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第十章 されど幸せな日々
41 そういうことか 成人
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安さんに見送られて、お風呂屋さんから帰った。予想通り、千寿は綺麗な着物姿だった。
ん? あれ?
じいじの運転する車の中で、俺は首を傾げる。
「この服で走って帰るつもりだったの?」
最初、走ってお風呂屋さんに行こうとしていたよね?
「まさかまさか。車やから、とっとと着替えてしもただけですよ」
そっか。そうだよね。走るのは、流石に難しいよねえ。玉鶴は、この姿で敵を片っ端からひっくり返していたから、戦うのはできるみたいだけど。
「この格好で何でもできるんは、玉鶴伯母様くらいのもんやと思います」
あ、やっぱり? 着物で何かするっていうと、やっぱり玉鶴が思い浮かぶよね。俺も今、玉鶴を思い浮かべていた。
一緒だ。
「流石に玉鶴伯母様も、走りはせんのちゃう?」
しないだけで、できたりして。
できそう。
「流石に?」
あ、そうだ。
「千寿は、ひっくり返すのはできる?」
「ひっくり返すんはできます。着物は乱れますけど」
おお。できるんだ。
「はは、修行が足りん。痛てっ」
寿々丸が、ぺんっと千寿に頭を叩かれた。
「そんなん言うんやったらな、足を開かず投げてみい」
「うちの着る服は全部、足開けるもん」
「うちの着物貸したるから、着物着て投げる練習を一緒にしよう」
「どこで使うんや、その技」
「どっかで使うかもしれんやろ」
「うちが女装したって男ってすぐバレるから、使わんって」
「……」
まじまじと寿々丸を見た千寿が、ぶっと吹き出した。
「あはははは。ふっ、くくっ。ひーっひっひっひっ」
涙を流して笑っている。
え? え? 何がそんなにおかしかった?
「うわー。女装なんてしたないけど、こんな笑われるとムカつくー。ひどいですよね、殿下。自分が言い出したくせに」
「え? あ、うん?」
「あれ? 殿下、なんで首傾げてるんです? 寿々丸が女の格好したらおもろいでしょ?」
女の格好。女の……? 綺麗な着物? うーん。
「俺、白い着物着た。結婚式の」
「よう似合っておったぞ?」
運転しながらじいじが言う。
あれって、女の人の格好ってこと? 着物だし。
「剣舞の時に、鶴丸が、借りた着物を羽織ったのも綺麗だった」
鮮やかな花柄の着物。あれもきっと女の人の。
「んー。んん? 成人殿下と鶴兄様?」
「に、似合っとりそうやな?」
寿々丸も着たらいいと思うけど。嫌でなければ。
「足を開かず投げる練習に、着物を着るのはいいと思う」
制限がかかっても戦える人は、本当に強い。
「んん。あかん。このままでは、ほんまに着物を着て鍛錬することになってしまう」
「駄目なの?」
「あー。いや、駄目じゃないですけど、まあ、あんまり着たくはないかなー」
「そっか」
あ、でも、俺も、緋色とお揃いの格好良い服が好きだから一緒だ。綺麗で可愛いのより格好良いのが好き。
そうか。
これは、俺が男だからか。
「おお」
「え? どうしました?」
「なんか今、分かった」
「何が?」
「俺、男だ」
「へ? あ、はい。そうですね?」
「へへー。そうかー」
うん。うん。こういうのが、男と女の違いってやつか。
ちょっとすっきり。
ん? あれ?
じいじの運転する車の中で、俺は首を傾げる。
「この服で走って帰るつもりだったの?」
最初、走ってお風呂屋さんに行こうとしていたよね?
「まさかまさか。車やから、とっとと着替えてしもただけですよ」
そっか。そうだよね。走るのは、流石に難しいよねえ。玉鶴は、この姿で敵を片っ端からひっくり返していたから、戦うのはできるみたいだけど。
「この格好で何でもできるんは、玉鶴伯母様くらいのもんやと思います」
あ、やっぱり? 着物で何かするっていうと、やっぱり玉鶴が思い浮かぶよね。俺も今、玉鶴を思い浮かべていた。
一緒だ。
「流石に玉鶴伯母様も、走りはせんのちゃう?」
しないだけで、できたりして。
できそう。
「流石に?」
あ、そうだ。
「千寿は、ひっくり返すのはできる?」
「ひっくり返すんはできます。着物は乱れますけど」
おお。できるんだ。
「はは、修行が足りん。痛てっ」
寿々丸が、ぺんっと千寿に頭を叩かれた。
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「うちの着る服は全部、足開けるもん」
「うちの着物貸したるから、着物着て投げる練習を一緒にしよう」
「どこで使うんや、その技」
「どっかで使うかもしれんやろ」
「うちが女装したって男ってすぐバレるから、使わんって」
「……」
まじまじと寿々丸を見た千寿が、ぶっと吹き出した。
「あはははは。ふっ、くくっ。ひーっひっひっひっ」
涙を流して笑っている。
え? え? 何がそんなにおかしかった?
「うわー。女装なんてしたないけど、こんな笑われるとムカつくー。ひどいですよね、殿下。自分が言い出したくせに」
「え? あ、うん?」
「あれ? 殿下、なんで首傾げてるんです? 寿々丸が女の格好したらおもろいでしょ?」
女の格好。女の……? 綺麗な着物? うーん。
「俺、白い着物着た。結婚式の」
「よう似合っておったぞ?」
運転しながらじいじが言う。
あれって、女の人の格好ってこと? 着物だし。
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鮮やかな花柄の着物。あれもきっと女の人の。
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そうか。
これは、俺が男だからか。
「おお」
「え? どうしました?」
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「何が?」
「俺、男だ」
「へ? あ、はい。そうですね?」
「へへー。そうかー」
うん。うん。こういうのが、男と女の違いってやつか。
ちょっとすっきり。
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