【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

81 全力で遊ぶぞ  緋色

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「殿下。これらを全部連れて、逃がした者が着いた場所に押しかけたらどやろか?」
「なるほど?」

 鶴丸つるまるは、この賊共がよほど邪魔らしい。

「行ったところで、そこも、こいつらと同じで簡単に切り捨てられる場所なんでは? 生き残っても帰ってくるなって言われてないんすから、大して重要じゃないでしょ」

 常陸丸ひたちまるがくそ真面目に答えている。気にするな、常陸丸ひたちまる鶴丸つるまるは、この大勢の処遇を考えるのが面倒になっているだけだ。そんな真面目に考えなくていい。
 まあ、確かに邪魔だ。訓練された兵が、こんなに来るとは思っていなかった。指揮系統以外は、その辺の破落戸ごろつきを集めてくるものだと考えていたから、少し驚いている。西中さいちゅう国、無駄に金と力を持ってるな。当主交代の影響が微塵も感じられない底の深さは、九鬼くきの脅威だ。これを機に、少し削っとくのも有りか。

「捕まった後はどうなる予定だった?」

 この先の指示は受けているのか? と、ふと思いついたことを聞いてみたが、先ほど口を開いた者は、すっかり顔色を失くして口を閉じたまま答えない。どうした? 目の前で処遇が話し合われるとは思わなかったか? 皇国の人間がいるとは思わなかったか? 準備された台詞が、どれも俺の質問の答えに合わないか? 

「殿下。今回の首謀者は勝手に事を起こしていて、国の首脳は知らないって線ですかね。それにしては、ちゃんとした兵ですけど」

 常陸丸ひたちまるの言葉に、賊が幾人か肩を揺らした。顔を上げて目を見開いている者もいる。だが、うっかり口を開かない辺り、やはりよく訓練された兵であるようだ。国からの命だと聞かされてここに来たってところか。私兵ではない?

「あるな。全く噛んでいない訳ではないだろうが、しっぽを切りやすくしてあるんだろう。台本が雑すぎる」
「なら、あっちへ乗り込んで騒ぎを起こしたら、よく分からないていで中央が出てくるかもしれませんね」
「それなら楽だな」
「楽」

 あはは、と力丸りきまるが笑った。

「出てきてもらったら、楽」

 何度も言わんでもいい。朱実あけみに色々と条件付けをされているから大変なんだ。

「城を落としてはならない、一人も殺してはならない、街に損害を与えてはならない、と朱実あけみが言っていた。最後は九鬼に裁可を求めること、ってのもあったな。はあ、面倒臭い……」

 遊びに来る条件。これさえ守れば、しばらく遊んで来ていいと朱実あけみは言った。
 守るさ。
 しばらく遊んでやる。

「ほな、殿下。とりあえず、これらを返しに行きましょか」

 出荷用の、各務かがみ家の紋がでかでかと入ったトラック二台に賊共を詰め込んで、派手に西中さいちゅう国に入国だ。
 西中さいちゅう国は飯が旨いと聞くから、昼飯はあちらで食ってもいい。
 成人なるひと亀吉かめきちの昼寝が終わるまでに、各務かがみの屋敷に帰るぞ。
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