【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第八章 郷に入っては郷に従え

114 その、覚悟  鶴丸

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「そうですけど、何か?」
「何か?やあらへん!自分らだけ殿下のお城へ招待されて、自分らだけで行こうとしとったんか!とんでもない!とんでもない事やで!」

 ああ、うるさいうるさい。おっちゃんが騒ぐから人が集まってきたやん。姿の見えん色んなのが。護衛共、気付かんか。首の後ろがちりちりするやろ。ま、もともと緋色ひいろ殿下んとこのが一人付いてきとったけどな。見送りはいりませんて言うたんやけど、緋色ひいろ殿下は意外と過保護なんかな。それとも、部下たちの判断?見張り……では無さそうやけど。

「ええか!そのお招きには、わしも同行できるように、ちゃあんと殿下に進言するんやで!分かったな!」

 いや、なんでやねん。
 心の中ですかさず言うたけど、口に出せんのが残念や。今、こんなにぴったり合う言葉はないいうのに。
 とりあえず、目をぱちくりさせとこ。

「だいたいやな!殿下に晩餐に招かれた時に、ちゃあんとわしに連絡せんかったんがあかん!連絡して、その上でわしも同席できるように殿下へ進言して然るべきやろ!其方そちのような若造が、緋色ひいろ殿下のような大変に貴い方のとこへ一人で出かけてやな、粗相したらどないするんや!」
「いや、一人やのうて妻と二人です」
「おんなじや!若造が二人に増えたところで粗相が二倍になるだけやないかい!」

 粗相しとらんから、殿下の自宅にも招かれたんちゃうかなあ。どう思う、おっちゃん?それと、殿下のような方やなくて、殿下方のような方々とちゃんと言うて。成人なるひと殿下のこと、頭からすっぽり抜けとる時点で粗相やわ。
 
真中まなかさま。あんまりにも失礼な物言い。流石に腹に据えかねます」

 半歩後ろに静かに控えとった奥さんが、すっとうちの横に並んだ。奥さんから徐々に漏れる闘気に気付いた真中まなかの護衛が、ようやく緊張感を取り戻す。

「な、なんや。女は黙っとれ!」

 おっちゃんは何にも気付いとらんらしい。それはそれで幸せなんかな。気付いたら、恐ろして立ってもおられんやろしな。

「へえ?同格の国の次期領主夫人に、女は黙っとれ?今日のうちらは父の名代みょうだいや。同じ身分の他国の領主から領主夫人への言葉遣いとは、とても思えんませんなあ」
「鶴さま。この方、粗相しかせえへんな。とてもやないけど恥ずかしうて、殿下方に紹介などできるわけあらしません」
「な、な、な、なんやと!この!この!若造共が!わしと其方そちら如きが同格やなどと、どの、どの口が!」
「この口や」

 べ、と舌を出してみせる。

「いややな、鶴さま。もう同格やないんちゃう?」
「そやな。皇家と繋がりを持ったんやから、うちはもう、九鬼くきと同列言うてもええかもしれんな」
「な、な、な、こ、こ、こ」

 西国筆頭なんて頼まれてもごめんやけど。その地位をうちらが狙う事なんて、天地がひっくり返っても有り得へんけど。
 でも。
 うちらは、殿下方とえにしを結んだ。それはとても心地好いえにしで、絶対に手放したくないと思った。これからも殿下方や力丸りきまると仲良うしたい。その為に、九鬼以外のやからに舐められんように振る舞うくらい容易たやすいことや。
 少々の面倒事なんて、あの楽しい空間におれることを思たら、なんて事ない。

「こ、この無礼者共!そこへ直れ!無礼討ちにしてくれるわ!」

 おっちゃん。うちらにはもう、その、覚悟がある。殿下方と、これからもずっと仲良うする覚悟が。
 おっちゃんはどうや?殿下方と仲の良い人間に手を出そうとしとる、そんな覚悟はあるか?
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