【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第七章 冠婚葬祭

164 当たり前の話  成人

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 できるって言ったのに、朱実あけみ殿下がお盆を置いてくれない。

「置いて」
「どうしてだ?こうして近くに持っていった方が盛りやすいだろう?」

 そうだけど。手が二つあれば俺もそうするけど。でも一つしかないから、一つでもできるように考えてる。邪魔しないでほしい。

「いい。できる」

 団子を器に入れてから、缶詰めの果物が入った汁を入れるんだ。俺はそれが好き。よくおやつに食べているから味は知ってる。きな粉やあんこ、みたらしも準備してあるけど、前に全部味見して一番好きな味はもう分かってる。だから迷わない。知ってるってすごいね。食べる前から美味しい気分になれるんだから。
 積んである団子に自分で味をつけるのは面白い。自分で料理を作った気分になって嬉しい。見可みかは最初から団子を食べていたから、いっぱい食べたんじゃないかな。
 葡萄は、きっと緋色ひいろも食べるから、少し大きい房をもらっていこう。大きな粒ですごく美味しそうだ。
 そうやって考えながら、朱実あけみ殿下がお盆を置いてくれるのを待った。俺が動かないのを見て、やっと置いてくれた。

「私が手伝うのが嫌か?」
「んーん。誰でも嫌」
緋色ひいろでも?」
「うん」

 上手く器に盛れた。後は汁をこぼさない様に運ぶだけ。
 朱実あけみ殿下、ちょっとそこどけてー。

緋色ひいろでも嫌なのか……」

 そうだって言ってるでしょ、もう。
 何故か朱実あけみ殿下は、俺の後ろからついてきた。汁が入っているから慎重に運んでいるのに、後ろにいられたら気になって仕方ない。

「げっ」
「少し遅くなりましたが、ご一緒させてください、父上、母上」
朱実あけみ。我らの食事はあらかた済んでいる。そなたは食べたか?」
「はい。美味しく頂きました。普段の食事とは味や食感が違っていて、料理の奥深さを感じましたよ」

 朱実あけみ殿下は、父さまと母さまににこりと挨拶をして、さっさと空いている席に座った。さっき緋見呼ひみこさまが座っていた、俺の隣の席だ。緋色ひいろは反対側の俺の隣で、はあ、とため息を吐いた。

「とても美味しいわ。もちろん、いつもの食事に不満がある訳ではないのだけれど」

 ゆっくりと、俺と緋色ひいろのお勧め料理を少しづつ食べた母さまが言う。新しく淹れてもらった湯気の立つお茶にそっと口をつけて、ふうと息を吐いた。

「食べやすかったなら、うちでも出してもらえるよう伝えておけばいい」
「そうね」

 母さまが頷く。

「食べたいものを言っていいのよね」
「ああ。うちの者たちも手伝っておるのだから、すぐに出してくれるだろう」

 うちは、お城のアイスクリームみたいに秘密のメニューはないから、何でも作っていいよ、たぶん。
 あ、アイスクリーム、無いかな。
 見当たらなかったなあ。

「母上の食欲が増すメニューとは、流石離宮の者たちです。城の者も研鑽せねばなりませんね」
「その通りだ。此度は、良い勉強になった事だろう」

 何だか三人でにこにこ話している。良かったね。
 俺は、団子食べよう。
 葡萄は、皆でどうぞ、と真ん中に置く。

成人なるひとの手伝いをしようとしたのだが、断られてしまったよ」

 朱実あけみ殿下が緋色ひいろに話しかけた。

「だろうな」
「何でも出来るものだね」
「当たり前だ」
「ふふ。よく分かっている」
「当たり前だ」

 団子、美味しい、と緋色ひいろの方を向いたら、何だかきゅっと眉が寄っていた。あれ?
 葡萄を一つ、房からちぎって緋色ひいろの口に持っていく。

「はい、あーん」

 すぐに口を開いた緋色ひいろは、皮を摘んだ俺の指までじゅっと舐めて、旨いなと言った。
 それから、俺の口にも葡萄を一つ、あーんってしてくれた。
 うん、美味しい。
 美味しいもの食べると、にこにこになるよね。
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