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エマとフェリクス
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最後にはしぶしぶながら自分の罪を認めたユリアだったけれど、学園にこのまま置いておくことはできないということでフェリクスの私兵が拘束してメイソン家へと送り返されることになった。
しおらしくしていたのもほんの一瞬、ユリアは私兵たちに連れて行かれる時には目を見開いて私を口汚く罵りながらひきずられるようにして去って行った。
……はぁ。一体何度あの子にひっかき回されるのかしら。
とりあえずは色んなことが落ち着いて私とフェリクスは学園の中庭でほっと一息をついた。ルークは媚薬を大量に飲まされたことから今念のため王国付属の医師らの検査を受けている。
「結局二度も君に命を救われてしまったな」
フェリクスがそう言って私を見つめる。穏やかなほほ笑み。そ、そんな優しい表情で見つめられるとなんだか困ってしまう。正直、眼鏡を外して前髪を切り、一人称が『俺』になったフェリクスになんとなくまだ慣れない。
だけど今目の前に立っているフェリクスはいかにも正真正銘の王太子という感じ。艶やかな黒髪に透き通った瞳、凛とした表情にすらりと伸びた手足。
……元々顔立ちがキレイなのは知っていたけれど、あらためて見るとフェリクスってちょっとかっこよすぎるのでは……? なんだろう、今まであまり意識していなかったのに、なんだか恥ずかしくて直視できない。
「す、救ったなんて大げさです」
「いや、君の助言で即位を遅らせたからこそこうして命が助かった」
ユリアの目論見に気がついた時、なんだか胸騒ぎがして私はフェリクスに即位を遅らせるように進言した。ルークではなくフェリクスこそが本物の王太子であることに私が気がついていたことにフェリクスはひどく驚いていたけれど黙って私の言う通りにしてくれた。
「まさか君に正体を見破られていたとはな」
「パーティの日に魔獣が学園に侵入してきた時のことがずっとひっかかっていたの。学園に突然あれだけの魔獣が侵入できたのはどう考えてもおかしいって」
「なるほど」
「あれは私の光魔法保持者と資質を確かめるためのものだったのでしょう?」
私の問いかけにフェリクスが頷く。
「ああ。今となってはずいぶん手荒な方法だったと後悔している、すまなかった」
「いいの」
「君が王太子の命を狙っているそぶりがないかを見極める必要があった。君の動きに気を取られて、あれほどの深手を負ってしまったのは予想外だったが……。メガネで魔力を封じていたとは言え、毒にまで冒されてしまうとは我ながらとんだ大失態だったな」
「魔術以外にあれだけ秀でているあなたが魔術だけは平均的な成績なのも気になっていたの。それに病室で、あなたのメガネを手に取った私から慌ててメガネを取り返したでしょう? あの時気がついたの。あのメガネは伊達だし、おまけに以前あんな形の魔封じの魔道具を見たことがあったなって」
「……君にはかなわないな」
「なぜわざわざ魔力を封じたり綺麗な顔をメガネで隠す必要があったのか? を考えたらおのずと答えは見えてきたわ。それにあなたといる時のルーク、なんだか居心地が悪そうで様子が変だったもの」
「なるほど」
「だけど本物の王太子自ら学園で光魔法保持者に接近するなんて少し危険だったのではなくて?」
「ああ。だがあの予言があった以上、学園に入学してくる光魔法保持者の動向は確認しておく必要があった。おかしな動きがあればすぐに対処できるように。王太子の入れ替わりは機密事項だったからむやみに他人に依頼するわけにもいかなくてな」
「私があなたを死に至らしめる光の魔術師かもしれなかったというのに、あんな風に私に近づいてはいけなかったのではなかったのかしら?」
「それは……君の言う通りだな。だけど君に対してはつい個人的に興味が湧いてしまったんだ。ルークもあんまり俺が君にかまうからけげんな顔をしていたよ。だけど君が俺の命を奪おうとするなんて、そんなことはあり得ないと信じていた。……もし仮に君がきっかけで俺が死ぬような運命があるのだとすれば、それはもしかしたらなにかの事件や事故から君を守って死ぬということかもしれないとすら思った」
あら、フェリクスったら私のことをそんなに信頼してくれていたのね?
「そのために死ぬなら本望だと」
……?! と、突然おかしなことを言うのはやめてほしいわ?!
「な……っ?! い、一国の王子たる方の言葉とは思えませんわね!」
「ふふ、かもしれないな」
フェリクスは余裕の笑みを浮かべている。……私のことをからかっているのかしら。その手には乗らないんだから。私は澄ました顔を作って言った。
「そういえば、これからはあなたのことをフェリクス『様』と呼ばなければいけないのよね?」
「やめてくれ。君は今までどおり俺のことをフェリクスと呼んでくれたらいい」
「そんな無礼をはたらくわけにはいかないわ。他のみんなの前で示しもつかないもの」
「……ならせめて、二人きりの時だけは今までどおりフェリクスと」
そう言ってフェリクスが私の顎をつまんで彼の方へと顔を向けさせる。先ほどとはかわって真剣な表情でまっすぐ見つめられている。澄ました顔を作ったはずなのにまた顔が赤くなってしまう。
わ、笑った顔もかわいらしい上に真剣な顔をすると色っぽくてかっこいいなんてちょっとズルすぎるのではなくて?
