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第八章 郷に入っては郷に従え
126 ただいまのご挨拶 成人
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「誠にご苦労であった」
父さまが言って、緋色も俺も、後ろに並んでいる一緒に行った人たちも皆で、一斉に包拳礼の形で立ったまま更に頭を下げた。静かなのに揃った音がするような、こういう格好良い瞬間が好き。皆が、前に並ぶ父さまと朱実殿下に敬意を表していて、心の底から礼をしているから揃うんだと思う。父さまはすごい。朱実殿下もすごい。
皆と同じように包拳礼の形ができない自分が、ちょっとだけ悔しかった。
「楽にせよ」
階段の上に椅子があるから、父さまは声を張る。ちょっと大変だ。壱鷹たちの所みたいに、一段しか違わない所で直に座っているならもう少し近くていいのに。でもあれは、武器を持っていたら簡単に届くからちょっと危ない。父さまくらい離れている方が安全。このくらい離さなきゃいけないようなことが、前にあったのかもしれない。
俺たちはまた、一斉に包拳礼を解いた。
「どうであった?」
「は。九鬼の跡取り、弐角の結婚式、披露宴は万事恙無く」
「そうか」
緋色が少し声を張って報告をした。正装で、ぴしりと背筋を伸ばして立っている姿はとっても格好良くて見惚れちゃう。
緋色は今日も格好良いねえ。
「西国も落ち着いたようで何より。詳細はまた、晩餐を共に楽しみながら聞かせてもらうとしよう」
ん?晩餐を共に?晩餐って夜ご飯だっけ?夜ご飯を父さまと一緒に食べようってこと?
「げ」
「何かおかしな音が聞こえたようだが?」
「あー、いえ。できれば本日ただいまより、二日ほどお休みを頂けますれば、と」
「ふむ。もちろん、明日はゆるりと過ごすがよい」
おお。明日はお休みだって。良かったね、緋色。楽しく友だちの結婚式に参加してきただけなのに、お休み?
あ。あの楽しいのも、お仕事だったからか。そうかあ。お仕事か。
「では、詳細は休みの後に書面にて提出致しますので、そちらをご覧頂ければと思います」
「何を言う。そんなに間があいては、思い出も色褪せてしまうではないか。仕事は休みで構わぬ。旅行の思い出話を家族に伝えることは仕事ではないだろう?なあ、成人」
え?俺?
父さまが優しい顔で俺を見た。朱実殿下もこっちを見ている。
楽しかったことを父さまや朱実殿下に伝える……。
うん。仕事じゃないね。
楽しかったこと、いっぱいあったし、色んな人にお話ししたい。
結婚式は神様に誓うのが同じだったこと。真っ白じゃない着物も花嫁に似合ったこと。お花の形の野菜たち。新しい友だち。
「はい。仕事じゃないです」
俺は、大きな声で返事をした。
父さまが言って、緋色も俺も、後ろに並んでいる一緒に行った人たちも皆で、一斉に包拳礼の形で立ったまま更に頭を下げた。静かなのに揃った音がするような、こういう格好良い瞬間が好き。皆が、前に並ぶ父さまと朱実殿下に敬意を表していて、心の底から礼をしているから揃うんだと思う。父さまはすごい。朱実殿下もすごい。
皆と同じように包拳礼の形ができない自分が、ちょっとだけ悔しかった。
「楽にせよ」
階段の上に椅子があるから、父さまは声を張る。ちょっと大変だ。壱鷹たちの所みたいに、一段しか違わない所で直に座っているならもう少し近くていいのに。でもあれは、武器を持っていたら簡単に届くからちょっと危ない。父さまくらい離れている方が安全。このくらい離さなきゃいけないようなことが、前にあったのかもしれない。
俺たちはまた、一斉に包拳礼を解いた。
「どうであった?」
「は。九鬼の跡取り、弐角の結婚式、披露宴は万事恙無く」
「そうか」
緋色が少し声を張って報告をした。正装で、ぴしりと背筋を伸ばして立っている姿はとっても格好良くて見惚れちゃう。
緋色は今日も格好良いねえ。
「西国も落ち着いたようで何より。詳細はまた、晩餐を共に楽しみながら聞かせてもらうとしよう」
ん?晩餐を共に?晩餐って夜ご飯だっけ?夜ご飯を父さまと一緒に食べようってこと?
「げ」
「何かおかしな音が聞こえたようだが?」
「あー、いえ。できれば本日ただいまより、二日ほどお休みを頂けますれば、と」
「ふむ。もちろん、明日はゆるりと過ごすがよい」
おお。明日はお休みだって。良かったね、緋色。楽しく友だちの結婚式に参加してきただけなのに、お休み?
あ。あの楽しいのも、お仕事だったからか。そうかあ。お仕事か。
「では、詳細は休みの後に書面にて提出致しますので、そちらをご覧頂ければと思います」
「何を言う。そんなに間があいては、思い出も色褪せてしまうではないか。仕事は休みで構わぬ。旅行の思い出話を家族に伝えることは仕事ではないだろう?なあ、成人」
え?俺?
父さまが優しい顔で俺を見た。朱実殿下もこっちを見ている。
楽しかったことを父さまや朱実殿下に伝える……。
うん。仕事じゃないね。
楽しかったこと、いっぱいあったし、色んな人にお話ししたい。
結婚式は神様に誓うのが同じだったこと。真っ白じゃない着物も花嫁に似合ったこと。お花の形の野菜たち。新しい友だち。
「はい。仕事じゃないです」
俺は、大きな声で返事をした。
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