【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第十章 されど幸せな日々

24 答えが出ない  成人 

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「こら、さく

 ぱん、とじいじがトラックから連れてきた中の一人がさくの頭を叩いた。

「すいません。うちの弟が失礼を」

 そのまま、さくの頭を押さえて下げさせながら謝っている。別に失礼じゃないよ。さくは、しっかり挨拶を終えたから。挨拶がちゃんとできたら花丸。
 俺は、いいよいいよ、って右手を振った。最初にちゃんとしてくれたら、それでいい。
 最近、いつまでもちゃんと挨拶ができるようにならない元真中を見ていたから、ちゃんとした挨拶ができるのってすごいことなんだな、って分かったし。
 いや、もう、ほんとに。習った通りにやればいいのにできないの、なんでなのかな。本当に意味が分からないよね。
 ん? 弟?

千寿せんじゅさま付きの戸次とつぎぼうと申します。よろしくお願い致します」

 ぼうは、さくの頭から手を離して包拳礼をした。
 ほら。ぼうもちゃんとできる。

成人なるひと緋色ひいろです。よろしく」

 俺は、また右手をひらひらさせて言った。緋色ひいろは、俺の背中にくっついたままだ。

「そやかて、姉上。可愛いんは誰かて言われたら」

 さくのひそひそ声。姉上か。千寿せんじゅ寿々丸すずまると一緒だな。

「うるさい、さく。言わんでも分かっとる。でもな、こういうのは結局、答えなんて出えへん話なんよ」

 ぼうは、さくが何か言いかけたのを声を潜めて止めた。声を潜めてても、近いから聞こえちゃったけどね。
 そっか。答え出ないのか。

「一番可愛いなんて、亀吉かめきちちゃんやんなー」

 寿々丸すずまるが、ぼそって言ったのも聞こえてくる。

「ほんまや」

 千寿せんじゅも小さな声で頷いて、確かにって俺も思う。あ、でも。

亀吉かめきちも可愛いけど末良すえよしも可愛いよ?」
「「末良すえよし?」」

 ふふ。内緒話じゃなくなっちゃった。

「うん。亀吉かめきちと仲良し」
「え? 亀吉かめきちちゃんのお友達ですか? 何歳ですか?」

 千寿せんじゅが目をきらきらさせながら言った。

「二歳。俺も仲良し」
「へえ。亀吉ちゃんとおんなじくらいかあ。ええなあ。小さい子が二人でおったら可愛いやろなあ」
「うん。可愛い」

 そうだ。一番可愛いってのは、あの二人のことだよ。間違いない。
 ぼう、答え出たよ。
 ぼうに言おうとしたけど、ちょっと待てよ?
 二人だと、どちらかが一番じゃないな? やっぱり答え出てなかった。

「ええなあ。うち、亀吉ちゃんに会えんくなって寂しいんやけど、亀吉ちゃんはお友達おるから寂しないんかなあ」
 
 そっか。
 そうだね。千寿せんじゅは、急に亀吉に会えなくなったもんね。寂しいよね。
 さっき俺が出かける時、亀吉、いっしょいくーって泣いてたな。亀吉も寂しいのかもしれない。

「来る?」
「え?」
「亀吉のとこ、来る?」
「「行く!」」

 話が早い。
 じゃ、帰り乗ってく?

「バス大きいからいっぱい乗れる」

 亀吉、喜ぶな、きっと。

「あー、姫。若も。ちょっとそんなすぐにはお出かけは……」
「「え?」」

 あ、そうだ。
 今、バス、臭いんだった。

「掃除しなきゃ」
「「そやった」」
「「掃除?」」

 ぼうさくも声が揃うんだね。姉弟って面白いな。
 首を傾げたぼうさくにバスの中が汚れたことを説明した。俺の説明を聞き終えたら、皆様はそこにおってください、ってさくが言って、後ろ向きに進むトラックに向かって走っていった。速かった。じいじが、ほうって言うくらい速かった。
 さくは、すぐに大量の布を持って戻ってきた。布を受け取ったぼうが他の人にも指示を出しながら掃除し始めて、あっという間にバスは綺麗になった。ぼうは、水瀬みなせみたいに掃除が上手だった。俺の出番、無かった。
 ぼうたちは、よく効く臭い消しみたいなのも持っていたらしく、掃除が終わったら臭いも無くなっていてびっくりした。元真中以外の西中さいちゅう国の人は、バスの中で大人しく座って待っていた。
 臭いだろうから、掃除している間、外に出る? って聞いてみたんだけど、全員、首を横に振ったんだ。臭くても我慢できるなら、まあ、いいんだけど。外は寒いから、出るのが嫌だったのかな? 
 掃除が終わったら、ぼうさくも、近くの村から手伝いに来てましたって挨拶をしてくれた西賀さいかの人たちも、皆でバスに乗って森を出た。
 皆、バスを見るのも乗るのも初めてや、って喜んでくれた。
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