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第十章 されど幸せな日々
15 言っても分からない時は 成人
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結局、元真中は自分で頭を下げなかったから、じいじが、髪の毛のほとんど無い元真中の頭を手で押さえて下げさせた。元真中は座り込んだままだったから、西国で一番深い礼になった。平伏みたいな形だ。一番下っ端の人は基本的に平伏するものらしいから、ちょうどよかった。
元真中は、ごんって地面におでこを打って赤くなっていたけれど、ま、仕方ない。抵抗するから、強い力で押さえられちゃうんだよ。素直に頭を下げればいいのに。
言っても分からない者は体に覚えさせるしかない、って聞いた事ある気がする。いや、それは本当は駄目なんだっけ? 体罰は駄目? でも、動きを覚えさせるために手助けするのは有り? んん? 誰かに何かを教えるのって難しいんだな。いつも俺に色んな事を教えてくれる青葉はすごい。元真中はまだ子どもみたいな人だから、子どもに教えるみたいに教えなくちゃいけないのかもしれない。
何歳からでも勉強はできます、って青葉は言っていた。俺も大人だけれどまだまだ勉強中だ。元真中も頑張れ。
じいじは、元真中を半分抱えるようにして立たせてバスに乗り込む。さっきのじいじとじいやの話を聞いて、青ざめて肩を落としている人たちも、後に続いてバスに乗り込んだ。そろそろ出発だ。
「とあっく」
俺にしがみついたままだった亀吉が言った。とあっく? あ、トラック?
「違うよ、亀吉。これは乗り合いバスだよ。バス」
「ばす」
そうそう。トラックと似てるけどちょっと違う。トラックは荷物を運ぶ。バスは人を運ぶ。
「かめも。ばす」
全員乗り込むのをちゃんと待ってから、亀吉はバスの乗り口に手をかけた。おお。その段差、登れるのか。すごいすごい。
じゃ、なくって。
「亀吉は行かないよ」
んしょっ、とバスの入り口に立った亀吉が中に入ってしまわないように右手で抱きとめると、亀吉の大きな目がまあるく開いた。
きょろ、と中を見て運転席に目を止める。
「いきまりゅ! かめ、いっしょいく」
残念。亀吉と仲良しの力丸も今、いなくなっちゃったんだよ。
「おっと、亀吉さま。バスの見学は帰ってからにしてください」
運転席から立ち上がった常陸丸が、俺の手から亀吉を受け取ってバスから降りてきた。
「常陸丸です。力丸は別の仕事で国へ帰りました。また会えたら、遊んでやってください」
常陸丸の腕の中で亀吉は首を傾げている。
「いきまりゅ? ちゃう?」
「はい。常陸丸です」
素早く亀吉を受け取った香月が、俺たちから少し離れた。
「あ!」
今のうち、と俺と緋色、常陸丸はバスに飛び乗る。
ぶいーって音を立てて、扉が閉まった。
「あー!」
ごめん、亀吉。今日は一緒に行けないんだ。色々相談して決まった事だから変えられない。ごめんね。
常陸丸は、俺たちが後ろの方の席に並んで座ったのを確認したら、すぐにバスを出発させた。
丁寧に頭を下げる人たちが見えて、ばいばいと右手を振る。
「いっしょいくー!」
窓を閉めていても、亀吉の声が聞こえた。
あんまり説明する暇がなくてごめんね、亀吉。すぐ帰ってくるから。末良と遊んで待ってて。
元真中は、ごんって地面におでこを打って赤くなっていたけれど、ま、仕方ない。抵抗するから、強い力で押さえられちゃうんだよ。素直に頭を下げればいいのに。
言っても分からない者は体に覚えさせるしかない、って聞いた事ある気がする。いや、それは本当は駄目なんだっけ? 体罰は駄目? でも、動きを覚えさせるために手助けするのは有り? んん? 誰かに何かを教えるのって難しいんだな。いつも俺に色んな事を教えてくれる青葉はすごい。元真中はまだ子どもみたいな人だから、子どもに教えるみたいに教えなくちゃいけないのかもしれない。
何歳からでも勉強はできます、って青葉は言っていた。俺も大人だけれどまだまだ勉強中だ。元真中も頑張れ。
じいじは、元真中を半分抱えるようにして立たせてバスに乗り込む。さっきのじいじとじいやの話を聞いて、青ざめて肩を落としている人たちも、後に続いてバスに乗り込んだ。そろそろ出発だ。
「とあっく」
俺にしがみついたままだった亀吉が言った。とあっく? あ、トラック?
「違うよ、亀吉。これは乗り合いバスだよ。バス」
「ばす」
そうそう。トラックと似てるけどちょっと違う。トラックは荷物を運ぶ。バスは人を運ぶ。
「かめも。ばす」
全員乗り込むのをちゃんと待ってから、亀吉はバスの乗り口に手をかけた。おお。その段差、登れるのか。すごいすごい。
じゃ、なくって。
「亀吉は行かないよ」
んしょっ、とバスの入り口に立った亀吉が中に入ってしまわないように右手で抱きとめると、亀吉の大きな目がまあるく開いた。
きょろ、と中を見て運転席に目を止める。
「いきまりゅ! かめ、いっしょいく」
残念。亀吉と仲良しの力丸も今、いなくなっちゃったんだよ。
「おっと、亀吉さま。バスの見学は帰ってからにしてください」
運転席から立ち上がった常陸丸が、俺の手から亀吉を受け取ってバスから降りてきた。
「常陸丸です。力丸は別の仕事で国へ帰りました。また会えたら、遊んでやってください」
常陸丸の腕の中で亀吉は首を傾げている。
「いきまりゅ? ちゃう?」
「はい。常陸丸です」
素早く亀吉を受け取った香月が、俺たちから少し離れた。
「あ!」
今のうち、と俺と緋色、常陸丸はバスに飛び乗る。
ぶいーって音を立てて、扉が閉まった。
「あー!」
ごめん、亀吉。今日は一緒に行けないんだ。色々相談して決まった事だから変えられない。ごめんね。
常陸丸は、俺たちが後ろの方の席に並んで座ったのを確認したら、すぐにバスを出発させた。
丁寧に頭を下げる人たちが見えて、ばいばいと右手を振る。
「いっしょいくー!」
窓を閉めていても、亀吉の声が聞こえた。
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