるのだろう。だがそれは、引き継ぐ常陸丸だけが知っていればいいこと。たくさんの手に酒を取り上げられる酒飲みのじじいでいられるのは、利胤の幸せなのだ。
幸せ、と思い浮かべて頬が緩む。成人の口ぐせが移ったか。
「三郎。そっちで写真撮るんか?」
「あに、あ、ええと、臣さま。はい、九条に入れてもらおう思います」
「壱臣。三郎はやらんぞ」
利胤が、がしりと三郎の肩を抱いて笑った。
「いややわ、利胤さま」
ほわ、と壱臣も笑う。
「どっちもの写真に写ったかてええやないですか」
「おう。そりゃそうか。はっはっはっ。壱臣にはかなわんな」
「利胤さまは、かなわんもんばっかりや」
最強の男が形無しだ。そう思うと、聞いている俺まで頬が緩む。
結局、公には三郎と九鬼の関係を知られては困るため壱臣の望み通りに共に写真を撮ることは叶わなかったが、壱臣に共に写真をと誘われた三郎は、
「ありがとう、ございます……」
と、言葉を詰まらせながら言って、滅多にない花開くような笑顔を見せた。
「緋色、楽しい?」
「ああ」
「俺も」
腕の中の成人が俺を見て笑う。
好い日だ。実に良い日だ。
最高に楽しいぞ。
「あ、ちち……いえ、その……」
写真を撮るためにと親族を集めた控え室で、九条の一員として部屋の端に控えていた三郎に壱鷹が声をかけた。
現在の身分としてはほぼ同等。属国の国主と宗主国の政を担う主要九家の跡取りだ。どちらから声をかけても、おかしな事はない。
「息災か」
「はい。い、壱鷹さまにはご無沙汰を致しております。ご挨拶が遅れまして、誠に申し訳ございません」
丁寧に言って頭を下げた三郎に、壱鷹は少しだけ言葉を詰まらせた。
「いや、姿を見なんだ故……」
「は、いえ。その、元気……です」
思い返せば昨夜、食堂に三郎の姿はなかった。朝も。九鬼家が来ていると聞いて遠慮したのだろう。部屋で食事をとっていればいいが、そうでないなら説教案件だ。
「これは九鬼どの。改めてご挨拶申し上げる。九条の隠居じゃ。昨晩は、息子夫夫の結婚式前夜という事でな。祝い酒に孫を付き合わせておった」
そういえば、利胤も見なかったか。いつでも、何かと理由をつけて人一倍酒を楽しむじい様が、息子夫夫の結婚式という一大行事で飲まない訳がない。どちらかの部屋で食事をとっていたと見える。
そうだな。もう三郎は一人ではなかった。
「九条どの。挨拶痛み入る。大変に、その、うちの……が世話になり」
「はっはっはっ。世話になっているのはわしじゃ。わしの酒を取り上げる手が増えてかなわんわい」
利胤は、かなわん、と言いつつ嬉しそうに破顔する。その強さで戦場を駆け回り、最強の名をほしいままにしていた武神は、離宮ではただの酒飲みのじじいだ。
勝てない、と常陸丸が言うのだから、未だ最強の称号はその上にあるのだろう。だがそれは、引き継ぐ常陸丸だけが知っていればいいこと。たくさんの手に酒を取り上げられる酒飲みのじじいでいられるのは、利胤の幸せなのだ。
幸せ、と思い浮かべて頬が緩む。成人の口ぐせが移ったか。
「三郎。そっちで写真撮るんか?」
「あに、あ、ええと、臣さま。はい、九条に入れてもらおう思います」
「壱臣。三郎はやらんぞ」
利胤が、がしりと三郎の肩を抱いて笑った。
「いややわ、利胤さま」
ほわ、と壱臣も笑う。
「どっちもの写真に写ったかてええやないですか」
「おう。そりゃそうか。はっはっはっ。壱臣にはかなわんな」
「利胤さまは、かなわんもんばっかりや」
最強の男が形無しだ。そう思うと、聞いている俺まで頬が緩む。
結局、公には三郎と九鬼の関係を知られては困るため壱臣の望み通りに共に写真を撮ることは叶わなかったが、壱臣に共に写真をと誘われた三郎は、
「ありがとう、ございます……」
と、言葉を詰まらせながら言って、滅多にない花開くような笑顔を見せた。
「緋色、楽しい?」
「ああ」
「俺も」
腕の中の成人が俺を見て笑う。
好い日だ。実に良い日だ。
最高に楽しいぞ。
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