【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第八章 郷に入っては郷に従え

11 分かり合えない  成人

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「きたんのないご意見……」
「周りを気にすることなく、本当に思っていることを言えって」
「え?周りを気にする?」

 誰が何を気にするの?

「だよなあ」

 俺に説明してくれた村次むらつぐが、呆れたように言った。

「どうして、成人なるひとさまが、あなた達や矢渡やとさんを気にする必要があると思われたんですか?全部、本音に決まっているでしょう?」
「……!」

 二人の公里くりは、びっくりした顔をした。さっきまで、難しい言葉をすらすらと話していたのに。

矢渡やとは、料理が上手だから上手って言った。安次嶺あじみねは上手か下手か分かんない。お手伝いしないから」
「……」
「と、いう訳です」

 村次むらつぐって、お城の人とも上手に話せたんだな。凄いな。俺が分かんなければ教えてくれるし、相手に説明もしてくれるし、強いし、料理も上手なんて、凄くない?

村次むらつぐは凄い」

 うんうん頷くと、村次むらつぐが、へ?って言った。

「……いや、今のは、ちょっと流石に、繋がりが分からん」

 頭をぽり、とかいて、ほんのちょっと笑う。

「ん。でも、ありがとな」
「俺も、ありがと」

 お城の厨房に来る時は、村次むらつぐと来ればいいんだな。護衛も説明も全部してくれる。安心だ。緋色ひいろに教えておこう。村次むらつぐがいたら、安心だよって。村次むらつぐは忙しいけど、たまにお城の厨房に一緒に来て欲しいなあ。
 
矢渡やとは、うちでは上手ではないのです、成人なるひと殿下」

 志雄しおが、無理やり笑った顔を作って言った。下手くそだなあ。朱実あけみ殿下をお手本にするといいよ。緋色ひいろも、お城の仕事の時は朱実あけみ殿下の真似をしてるんだって言ってた。

「そうなの?」
「ええ。我が家は、父も、私たちも皆料理人でありますが、矢渡やとは、とにかく何をするにも時間がかかる。指南書を読んだだけでは分からぬらしく、これはどうするのだ、あれはどうするのだ、といちいち尋ねてくるのです」

 当たり前じゃない?文字で、動きの全部を表せるわけないもん。首を傾げながら村次むらつぐを見たら、村次むらつぐも首を傾げていた。だよね?分からないことは、尋ねたらいいよね?
 矢渡やとは、大きな体を縮めるみたいに、きゅって固まって立っていた。

「うちでもそのような様子なのですから、この厨房でも恥を晒してばかり。此度も、離宮での研修に送り出すのは不安でしか無かったのです。料理長の指名であるし、安次嶺あじみねさんが共におるからとしぶしぶ送り出せば、安次嶺あじみねさんが帰って数日経っても、まだ帰らぬ始末。きっと、ご迷惑をお掛けしていただろうという我らの心のうちを、分かって頂けましょうか」

 うん。
 分からん。
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