しおらしくしていたのもほんの一瞬、ユリアは私兵たちに連れて行かれる時には目を見開いて私を口汚く罵りながらひきずられるようにして去って行った。
……はぁ。一体何度あの子にひっかき回されるのかしら。
とりあえずは色んなことが落ち着いて私とフェリクスは学園の中庭でほっと一息をついた。ルークは媚薬を大量に飲まされたことから今念のため王国付属の医師らの検査を受けている。
「結局二度も君に命を救われてしまったな」
フェリクスがそう言って私を見つめる。穏やかなほほ笑み。そ、そんな優しい表情で見つめられるとなんだか困ってしまう。正直、眼鏡を外して前髪を切り、一人称が『俺』になったフェリクスになんとなくまだ慣れない。
だけど今目の前に立っているフェリクスはいかにも正真正銘の王太子という感じ。艶やかな黒髪に透き通った瞳、凛とした表情にすらりと伸びた手足。
……元々顔立ちがキレイなのは知っていたけれど、あらためて見るとフェリクスってちょっとかっこよすぎるのでは……? なんだろう、今まであまり意識していなかったのに、なんだか恥ずかしくて直視できない。
「す、救ったなんて大げさです」
「いや、君の助言で即位を遅らせたからこそこうして命が助かった」
ユリアの目論見に気がついた時、なんだか胸騒ぎがして私はフェリクスに即位を遅らせるように進言した。ルークではなくフェリクスこそが本物の王太子であることに私が気がついていたことにフェリクスはひどく驚いていたけれど黙って私の言う通りにしてくれた。
「まさか君に正体を見破られていたとはな」
「パーティの日に魔獣が学園に侵入してきた時のことがずっとひっかかっていたの。学園に突然あれだけの魔獣が侵入できたのはどう考えてもおかしいって」
「なるほど」
「あれは私の光魔法保持者と資質を確かめるためのものだったのでしょう?」
私の問いかけにフェリクスが頷く。
「ああ。今となってはずいぶん手荒な方法だったと後悔している、すまなかった」
「いいの」
「君が王太子の命を狙っているそぶりがないかを見極める必要があった。君の動きに気を取られて、あれほどの深手を負ってしまったのは予想外だったが……。メガネで魔力を封じていたとは言え、毒にまで冒されてしまうとは我ながらとんだ大失態だったな」
「魔術以外にあれだけ秀でているあなたが魔術だけは平均的な成績なのも気になっていたの。それに病室で、あなたのメガネを手に取った私から慌ててメガネを取り返したでしょう? あの時気がついたの。あのメガネは伊達だし、おまけに以前あんな形の魔封じの魔道具を見たことがあったなって」
「……君にはかなわないな」
「なぜわざわざ魔力を封じたり綺麗な顔をメガネで隠す必要があったのか? を考えたらおのずと答えは見えてきたわ。それにあなたといる時のルーク、なんだか居心地が悪そうで様子が変だったもの」
「なるほど」
「だけど本物の王太子自ら学園で光魔法保持者に接近するなんて少し危険だったのではなくて?」
「ああ。だがあの予言があった以上、学園に入学してくる光魔法保持者の動向は確認しておく必要があった。おかしな動きがあればすぐに対処できるように。王太子の入れ替わりは機密事項だったからむやみに他人に依頼するわけにもいかなくてな」
「私があなたを死に至らしめる光の魔術師かもしれなかったというのに、あんな風に私に近づいてはいけなかったのではなかったのかしら?」
「それは……君の言う通りだな。だけど君に対してはつい個人的に興味が湧いてしまったんだ。ルークもあんまり俺が君にかまうからけげんな顔をしていたよ。だけど君が俺の命を奪おうとするなんて、そんなことはあり得ないと信じていた。……もし仮に君がきっかけで俺が死ぬような運命があるのだとすれば、それはもしかしたらなにかの事件や事故から君を守って死ぬということかもしれないとすら思った」
あら、フェリクスったら私のことをそんなに信頼してくれていたのね?
「そのために死ぬなら本望だと」
……?! と、突然おかしなことを言うのはやめてほしいわ?!
「な……っ?! い、一国の王子たる方の言葉とは思えませんわね!」
「ふふ、かもしれないな」
フェリクスは余裕の笑みを浮かべている。……私のことをからかっているのかしら。その手には乗らないんだから。私は澄ました顔を作って言った。
「そういえば、これからはあなたのことをフェリクス『様』と呼ばなければいけないのよね?」
「やめてくれ。君は今までどおり俺のことをフェリクスと呼んでくれたらいい」
「そんな無礼をはたらくわけにはいかないわ。他のみんなの前で示しもつかないもの」
「……ならせめて、二人きりの時だけは今までどおりフェリクスと」
そう言ってフェリクスが私の顎をつまんで彼の方へと顔を向けさせる。先ほどとはかわって真剣な表情でまっすぐ見つめられている。澄ました顔を作ったはずなのにまた顔が赤くなってしまう。
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