【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第八章 郷に入っては郷に従え

118 お見送り  成人

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鶴丸つるまる松吉まつきち、またね。また遊ぼうね」
成人なるひと殿下、わざわざお見送り頂き、ありがとうございます。朝早うにすみません」
「いいよー。俺はねえ、俺は起きてるの、朝は。でも、緋色ひいろが早くに起きれなくてお見送りできなくてごめんなさい」
「いえ、そんな。とんでもない」

 鶴丸つるまるが首と手をぶんぶんと横に振った。目の端で、力丸りきまるもぶんぶんと手を振っているのが見える。
 あ。

「あ、間違えた。緋色ひいろは早くなくても起きれないんだった」

 力丸りきまるが、うんうんと頷いた。鶴丸つるまる松吉まつきちが、ぱっとうつむいて肩を震わせている。昨日もしてたね、それ。なんだろ?
 少ししたら、とってもいい笑顔で顔を上げた。

「是非、うちの方にも遊びに来てください。何も楽しい遊び場などはないんですけども」
「行くー。鶴丸つるまる松吉まつきちがいたらいい」
「……!」

 少し黙った鶴丸つるまるが今度は胸を押さえて、うって言って目をつぶった。横で松吉まつきちも同じ仕草をしている。仲良しね。胸は大丈夫?それからまた、ぱあっと笑う。

「美味しいもん用意して待っとります」
「うちは、殿下んとこ行きたいです。ほんまに行きますよ?あいすくりーむ?でしたっけ?絶対、食べに行きますからね」
「やった!来てね。すぐ来てね。いっぱい作ってもらっとく!」

 今度は二人とも片手で顔を覆って上を向いてしまった。んー?なにか見える?

「この、たらしが」
力丸りきまる、なに?」
「何でもねえ。友だちがたくさんできて良かったな、成人なるひと
「えへへ。うん」
「でもな」

 小さな声で話した力丸りきまるは、俺に近付いてきてもっと声を潜める。

「お前の一番の親友は俺だ」

 ええっと。
 あ、うん。

「当たり前だけど?」

 って言ったら、一回、目を見開いた力丸りきまるが、がばっと肩を組んできた。

「だから、お前から離れられないんだよなあ」

 力丸りきまるが、俺の首すじにぐりぐりしようとした所でひやりとした気配が近くに寄ってくる。じいやかなー。

「おっと、あぶねえ」
「皆さま、仲良しですねえ」

 いつの間にか前を向いていた鶴丸つるまるが、にこにことしてもう一度頭を下げた。

「ほな、帰ります。上様も、なんや処理を丸投げしてすんません」

 慌てて見送りに出てきた壱鷹いちたかにも、鶴丸つるまるは丁寧に頭を下げた。壱鷹いちたかは、先に俺に包拳礼をして、おはようございますって言う。俺も、おはよって言ってから、もういいよの合図をした。手をひらひらしたら、もういいよってことになるの、早く知っておけば良かった。これ便利。
 壱鷹いちたかは礼を解いて鶴丸つるまるに向き直る。
 礼の順番を間違えない人たちは気持ちがいい。俺も分かりやすくて助かる。

「いや。見事な裁きやった。大変な役目をやらせたな。褒美はまた、必ず届ける」
「そんなん、いりません。上様の助けになれたなら、幸いです」
「そういう訳にはいかん。事と次第によっては領地替え……」
「勘弁してください!うちらは土着です。生まれた時から領地と共にあるんです。それはあきません」
「上様、それは褒美ちゃいます」

 鶴丸つるまる松吉まつきちが、珍しく壱鷹いちたかの言葉の途中で口を挟んだ。こういうのも、いい時とだめな時がある。

「そうやな。すまん。また話に来てくれるか」
「当たり前です。協力は惜しみません」
「末永うよろしく頼む」
「それはもちろん」

 良かった。これは、口を挟んでいいやつだった。

「ほな、さようなら」

 鶴丸つるまるたちは強いから護衛もほんの少しで、使用人もほんの少しで来たみたい。車一台で身軽に帰って行った。
 最後まで、楽しかった!
 俺たちも、緋色ひいろを起こして帰ろうかな。
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