903 / 1,325
第八章 郷に入っては郷に従え
27 知らないの? 成人
しおりを挟む
「さて。うちの素晴らしい料理長の話は、こんなもんでいいか?理解できないなら、しなくていい。決してたどり着けない高みだと、指をくわえて見ておけばいいさ。俺は、うちの飯は国で一番美味しい、と吹聴して回るから」
「ふふ」
緋色の言葉に、笑ってしまう。
ずっと、世界で一番美味しかったよ。俺の中では、ずっとずっと広末のご飯が一番だ。あ、いや。広末と壱臣と村次のご飯が一番!ん?一番は一人だけ?
あー、ええっと。
じゃあ、やっぱり俺も。
「うちのご飯は、世界で一番美味しい」
緋色が、にやって笑う。
「大きく出たな」
「俺の世界で、一番美味しい!」
「おや。あまり、大きくなくなってしまったぞ」
ん?そう?
緋色は、すっかりいつもの顔になった。朱実殿下の真似は、おしまい?
厨房の空気が、ふと緩む。違うのに。緋色が緋色になったんだから、怒られてる相手は緊張してなくちゃいけない。緋色は、緋色の大事なものしか守らない。
「そこの。茶色の皿の。お前、俺の政策に意見があるのだったか」
俺、知ってる。緋色はね、本当は名前覚えてるんだよ。でも、安次嶺のこと名前で呼ぶ気がないんだ。
「は。ははっ」
「字も碌々書けない奴に免許を渡すのは反対、だったか。お前、馬鹿か?読み書きできなければ、そもそも試験に受かるまい」
「が、学のない平民に免許を渡すのは反対、と言いました」
「知らないのか?我が国は中学まで義務教育だ。制度上、学のない平民など存在せぬ」
「そ、それなら、何故今まで……」
「お前みたいな選民意識の強い馬鹿が作った、馬鹿馬鹿しい制度なんだろうよ」
「我が国は問題なく、これまでの制度で運営されておりました。だというのに、殿下は何故、伝統を蔑ろにされるのか」
え?安次嶺、すごいな?緋色や父さま、朱実殿下たちがしているお仕事に何か意見を言えるくらい、そのことを知ってるんだ。料理の勉強と、国の運営の勉強?もしてたってこと?すごいよ!
「はははっ。一介の料理人如きに、我が国の運営を語られるとはな。これまでの制度で問題なく?ではお前、聞くが車の免許はあるか?」
「は?」
「車の免許だ」
「と、当然、所持しております」
「では明日より、市井の乗り合いの運転手になれ」
「は?」
「乗り合いバスだよ。町で走っているだろう?時間になれば停留所へ来てくれて、次の停留所に止まってくれる、あれだ。くるくると町の中を走っているだろう?庶民の大切な足だ」
「仰っている意味がよく……」
「免許持ちが少ないから、運転手が不足している。庶民のために、運転して回れ」
「な、な、な……」
安次嶺は、目を吊り上げて顔を真っ赤にした。
「わ、私が?誇り高き安次嶺家の人間が何故、庶民の足とならねばならぬのです?!」
「言ったろう?運転手が不足している、と。明日から仕事がなくては食っていけぬだろうと、仕事を斡旋してやっているんだ」
「私は!料理人です!」
「ふーん。では、どこぞの厨房で雇ってもらうか?言っておくが、高位貴族の屋敷や高級食堂には通達を出すぞ。公里と安次嶺が何故、城の厨房をクビになったかを文書で流す。料理人の間で瞬く間に噂は広がるだろうな」
「え……」
安次嶺は、今度は青くなった。公里も、顔を真っ青にしている。え?想像していなかったの?
「当たり前だろう?で、先程の乗り合いの話だ。免許持ちが皆、庶民の足になどならぬ、と言うから運転手が不足しているんだよ。そんなこと言わない運転手を増やして何が悪い?今まで困っていた事案を解決しようとしている俺の政策に不満があるというなら、それに代わる良い案を出してくれ」
「ふふ」
緋色の言葉に、笑ってしまう。
ずっと、世界で一番美味しかったよ。俺の中では、ずっとずっと広末のご飯が一番だ。あ、いや。広末と壱臣と村次のご飯が一番!ん?一番は一人だけ?
あー、ええっと。
じゃあ、やっぱり俺も。
「うちのご飯は、世界で一番美味しい」
緋色が、にやって笑う。
「大きく出たな」
「俺の世界で、一番美味しい!」
「おや。あまり、大きくなくなってしまったぞ」
ん?そう?
緋色は、すっかりいつもの顔になった。朱実殿下の真似は、おしまい?
厨房の空気が、ふと緩む。違うのに。緋色が緋色になったんだから、怒られてる相手は緊張してなくちゃいけない。緋色は、緋色の大事なものしか守らない。
「そこの。茶色の皿の。お前、俺の政策に意見があるのだったか」
俺、知ってる。緋色はね、本当は名前覚えてるんだよ。でも、安次嶺のこと名前で呼ぶ気がないんだ。
「は。ははっ」
「字も碌々書けない奴に免許を渡すのは反対、だったか。お前、馬鹿か?読み書きできなければ、そもそも試験に受かるまい」
「が、学のない平民に免許を渡すのは反対、と言いました」
「知らないのか?我が国は中学まで義務教育だ。制度上、学のない平民など存在せぬ」
「そ、それなら、何故今まで……」
「お前みたいな選民意識の強い馬鹿が作った、馬鹿馬鹿しい制度なんだろうよ」
「我が国は問題なく、これまでの制度で運営されておりました。だというのに、殿下は何故、伝統を蔑ろにされるのか」
え?安次嶺、すごいな?緋色や父さま、朱実殿下たちがしているお仕事に何か意見を言えるくらい、そのことを知ってるんだ。料理の勉強と、国の運営の勉強?もしてたってこと?すごいよ!
「はははっ。一介の料理人如きに、我が国の運営を語られるとはな。これまでの制度で問題なく?ではお前、聞くが車の免許はあるか?」
「は?」
「車の免許だ」
「と、当然、所持しております」
「では明日より、市井の乗り合いの運転手になれ」
「は?」
「乗り合いバスだよ。町で走っているだろう?時間になれば停留所へ来てくれて、次の停留所に止まってくれる、あれだ。くるくると町の中を走っているだろう?庶民の大切な足だ」
「仰っている意味がよく……」
「免許持ちが少ないから、運転手が不足している。庶民のために、運転して回れ」
「な、な、な……」
安次嶺は、目を吊り上げて顔を真っ赤にした。
「わ、私が?誇り高き安次嶺家の人間が何故、庶民の足とならねばならぬのです?!」
「言ったろう?運転手が不足している、と。明日から仕事がなくては食っていけぬだろうと、仕事を斡旋してやっているんだ」
「私は!料理人です!」
「ふーん。では、どこぞの厨房で雇ってもらうか?言っておくが、高位貴族の屋敷や高級食堂には通達を出すぞ。公里と安次嶺が何故、城の厨房をクビになったかを文書で流す。料理人の間で瞬く間に噂は広がるだろうな」
「え……」
安次嶺は、今度は青くなった。公里も、顔を真っ青にしている。え?想像していなかったの?
「当たり前だろう?で、先程の乗り合いの話だ。免許持ちが皆、庶民の足になどならぬ、と言うから運転手が不足しているんだよ。そんなこと言わない運転手を増やして何が悪い?今まで困っていた事案を解決しようとしている俺の政策に不満があるというなら、それに代わる良い案を出してくれ」
1,302
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる