1,186 / 1,325
第九章 礼儀を知る人知らない人
143 お手紙 成人
しおりを挟む
「そうか。亀吉は末良と遊びたいのか」
俺たちの話を聞いていた緋色が、にやって笑った。ぽいって読んでた書類を床に投げて、ペンと紙って言いながら常陸丸に手を出す。
「は?」
「何でもいい。紙」
「手紙っすか」
「おう」
「誰に?」
「朱実」
「は?」
「あー、やっぱり紙はいい。紙はこの辺に、ごみに回す紙があるわ。よく分からん品への支出願いに、至急とか赤字で書いてあった紙。至急って書いてあるものほどどうでもいいものが多いのは、ほんと、くだらねえ。いらいらの原因、ほぼあれだ。決めた、あれの裏に書く。ペン寄越せ、ペン」
「朱実殿下へ送る手紙の用紙がそんなもんでいい訳ないだろ。ちょっと待ってろ」
「いや、これがいい。これを見たら、絶対すぐに動くぞ、あいつ。くくっ」
「そんな訳分かんないもの見せなくても、殿下が本気でお願いしたら動きますよ、朱実殿下は。いいから、ちょっと待てって」
「はー? 何言ってんの?」
「こっちの台詞ですよ、それ」
常陸丸は、いいですか、待っててくださいよってもう一回緋色に言ってから、ペンは渡さずに離れていった。でも、イイコトを思いついた顔で笑っている緋色が待つわけなかった。
「筆でいいか」
立ち上がって、鶴丸が書き物をしていた机の前に向かう。もちろん、手には、要らない紙として仕分けされた紙を持っていた。
緋色は、ちょっとだけ斜め上を見たあと、さらさらと紙に何かを書きつけていく。
おお、早い。っていうか、筆で字を書けたんだ、緋色。いつもペンだから知らなかった。格好良い。
俺も立ち上がって手紙を書いてる緋色を覗きにいくと、亀吉も付いてきた。鶴丸と松吉が部屋に入れなくて廊下に残っている。
うん。さらさら書いてるから読みにくい。これ、あれだ。あの、たまに上等な食べ物屋のお品書きに書いてあるやつ。読める人と読めない人がいる字だ。緋色、読むだけじゃなく書くのもできたのか。すごい。朱実殿下はすらすら読みそう。
「電信とばせばええんちゃいます?」
横の机で筆を持っている竹光が言った。部屋の戸は開け放してあるから、廊下での話も部屋での話もどちらにも聞こえている。誰かが急に何かし始めても、急に動いても、説明がいらなくていいね。あんまり広すぎる部屋は、誰が何をしているか分かりにくいから、いちいち報告がいる。お仕事をするのは、ちょっと狭いくらいの部屋がいいのかもしれない。ここは狭すぎだけど。
朱実殿下や緋色の執務室くらいがちょうどいいのかも。
「あるのか? 電信機」
「ありましたよ、あの、なんや煌びやかな部屋の辺りに」
「そうか、流石大国。でもま、そんなもんに金かけるなら、この部屋の人員増やせって思っちまうな。電信機なんて、大して使う機会もなかろうに。まあいい。折角だから使わせてもらおう。うちになら、すぐとばせるかな。誰か詳しいの連れてきてたか……ま、いい。後で試してみる。うちとの回線を専用で開けたら、色々楽だな」
「うち、言うのは、緋色殿下の家ですか?」
「おう」
「そりゃ便利ですけど、わしらはそんなもん使たことないで、殿下方が帰国されたらさっぱりですよ」
「鶴丸に使い方を教えていく」
「ええー? うち? 嫌や、これ以上仕事増えるんは嫌やー」
「すぐ連絡がついたら便利だろ」
「便利やけど。便利やけども」
廊下から鶴丸の声がした。うん。やっぱり、全部聞こえてていいね。
「あー、殿下! 待っててくださいって言ったじゃないっすか! 書き直してくださいよ、それ!」
止めなくてごめんね、常陸丸。緋色、もう書き終わったみたいだ。書き終わった手紙が俺に渡された。持って廊下に出る。亀吉がずっと俺についてくるの、面白い。俺たち今、手紙を届ける仕事の人みたいだね。
緋色が書き直す訳ないって一番知っている常陸丸は、ため息をつきながら、朱実殿下への手紙を受け取ってくれた。
