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第八章 郷に入っては郷に従え
43 相性がいい 朱実
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席に着け、と言ったのに、数名が場を離れようとしている。茶の準備のためか、それともこうした会議には参列できぬと定められている見習いなのか。その中に、成人の友人、公里矢渡がいるのを見て溜め息を吐きそうになった。今から私が褒める対象が、場を離れてどうする。末席の者が茶の準備をする決まりだとして、あれはもう、動かなくてよい筈だ。離宮の献立を再現する際の責任者として任命する、との料理長からの提出書類に、今朝、承認の判を押した覚えがある。すでに、責任者としての地位が発生しているはずなのだが。
「朱実殿下」
口を開こうとすると、成人に袖を引かれた。そういえば、成人も用があって厨房へ来ていたのだったかな。成人の用件を、尋ねるのを忘れていた。
「どうした?」
時間を合わせて邪魔をしたことは申し訳なかったので、ことさら優しい声が出てしまう。不自然か?気を付けねば。
「俺、七伏のお茶が飲みたい」
「そうか。では、そうしよう」
成人!なんてタイミングの良い申し出だ。お前と時間を合わせて良かった。
側に控えていた七伏が、優雅に一礼する。
「光栄です、成人殿下。料理長、道具をお借りしてもよろしいか?」
「どうぞ、何でもお使いください。手伝いをつけます」
「いえ、手伝いは結構でございます。皇太子殿下のお言葉を、皆様でお聞きくださりませ。僭越ながら皆様のお茶も、私が用意致してもよろしいでしょうか?」
「これは、有り難い。お言葉に甘えます」
料理長との話も無事についたようだ。七伏が、私の意図をよく汲んでくれた。
「八代。これ、今日のお土産。皆で味見する」
おや。料理長も名前呼びか。覚えておこう。まあ、広末のデザートを皇城の食卓に乗せたり、離宮に部下を研修へ行かせるような料理長だ。革新的なものの考え方をして、それを実行できる人間なのだろう。成人でなくとも、大変に好ましい。
「広末のデザートですか。わざわざお持ちくださり、ありがとうございます」
「ん。わらび餅の蜜がけ。俺の」
「ほう。きな粉でなく蜜をかけたわらび餅ですか。大変に美しい」
「ん。綺麗」
満足げに成人が頷く。
「そちらも、器に盛ってお持ちしましょう」
七伏が、皿に入ったわらび餅を回収して行く。皆で味見するには、あまりに少ない気がするが、と見ていると、半助が、足元のバッグを七伏に渡していた。なるほど。そちらに大量に入っていたのか。
何か言いたそうな者が幾人かいたが、む、と不満げな顔を見せるに留めた。私がいなければ、口を開いていたのだろう。昨日の様子が何となく察せられる。
成人は、満足げに深く椅子に腰かけているから、用件は済んだな。
場を離れようとした料理人たちも席に着いた。では、話を始めようか。
「朱実殿下」
口を開こうとすると、成人に袖を引かれた。そういえば、成人も用があって厨房へ来ていたのだったかな。成人の用件を、尋ねるのを忘れていた。
「どうした?」
時間を合わせて邪魔をしたことは申し訳なかったので、ことさら優しい声が出てしまう。不自然か?気を付けねば。
「俺、七伏のお茶が飲みたい」
「そうか。では、そうしよう」
成人!なんてタイミングの良い申し出だ。お前と時間を合わせて良かった。
側に控えていた七伏が、優雅に一礼する。
「光栄です、成人殿下。料理長、道具をお借りしてもよろしいか?」
「どうぞ、何でもお使いください。手伝いをつけます」
「いえ、手伝いは結構でございます。皇太子殿下のお言葉を、皆様でお聞きくださりませ。僭越ながら皆様のお茶も、私が用意致してもよろしいでしょうか?」
「これは、有り難い。お言葉に甘えます」
料理長との話も無事についたようだ。七伏が、私の意図をよく汲んでくれた。
「八代。これ、今日のお土産。皆で味見する」
おや。料理長も名前呼びか。覚えておこう。まあ、広末のデザートを皇城の食卓に乗せたり、離宮に部下を研修へ行かせるような料理長だ。革新的なものの考え方をして、それを実行できる人間なのだろう。成人でなくとも、大変に好ましい。
「広末のデザートですか。わざわざお持ちくださり、ありがとうございます」
「ん。わらび餅の蜜がけ。俺の」
「ほう。きな粉でなく蜜をかけたわらび餅ですか。大変に美しい」
「ん。綺麗」
満足げに成人が頷く。
「そちらも、器に盛ってお持ちしましょう」
七伏が、皿に入ったわらび餅を回収して行く。皆で味見するには、あまりに少ない気がするが、と見ていると、半助が、足元のバッグを七伏に渡していた。なるほど。そちらに大量に入っていたのか。
何か言いたそうな者が幾人かいたが、む、と不満げな顔を見せるに留めた。私がいなければ、口を開いていたのだろう。昨日の様子が何となく察せられる。
成人は、満足げに深く椅子に腰かけているから、用件は済んだな。
場を離れようとした料理人たちも席に着いた。では、話を始めようか。
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