【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第八章 郷に入っては郷に従え

133 大事な大事な俺の  源之進

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 何だそりゃ。
 一緒に暮らしている好きな人が家族だって?
 なんだその……。俺にものすごく都合のええ家族の括りは。
 そんなん、そんなんで言うたら、俺は、俺とおみは家族やないか。いや、俺とおみこそが家族やないか。

「あ、え。ああ……」

 成人なるひと殿下は、もう何も言う気はないらしい。一つしか開いていない大きな目が、じっとこちらを見とる。俺が、成人なるひと殿下の話を飲み込んだんかどうか、確認してはるんやろか。それとも、もう何も俺に言えることはないと見放されたんやろか。
 いや。
 こちらを向く目はただただ真っ直ぐで、俺が理解したと信じて疑っとらんように見える。
 家族。
 俺とおみは家族……。
 おみは俺に今まで、俺たちは家族やなんて言うたことはなかった。学校に通い出してからすぐの頃、何度かしたやり取りの後からは二度と。

「なあ、源さん。源さんのこと、お父さんて呼んでええ?」
おみおみにはな、立派なお父上がいらっしゃる。今は会えんけど、ちゃんといらっしゃるんや。やから、あかん。俺なんかをお父さんて呼んだらあかんよ」
「父上は父上やし、源さんはお父さんでええやん」
「あかん。な、おみおみはいつか……。いや、ええ。とにかく、俺は源さん。ええな」
「ん。……分かった」

 聞き分けのええおみは、いつもそうして頷いてくれとったけど。
 ほんまは家族やと、ずっと家族やと思ってくれとったんか。けど、世間の家族の括りや俺の言葉を聞いて、表には出さずに心の内に隠してくれとったんか。
 成人なるひと殿下の家族の括りを聞いて、やっぱり俺とおみは家族やったと腑に落ちるまでずっと。
 そんで、そんで腑に落ちたから、こうして今、おみにとって大事な方に俺のことを家族やって紹介してくれたんか。
 うつむいて、静かにしゃくり上げるおみの前に立ち、ぎゅっと抱き締めた。成人なるひと殿下に、背中を向ける無礼を咎められてしまうやろか。いや、この方はそんな事言わはらん。たぶん、俺がこうしたら、これでええって顔で可愛らしく笑わはるんちゃうかな。
 まだ会うたばかりやけど、何故かその顔が浮かんで自然と自分の口角も上がるんを感じた。

「俺も。俺も家族やと思っとる。思っとった。ずっと、ずっと思っとった。大事で、大事で、返しとうのうて、離れる日が怖うて、だから、あんまり気持ちが近くならんように気をつけて……」

 ごめん。ごめんな、おみ。今まで言えんくてごめん。

「大事な、大事な俺のおみ。家族やと言うてくれて、ありがとう」

 
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