【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第十章 されど幸せな日々

59 来てよかった  成人

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 夜もぐっすり寝て、朝ご飯をまた梅光うめみつたち家族と一緒に食べた。早い時間だったけど、緋色ひいろを間に合うように起こせて良かったよ。
 朝ご飯の時は、もう、畏まらなくていい、と緋色ひいろが言ったから、千寿せんじゅ寿々丸すずまるは学校へ行くための格好をしていた。動きやすそうな着物。似合っている。昨日の正装姿も、それはそれで素敵だったんだけどね。姫様と若様みたいだった。あ。みたいじゃなくて、姫様と若様なんだった。うん。ちゃんと姫様と若様だ。そっか。西賀さいかが変わらず過ごしやすい国なのは、新しい殿さまや奥方様、姫様と若様が、ちゃんとその役目を果たしているからなんだなあ。偉いなあ。すごいなあ。
 学校、行ってきてね。俺たちの見送りとか気にしなくていいからね。俺たち、本当は昨日の昼ご飯を一緒に食べたらすぐに帰る予定だったのに、長居してしまった。そのせいで、今日まで学校を休ませたら申し訳ない。たくさん居させてくれてありがとう。たくさん話せて楽しかった。お風呂屋さん、気持ち良かった。ぼたん鍋、美味しかった。猪のお肉は、ちょっと硬かったけど。小さく切ったら少しは食べられたから良かった。
 俺も、今朝は動きやすい服を着ている。昨日持ってきてもらった、ふわふわの手触りの普段着。やっぱりこういう服が楽でいい。緋色ひいろも、俺とお揃いの柄の普段着だ。緋色ひいろの生地はふわふわじゃないけれど、柄が同じ。緋色ひいろとお揃いの服は、緋色ひいろみたいに格好良くなれた気がして嬉しい。
 俺たちより先に出ることを気にする千寿せんじゅ寿々丸すずまるに、また来るね、またお話しようね、とたくさん手を振ってお見送りした。二人と護衛のぼうさくも、何度も振り返って手を振って学校へ歩いて行った。途中からはすごい速さで走り始めたけど、学校ってどこにあるんだろ? また、結構離れた場所だったりするのかな。間に合うように頑張って。
 いってらっしゃい、ができるなんておうちみたいだ。俺たちのお部屋があるし、のんびりできるし、ご飯が美味しいし、ここも俺たちのおうちの一つなのかも。お風呂屋さんに行きたいから、絶対またすぐ来よう。
 あ。一回、本当のおうちに帰らなきゃいけないんだったな。朱実あけみ殿下に呼ばれてた。
 んー。あっちに帰っちゃうと、お風呂屋さんが遠くなる。西中さいちゅう国からなら、そんなに遠くないんだけど。
 帰りたくないー、って言いながら帰っていった力丸りきまるの気持ちが、ちょっと分かってしまった。こっちでも緋色ひいろの仕事ができるなら、戻らなくてもいいんじゃない? って思っちゃう。
 年始の集まりは、戻らないと参加できないから駄目かー。

「世話になった。また来る」
「はっ。こちらこそ、お世話になります」

 緋色ひいろの挨拶に梅光うめみつが応えて頭を下げ、その後ろに並んだ、大きな荷物を持った何人もの使用人も、一斉に頭を下げた。竹光たけみつ鶴丸つるまるの手伝いをするための人や料理人だ。鶴丸つるまるたちの家の掃除や洗濯をできる人もいるといいな。

「帰るついでだ。気にするな」

 信頼できる使用人たちを連れて帰れるなんて最高だ。
 来てよかった。
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