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第九章 礼儀を知る人知らない人
47 ここで過ごした時間 源之進
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わあ、と子ども達のはしゃぐ声。大きな拍手。すっかり冷めたたこ焼きを食べ終えた頃、車椅子に乗せられ外へと連れ出されて、西賀国の次期領主夫妻の剣舞を見る人々の中に置かれた。
よく鍛錬され、大層息のあった剣舞は見事で、しばし先ほどからの懸念も忘れて見入っとった。衣装もまた、動く度にひらりひらりと舞う様が美しい。こんな素晴らしい見世物は見たことがなかった。隣に立つ臣が、夢中で手を叩いとる。……こんな娯楽とも無縁の暮らしやったな、俺らは。
「これ、弐角も見てないよ」
近くにいた成人殿下が、重大な秘密を打ち明けるように臣に話しているのが聞こえた。
「そうなん?」
「うん」
にこにこと頷いておられる言葉の、意味するところが分からない。臣には分かっとるんか。
「それは、弐角は残念やったな?」
「うん」
臣にも、成人殿下の言葉の意味が通じとるようには見えん。けど、深く聞くことなく笑って答えとる。
「結婚式、俺たちのと一緒だった。誓いとか」
「ああ、うん。そっか」
臣は、弐角さまの結婚式に出席できんかった、と言うてたな。
「皆でご飯食べたり」
「うん」
「一緒」
「そっか」
「歌う人と踊る人いたのが違った」
「ああ、うん。歌う人と踊る人? そっか、楽しそうやな」
「楽しかった。でも、剣舞が一番」
「ああ。これ」
臣の視線の先、一通り剣舞が済んだ後の演者に子ども達が近寄って、すごいすごいと興奮している。小学生ほどの背格好の二人が、剣を持たせてもろて笑顔を見せていた。あんなにひらりひらりと振り回していた踊り用の剣は意外に重さがあるらしく、思うように扱うことができずにふらついていた。
成人殿下の話は続いている。
「でも、その時松吉できなくて」
「ふんふん」
「鶴丸一人で、衣装も違くて」
「ああ、なるほど」
臣は得心して頷いた。
「弐角の結婚式の時の剣舞は、この正式な衣装やなかったんやね。ほんで、鶴丸さまがお一人で舞われたんか」
ふんふん、と頷いた成人殿下は、剣を持たせてもらっている子ども達の輪に加わるために歩いて行った。
「弐角さまの結婚式の様子を教えてくれはったってことか」
臣の言葉で何となく察した。
「え? あ、うん。そうやと思う」
「よう分かるな、臣」
「え? ああ……」
驚いたように目を見開いた臣は、その後でふふっと笑った。
「それ、うちもよう言うとったわ。離宮に来た頃」
「へえ」
「あはは、そっか」
首を傾げる俺に、臣が笑う。
「うち、分かるようになったんか。そっか……」
最後に呟いた、嬉しいという言葉が、妙に胸に刺さった。
よく鍛錬され、大層息のあった剣舞は見事で、しばし先ほどからの懸念も忘れて見入っとった。衣装もまた、動く度にひらりひらりと舞う様が美しい。こんな素晴らしい見世物は見たことがなかった。隣に立つ臣が、夢中で手を叩いとる。……こんな娯楽とも無縁の暮らしやったな、俺らは。
「これ、弐角も見てないよ」
近くにいた成人殿下が、重大な秘密を打ち明けるように臣に話しているのが聞こえた。
「そうなん?」
「うん」
にこにこと頷いておられる言葉の、意味するところが分からない。臣には分かっとるんか。
「それは、弐角は残念やったな?」
「うん」
臣にも、成人殿下の言葉の意味が通じとるようには見えん。けど、深く聞くことなく笑って答えとる。
「結婚式、俺たちのと一緒だった。誓いとか」
「ああ、うん。そっか」
臣は、弐角さまの結婚式に出席できんかった、と言うてたな。
「皆でご飯食べたり」
「うん」
「一緒」
「そっか」
「歌う人と踊る人いたのが違った」
「ああ、うん。歌う人と踊る人? そっか、楽しそうやな」
「楽しかった。でも、剣舞が一番」
「ああ。これ」
臣の視線の先、一通り剣舞が済んだ後の演者に子ども達が近寄って、すごいすごいと興奮している。小学生ほどの背格好の二人が、剣を持たせてもろて笑顔を見せていた。あんなにひらりひらりと振り回していた踊り用の剣は意外に重さがあるらしく、思うように扱うことができずにふらついていた。
成人殿下の話は続いている。
「でも、その時松吉できなくて」
「ふんふん」
「鶴丸一人で、衣装も違くて」
「ああ、なるほど」
臣は得心して頷いた。
「弐角の結婚式の時の剣舞は、この正式な衣装やなかったんやね。ほんで、鶴丸さまがお一人で舞われたんか」
ふんふん、と頷いた成人殿下は、剣を持たせてもらっている子ども達の輪に加わるために歩いて行った。
「弐角さまの結婚式の様子を教えてくれはったってことか」
臣の言葉で何となく察した。
「え? あ、うん。そうやと思う」
「よう分かるな、臣」
「え? ああ……」
驚いたように目を見開いた臣は、その後でふふっと笑った。
「それ、うちもよう言うとったわ。離宮に来た頃」
「へえ」
「あはは、そっか」
首を傾げる俺に、臣が笑う。
「うち、分かるようになったんか。そっか……」
最後に呟いた、嬉しいという言葉が、妙に胸に刺さった。
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