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第八章 郷に入っては郷に従え
115 だいぶ薄くなっていた 鶴丸
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「無礼討ちって何?」
ほんまにこのお人は……。本気出したら気配をどこまで消せるんやら。
すっと横に避けて、真中の正面の場所を譲る。奥さんと二人、包拳礼をして頭を下げたら、とことこと前に歩いてきた成人殿下が右手をひらひらと振った。一つ頷いて包拳礼を解く。うん、と頷く成人殿下にも両脇の護衛にも緊張感は欠片もない。
怒鳴った後の真っ赤な顔で動きを止めたおっちゃんには、突然現れたように見えたやろな。護衛共は、流石に少し前に気付いとったか?いや、集まってきとる影たちに気を取られて気付いとらんかったか。包拳礼をするべきかどうかと、護衛たちの手がさ迷って主を見た。真中のおっちゃんが礼を取る様子はない。
成人殿下も、横に立つ影の象徴みたいなじい様も力丸も、気配を感じさせずにどこまで近付けるかっていう遊びをしとったかのように静かにそこに立つ。
「無礼とは、礼を欠くことですな。目上の者への、礼儀を欠いた振る舞いのことです。それをした者を斬り捨てることを無礼討ちと言います」
「ふーん……。え?いいの?斬っていいの?」
斬っていいなら、今おっちゃん斬られとるんちゃうかな。
「いい訳ねえだろ」
「え?駄目ってこと?なんで駄目なのに斬ろうとしてるの?それをしてもいいくらい、ええっと、無礼?なことしたの?」
「してねえだろ」
「だよね?鶴丸も松吉も無礼なんてしないもん。今も礼したし。さっきも緋色が、礼はいらないって言うまでちゃんと礼してたし」
「だな。殿下はああ見えて、無礼者は不快に思うタイプだから」
「ふーん?あのさ、あの人、鶴丸と松吉の目上なの?」
「いいえ」
恐ろしいじい様が、怖いくらいに優しく成人殿下に笑いかけてきっぱりと言うた。
「同格です。どっちが目上でもありません」
「な、な、何を言うとんや」
流石に声の大きさは落ちとるけど、声を上げれた真中は流石と言うべきか。いや、呆然としとった方が良かったんちゃうかな。
まあそんなことより、おっちゃん、成人殿下に包拳礼をせんかい。
「このわしがそこの若造と同格やと?」
「そうです。西の属国の一つを治める者同士。この度、鶴丸さまはお父上の名代として西賀国の全権を任されて参られておられますから、こちらの西中国の領主と同格として扱われます」
「じゃあ、無礼なんてないじゃん」
「その通り」
また、じい様は優しい顔で笑う。
「無礼というのは」
そしておっちゃんの髪の毛が、ばっさりと顔に落ちた。だいぶ薄うなってきとったんを誤魔化しとったんか、短くなって顔に落ちるとだいぶ心許ない量やった。
「この者のような者のことを言います」
じい様が冷静に成人殿下に説明しとる。おっちゃんの髪を躊躇いなく切った力丸が、嫌そうにおっちゃんの髪を投げ捨てて帰ってきた。護衛たちは、動いてええのかどうか悩んで動けなかったらしい。動かんくて正解やで。まあ、動いた所でどうにもならんかったやろうけど。
…………。
必死に笑いを堪えていると、隣で奥さんも俯いて震えとる。
あかん。
おもろい。
ほんまにこのお人は……。本気出したら気配をどこまで消せるんやら。
すっと横に避けて、真中の正面の場所を譲る。奥さんと二人、包拳礼をして頭を下げたら、とことこと前に歩いてきた成人殿下が右手をひらひらと振った。一つ頷いて包拳礼を解く。うん、と頷く成人殿下にも両脇の護衛にも緊張感は欠片もない。
怒鳴った後の真っ赤な顔で動きを止めたおっちゃんには、突然現れたように見えたやろな。護衛共は、流石に少し前に気付いとったか?いや、集まってきとる影たちに気を取られて気付いとらんかったか。包拳礼をするべきかどうかと、護衛たちの手がさ迷って主を見た。真中のおっちゃんが礼を取る様子はない。
成人殿下も、横に立つ影の象徴みたいなじい様も力丸も、気配を感じさせずにどこまで近付けるかっていう遊びをしとったかのように静かにそこに立つ。
「無礼とは、礼を欠くことですな。目上の者への、礼儀を欠いた振る舞いのことです。それをした者を斬り捨てることを無礼討ちと言います」
「ふーん……。え?いいの?斬っていいの?」
斬っていいなら、今おっちゃん斬られとるんちゃうかな。
「いい訳ねえだろ」
「え?駄目ってこと?なんで駄目なのに斬ろうとしてるの?それをしてもいいくらい、ええっと、無礼?なことしたの?」
「してねえだろ」
「だよね?鶴丸も松吉も無礼なんてしないもん。今も礼したし。さっきも緋色が、礼はいらないって言うまでちゃんと礼してたし」
「だな。殿下はああ見えて、無礼者は不快に思うタイプだから」
「ふーん?あのさ、あの人、鶴丸と松吉の目上なの?」
「いいえ」
恐ろしいじい様が、怖いくらいに優しく成人殿下に笑いかけてきっぱりと言うた。
「同格です。どっちが目上でもありません」
「な、な、何を言うとんや」
流石に声の大きさは落ちとるけど、声を上げれた真中は流石と言うべきか。いや、呆然としとった方が良かったんちゃうかな。
まあそんなことより、おっちゃん、成人殿下に包拳礼をせんかい。
「このわしがそこの若造と同格やと?」
「そうです。西の属国の一つを治める者同士。この度、鶴丸さまはお父上の名代として西賀国の全権を任されて参られておられますから、こちらの西中国の領主と同格として扱われます」
「じゃあ、無礼なんてないじゃん」
「その通り」
また、じい様は優しい顔で笑う。
「無礼というのは」
そしておっちゃんの髪の毛が、ばっさりと顔に落ちた。だいぶ薄うなってきとったんを誤魔化しとったんか、短くなって顔に落ちるとだいぶ心許ない量やった。
「この者のような者のことを言います」
じい様が冷静に成人殿下に説明しとる。おっちゃんの髪を躊躇いなく切った力丸が、嫌そうにおっちゃんの髪を投げ捨てて帰ってきた。護衛たちは、動いてええのかどうか悩んで動けなかったらしい。動かんくて正解やで。まあ、動いた所でどうにもならんかったやろうけど。
…………。
必死に笑いを堪えていると、隣で奥さんも俯いて震えとる。
あかん。
おもろい。
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