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第十章 されど幸せな日々
22 人だから 成人
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「成人、中にいろ」
え? ここまで来て?
「嫌だけど?」
緋色は、まだ銃を手にしたままだ。撃つのなら見届けたい。
「外は寒い」
ああ、うん、確かに。扉が開いたら寒かった。寒いのは苦手。生まれ育った国は、こんなに寒くならない所だった。三年暮らした戦場も。俺は、寒いと風邪をひく。それは困る。
元気に長生きする為に、風邪をひいたりしないように気をつけなくちゃいけない。
約束したから。緋色とも。家族の皆とも。
「上着、着る」
朝、力丸を見送ってバスに乗り込むまでのほんの少しの時間に着せられたもこもこの上着。バスの中は暖かいから、すぐに脱いで座席の上にある棚にぽいと載せてあった。棚は高い位置にあるから緋色が載せた。座席に立てば届くかな。白いもこもこの上着が、俺たちの座っていた座席の上に見えている。
他の人たちは、手に持ってきた風呂敷包みを大事に膝に抱えたままだったから、その棚に置いてあるのは俺の上着だけだ。緋色たちは上着着てないし。そういえば、元真中は何も持っていなかった。たぶん、こういう時に持ってくるのは着替えやお金だと思うんだけど、何も持たずに来たら困るんじゃない? 早速、下着や着物を汚してしまった。どうするんだろうな、あれ。脱いだ後、着るものがない。買うお金もない。
この後生きていられたら、困るんだろうな。
考えながら、座っていた座席に戻って靴を脱ごうとしていると緋色も後ろからついてきた。
「ん?」
「上らなくていい」
「上ったら届くんじゃない?」
「俺がいるだろ」
ん、まあ、そうか。
緋色は銃を腰に差して上着を取り、俺に着せてくれた。
ふふ。
なんかちょっと、さっきの緊張が解けちゃった。
バスが臭いのだけが困る。
掃除する道具あるかな。雑巾とか布で、液体を取るだけでもしたいな。
扉の外には、常陸丸とじいじが戻っていた。座ったままの元真中を見下ろしている。千寿と寿々丸は少し離れて立っている。外で待っていた大人、朔って呼ばれていた人が二人の前で、すぐに動けるように構えていた。流石、西賀の人だな。強そう。黙って守られている二人じゃないけれど。
緋色が、腰に差した銃をまた手に取ろうとすると、常陸丸がすぐに動いてその手を押さえた。
「ここなら、少々汚れても問題ないだろ」
「ん、まあ、場所的に問題はない。だが、駄目だ。子どもが見ている」
「はは。獣を仕留める実力者たちだぞ。命のやり取りなど、慣れていよう」
「人と獣は違う、殿下」
「これが、人か?」
「見た目はな」
人と獣は違う。そうだな。人を殺してはいけないって言うけど、獣は殺して食べる。食べなくても、人に害をなすなら殺す。
元真中は人だから殺しちゃ駄目か。
猪を積んだトラックが、後ろに下がり始めた。バスとすれ違えないから、トラックが下がってくれるらしい。何人か、猪と一緒に荷台に乗っている。
「あ」
「どうした?」
「生かして連れて行くなら、元真中もあれに乗せないと」
汚れているからバスには戻せない。殺しちゃ駄目なら、ここに置いてもいけない。
「そうしよう」
ずっと黙って立っていたじいじが、あっという間に両手で元真中を掴むとぶら下げてトラックを追いかけた。うん。力持ち。ゆっくり下がっているトラックに追いついて、ぽいっと乗せている。
「トラック汚れてごめんね、千寿、寿々丸」
「いえ。全然」
「全然、大丈夫です」
二人が、ちょっとほっとしたように力を抜いた。
「バスの掃除もしないと」
「「します」」
「一緒にしよ」
「「はいっ」」
ちょっと臭くなっちゃったけど、皆、バスに乗っていって。
え? ここまで来て?
「嫌だけど?」
緋色は、まだ銃を手にしたままだ。撃つのなら見届けたい。
「外は寒い」
ああ、うん、確かに。扉が開いたら寒かった。寒いのは苦手。生まれ育った国は、こんなに寒くならない所だった。三年暮らした戦場も。俺は、寒いと風邪をひく。それは困る。
元気に長生きする為に、風邪をひいたりしないように気をつけなくちゃいけない。
約束したから。緋色とも。家族の皆とも。
「上着、着る」
朝、力丸を見送ってバスに乗り込むまでのほんの少しの時間に着せられたもこもこの上着。バスの中は暖かいから、すぐに脱いで座席の上にある棚にぽいと載せてあった。棚は高い位置にあるから緋色が載せた。座席に立てば届くかな。白いもこもこの上着が、俺たちの座っていた座席の上に見えている。
他の人たちは、手に持ってきた風呂敷包みを大事に膝に抱えたままだったから、その棚に置いてあるのは俺の上着だけだ。緋色たちは上着着てないし。そういえば、元真中は何も持っていなかった。たぶん、こういう時に持ってくるのは着替えやお金だと思うんだけど、何も持たずに来たら困るんじゃない? 早速、下着や着物を汚してしまった。どうするんだろうな、あれ。脱いだ後、着るものがない。買うお金もない。
この後生きていられたら、困るんだろうな。
考えながら、座っていた座席に戻って靴を脱ごうとしていると緋色も後ろからついてきた。
「ん?」
「上らなくていい」
「上ったら届くんじゃない?」
「俺がいるだろ」
ん、まあ、そうか。
緋色は銃を腰に差して上着を取り、俺に着せてくれた。
ふふ。
なんかちょっと、さっきの緊張が解けちゃった。
バスが臭いのだけが困る。
掃除する道具あるかな。雑巾とか布で、液体を取るだけでもしたいな。
扉の外には、常陸丸とじいじが戻っていた。座ったままの元真中を見下ろしている。千寿と寿々丸は少し離れて立っている。外で待っていた大人、朔って呼ばれていた人が二人の前で、すぐに動けるように構えていた。流石、西賀の人だな。強そう。黙って守られている二人じゃないけれど。
緋色が、腰に差した銃をまた手に取ろうとすると、常陸丸がすぐに動いてその手を押さえた。
「ここなら、少々汚れても問題ないだろ」
「ん、まあ、場所的に問題はない。だが、駄目だ。子どもが見ている」
「はは。獣を仕留める実力者たちだぞ。命のやり取りなど、慣れていよう」
「人と獣は違う、殿下」
「これが、人か?」
「見た目はな」
人と獣は違う。そうだな。人を殺してはいけないって言うけど、獣は殺して食べる。食べなくても、人に害をなすなら殺す。
元真中は人だから殺しちゃ駄目か。
猪を積んだトラックが、後ろに下がり始めた。バスとすれ違えないから、トラックが下がってくれるらしい。何人か、猪と一緒に荷台に乗っている。
「あ」
「どうした?」
「生かして連れて行くなら、元真中もあれに乗せないと」
汚れているからバスには戻せない。殺しちゃ駄目なら、ここに置いてもいけない。
「そうしよう」
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「いえ。全然」
「全然、大丈夫です」
二人が、ちょっとほっとしたように力を抜いた。
「バスの掃除もしないと」
「「します」」
「一緒にしよ」
「「はいっ」」
ちょっと臭くなっちゃったけど、皆、バスに乗っていって。
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