俺たちの話を聞いていた緋色が、にやって笑った。ぽいって読んでた書類を床に投げて、ペンと紙って言いながら常陸丸に手を出す。
「は?」
「何でもいい。紙」
「手紙っすか」
「おう」
「誰に?」
「朱実」
「は?」
「あー、やっぱり紙はいい。紙はこの辺に、ごみに回す紙があるわ。よく分からん品への支出願いに、至急とか赤字で書いてあった紙。至急って書いてあるものほどどうでもいいものが多いのは、ほんと、くだらねえ。いらいらの原因、ほぼあれだ。決めた、あれの裏に書く。ペン寄越せ、ペン」
「朱実殿下へ送る手紙の用紙がそんなもんでいい訳ないだろ。ちょっと待ってろ」
「いや、これがいい。これを見たら、絶対すぐに動くぞ、あいつ。くくっ」
「そんな訳分かんないもの見せなくても、殿下が本気でお願いしたら動きますよ、朱実殿下は。いいから、ちょっと待てって」
「はー? 何言ってんの?」
「こっちの台詞ですよ、それ」
常陸丸は、いいですか、待っててくださいよってもう一回緋色に言ってから、ペンは渡さずに離れていった。でも、イイコトを思いついた顔で笑っている緋色が待つわけなかった。
「筆でいいか」
立ち上がって、鶴丸が書き物をしていた机の前に向かう。もちろん、手には、要らない紙として仕分けされた紙を持っていた。
緋色は、ちょっとだけ斜め上を見たあと、さらさらと紙に何かを書きつけていく。
おお、早い。っていうか、筆で字を書けたんだ、緋色。いつもペンだから知らなかった。格好良い。
俺も立ち上がって手紙を書いてる緋色を覗きにいくと、亀吉も付いてきた。鶴丸と松吉が部屋に入れなくて廊下に残っている。
うん。さらさら書いてるから読みにくい。これ、あれだ。あの、たまに上等な食べ物屋のお品書きに書いてあるやつ。読める人と読めない人がいる字だ。緋色、読むだけじゃなく書くのもできたのか。すごい。朱実殿下はすらすら読みそう。
「電信とばせばええんちゃいます?」
横の机で筆を持っている竹光が言った。部屋の戸は開け放してあるから、廊下での話も部屋での話もどちらにも聞こえている。誰かが急に何かし始めても、急に動いても、説明がいらなくていいね。あんまり広すぎる部屋は、誰が何をしているか分かりにくいから、いちいち報告がいる。お仕事をするのは、ちょっと狭いくらいの部屋がいいのかもしれない。ここは狭すぎだけど。
朱実殿下や緋色の執務室くらいがちょうどいいのかも。
「あるのか? 電信機」
「ありましたよ、あの、なんや煌びやかな部屋の辺りに」
「そうか、流石大国。でもま、そんなもんに金かけるなら、この部屋の人員増やせって思っちまうな。電信機なんて、大して使う機会もなかろうに。まあいい。折角だから使わせてもらおう。うちになら、すぐとばせるかな。誰か詳しいの連れてきてたか……ま、いい。後で試してみる。うちとの回線を専用で開けたら、色々楽だな」
「うち、言うのは、緋色殿下の家ですか?」
「おう」
「そりゃ便利ですけど、わしらはそんなもん使たことないで、殿下方が帰国されたらさっぱりですよ」
「鶴丸に使い方を教えていく」
「ええー? うち? 嫌や、これ以上仕事増えるんは嫌やー」
「すぐ連絡がついたら便利だろ」
「便利やけど。便利やけども」
廊下から鶴丸の声がした。うん。やっぱり、全部聞こえてていいね。
「あー、殿下! 待っててくださいって言ったじゃないっすか! 書き直してくださいよ、それ!」
止めなくてごめんね、常陸丸。緋色、もう書き終わったみたいだ。書き終わった手紙が俺に渡された。持って廊下に出る。亀吉がずっと俺についてくるの、面白い。俺たち今、手紙を届ける仕事の人みたいだね。
緋色が書き直す訳ないって一番知っている常陸丸は、ため息をつきながら、朱実殿下への手紙を受け取ってくれた。
2,248
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる