【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

50 案内するなら商店街  成人

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 今日は、街へ出かけようという事になった。せっかく遠くから来てくれたんだし、色々たくさん見ていってほしい。デパートと商店街のどちらがいいかって聞いたら、いつも俺が買い物する場所でいいって松吉まつきちが言ったから、商店街に行くことにした。乙羽おとわは、お客さまにはデパートじゃない? ってぶつぶつ言ってたけど、俺、デパートはあんまり行かないから、どこにどんな売り場があるかよく分からない。だから、案内できないんだよね。乙羽おとわはたまにデパートに出かけてるから、時間があったら乙羽おとわの案内でデパートにも行ったらいいんじゃないかな。

「俺も行く」

 緋色ひいろが言ったから、びっくりした。行ってこい、って言うと思ってた。今日はお休みの曜日じゃないから、いつもの仕事があるんじゃないの?

「お客さまのもてなしも仕事だろ。木の玩具の売り場も確保しなきゃならん」
「商店街で売るの?」
「その辺、確認に行く」
「ふーん」

 いつもの商店街へ行って、車から降りた。いつもは、半助はんすけかじいやと俺の二人で歩いてる道を、緋色ひいろ常陸丸ひたちまる鶴丸つるまる松吉まつきち亀吉かめきち香月かづき香月かづきによく似てる那月なつきとで歩いた。那月なつき香月かづきの双子の弟。香月の方が体が小さいけど姉。双子は普通の兄弟よりそっくりってのは知っている。壱臣いちおみ弐角にかくが双子だから、色々教えてもらった。
 香月かづき那月なつきは性別が違うから体の大きさがちょっと違う。顔もちょっと違う。でも、一緒にお母さんのお腹の中にいて、一緒にお腹の中から出てきて一緒に育った二人は息がぴったり。二人の剣舞を今朝見せてもらったら、鶴丸つるまる松吉まつきちの剣舞よりもっと何もかもがぴったりでびっくりした。一人一人なら鶴丸つるまる松吉まつきちの方がキレがあって綺麗ですごいのに、二人で舞うと香月かづき那月なつきの方が綺麗に見える。双子、すごい。

「清さーん!」

 端っこの八百屋で、いつも通りに清さんに手を振って駆け寄る。清さんは、店の前で真っ直ぐに立って待っていた。あれ? 今日はお客さんいないね。ちょうど空いてる時間だったかな?

「ようこそいらっしゃいました。八百屋の清太せいたでございます」

 清さんは、しっかりと挨拶をして頭を下げている。俺たちに包拳礼はいらないって言ってあるから、鶴丸つるまるたちへの挨拶かな。先触れが来てたのか。珍しい。
 ん? 清太せいた? そういえば、前に一回聞いた事あった。清さんは、清太さんを縮めた言い方だって。料理人の源さんの時に、名前を縮めてさんを付ける法則をちっとも思い出さなかった。清さんの名前、なんだろ? って思っちゃってたよ。
 忘れててごめん、清さん。もしかして金物屋の源さんも、聞いてるのに忘れてるのかな、俺。そうかも。後で金物屋に行って聞いてみよう。源さんと同じ源之進だったら面白い。

「清さん。友だちの鶴丸つるまる松吉まつきち亀吉かめきち連れてきた」
「お邪魔しとります」
「ええっと、あんまり上等な品は置いてねえんですが、楽しんで行ってください」
「ありがとう」

 うん。やっぱり商店街なら案内しやすい。
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