【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

117 ふんふふふ、ふーん  成人

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 車に乗って、城から街へ向かう。常陸丸ひたちまる力丸りきまるとじいじは上の軍服を脱いで、休みの日に着ているような服を着た。街に出たりする時のために、俺たちのいつもの服と一緒に持ってきていたらしい。街に出る気満々だったのは、竹光たけみつ玉鶴たまつるに、西中さいちゅう国の街は、たくさんの面白い物が並んでいる店がたくさんあって歩くだけでも楽しいし、美味しくて安い食べ物もたくさん売っているって聞いたからだ。
 俺たちは今回、何かをするって訳じゃなくて、見てるだけでいいってお仕事だから、きっと時間があると思ったんだよね。ふふ。あった! 時間あったよ。
 無くてもきっと、緋色ひいろは時間を作っただろうけど。だってデートだ。デートは、何回しても楽しいからね。デートってだけでどこに行っても楽しいのに、楽しい街だって聞いたら、もう楽しみすぎてどきどきするくらいだ。楽しい、新しい街でのデート、最高だ。
 三人は上の服だけ着替えたら、その上に、軍服の上に羽織っていた上着を羽織った。黒いズボンはそのまんま。
 なんか、うん。あんまり変わってなくない? って思ったけど、まあ、軍服ではなくなったからいいのかな? これだけで、護衛とか軍人さんって分からなくなる? 
 うーん。力丸りきまるは分かんないかもしれないけど、常陸丸ひたちまるとじいじはやっぱり軍人さんだよなあ。いや、でも、どんな服を着ても強そうだから、仕方ないか。軍人さんが仕事中じゃないよって感じに見えればいいのか。
 俺と緋色ひいろは、ズボンも着替えた。ズボンは真っ赤じゃなくて黒なんだけど、横に赤い縦線が入ってるんだよね。あんなはっきりした赤い色なんて皇族しか使えないから、ズボンも使えなかったんだよ。ま、軍服はあまり温かい生地じゃないから、温かいズボンに履き替えるのはいいんだけど。ズボンは裏がふわふわ。上に着た服は表がふわふわ。
 
「ふんふふふ、ふーんふん」
「出たな、調子っぱずれの鼻歌」
「え? なに、力丸りきまる
「何でもねえ。先に様子見てくる」

 常陸丸ひたちまるの運転する車が停まったら、力丸りきまるがひょいと車から降りた。

「えー? いいよ。一緒に行こうよ」

 俺ももう降りるー。

「そんな訳にいくか」
「だって一緒なんだから大丈夫」

 うわあ、すごい人。え? 今日何か、特別な何かがあるのかな? 緋色ひいろが来てるからって人が集まってるまんま? いや、今日は寒いし雨も降ってたから、そんなに長い時間はいられないんじゃないかなって思ってたけど。
 常陸丸ひたちまるが車を停めたのは、屋根のある商店街のすぐ横。商店街だ! 西中さいちゅう国にもあった! いいよね、商店街。雨が降ってても濡れずに買い物できる。
 商店街いっぱいに人がいて、びっくりしちゃう。いつも俺が行く商店街には、こんなに人は歩いていない。デパートができてからは、だいぶ人が減ったって清さんが言ってたな。うん、すごい。

「様子を見るのも大変そうな人混みじゃな。一緒に降りて行ってしまうか」

 俺もじいじに賛成。
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