【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第十章 されど幸せな日々

111 俺の仕事  成人

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 年始の集まりの後、緋色ひいろはものすごく忙しくなった。毎日、会議だと呼ばれて皇城に行く。三郎も、九条の代表として、緋色ひいろと一緒に皇城に出かけていった。
 三郎は、毎日正装できるほど正装用のシャツもスーツも持っていなくて、服が足りなくなった。俺が、大急ぎで商店街で襟付きのシャツを買い足して来た。スーツは、そんなに汚れるものでもない、と毎日同じものを着ているけれど、早く買い足した方がいいと思う。このまま買いに行く暇がないようなら、祈里いのりたち衣装部に相談しよう。
 緋色ひいろも三郎も、昼ご飯は離宮に食べに戻ってくる。ちょっとしか時間が無い時にも絶対戻ってきて、ご飯の後は自分の部屋に少しこもっていく。
 部屋にこもった緋色ひいろは、俺を膝の上に抱いて、はあって大きなため息を吐く。そのまま黙っていたら目を閉じてしまうので、俺は、俺が朝に何をしていたかの話をする。緋色ひいろは、うん、とか、へえ、とか、そうか、とか言いながら聞いてくれる。緋色ひいろが寝てしまうと起こすのが大変だから、俺は頑張って喋っている。
 昼ご飯は、緋椀ひまりたからも一緒に離宮に食べに来ている。緋椀ひまりが前に住んでいた部屋は客室として置いてあるから、二人でそこでのんびりしてから皇城へ戻っていっているみたいだ。
 すぐに戻ると約束したのに、西中さいちゅう国へ戻れなくなってしまった。俺だけでも一度行ってこようか、と言ったら、常陸丸ひたちまるに駄目だと言われた。
 緋色ひいろが皇城で仕事をしていて、他の人も今はほとんど離宮にいない。俺の、お茶出しの仕事がないんだ、と訴えたのだけれど、成人なるひとの仕事は緋色ひいろ殿下の側にいることだろ、って言われてしまった。どういうこと? って思ったけれど、昼に離宮に戻ってきた緋色ひいろが、俺を膝の上に抱いて話をしてからまた仕事に行くので、これか、って分かった。
 三郎の襟付きシャツも、俺がいなきゃ足りなくて困っただろうしね。そっか。あれも、仕事だったな。
 時間があるので、また青葉あおばに来てもらって勉強もすることにした。しばらくできていなかったから、ちょうどいい。俺は、見可みかくらいの年齢から十年くらいかけてするはずの勉強が一つもできていないのだから、習うことはたくさんあるんだ。緋色ひいろの仕事についてよその国を回っている間にも、青葉あおばにもらった教科書はちゃんと読んでいたけれど、やっぱり、自分で読むだけでは身につかないことがたくさんある。教えてもらえるって幸せなことだ。
 俺の部屋には、朱音あかね殿下と栄喜さかき玉乃井たまのいが来ることが増えた。勉強をしている俺の横で、俺のお土産の木の玩具で遊んだりしている。朱音あかね殿下は、ふかふかの絨毯が気持ちいいみたいで、ころころ転がっている。栄喜さかきは、俺が字を書いているのが気になったらしく、ずっと机の端につかまって立ってこちらを見ているので鉛筆と紙を渡したら、大喜びでたくさんの小さな丸を書いた。

「なるちゃんの真似をして、字を書いているんだねえ」

 って、青葉が言った。
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