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第三部(貴族学校入学編)
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※sideユウカ
ブラウン男爵令息を探して、食堂で昼食をとっているところに話しかけてパートナーを組みましょうと言ったのだが、断られてしまった。
「申し訳ないけど、もう他の令嬢と組むことにしたんだ」
「でも最初は私を望んでくれていたんだし、その人には悪いけれど断ってくれたら……」
「いや、そういう不誠実なことはしたくないから」
は? 私がまだ返事してないのに他の女とパートナー組むことは不誠実なじゃないわけ?
私がイラッとした顔をするとブラウン男爵令息は『そういうことだから』と言ってそそくさとどこかへ行ってしまった。
でもジェイデンの言う通り、みんな焦ってパートナーを組み始める頃なんだと思い直し、ブラウン男爵令息のことは忘れて他の人も探すことにした。
少し見渡しただけで、私をパートナーにと誘ってきた人が何人か食堂にいることが分かった。何とかなりそうだと少しホッとする。
「あの、」
「あ、ユウカ嬢、パートナーのことだったら僕ももう決まったから……」
「えっ、そんな」
「じゃあ!」
今度は逃げるように去って行ってしまった。そのあとも一人声を掛けたけれど、素気無く避けられてしまった。
「どういうこと……」
そう口から気持ちが漏れ出た途端に閃いた。これはきっとアドリアーナの仕業だ。私が誰ともパートナーを組めないように嫌がらせをしているんだ。
なーんだ、全然悪役っぽいことしてくれないと思ったら、こんな陰険なやり口で仕掛けてきたのね。そうじゃなきゃこの私にパートナーができないわけないもの。
そうと分かればもうパートナーを探すのなんてやめるわ。パートナーがいない場合はどうするのか先生に聞いて、あとはゲーム通りドレスを貸してもらわなきゃ。ヒロインらしいスミレ色のドレスをね。
「パートナーが決まっていなくても大丈夫です。一年生のダンスパーティーは謂わばデビュタントの予行演習ですから。当日にパートナーがいない生徒達で組んで入場してもらいます。ただ、一年後にはちゃんとパートナーを見つけられる程度には関係を作っておきましょうね。まぁデビュタントの際は今回のように一年生だけで組むのではなく、貴族であればどの男性でも構いませんから大丈夫だと思いますが」
「はい、分かりました。あとダンスパーティーで着られるようなドレスも持ってなくて」
「学校の貸し出し品がありますよ。今日の放課後に見に行きますか? 貸し出しは先約順なので早めに……と言ってももう遅めなのですが」
「そうなんですね。じゃあ今日の放課後にお願いします」
先生から向けられる同情的な視線にむかついた。私だってアドリアーナの妨害が無ければパートナーを組めないなんてことなかったはずだし。大体、こうやってイジメられるからヒロインは攻略対象から大切に思われるんだから。これでいいのよ。これがヒロインとしての正解なの。
そして放課後。先生に声を掛けて、ドレスが保管されている部屋に連れて行ってもらった。パッと見ても私が持っている中で一番上等なドレスより質が良いものだと分かる。学校の貸し出しするドレスでこれって……どんだけうちは貧乏なのよ。
「綺麗でしょう。今年度から全て新しいドレスに入れ替わっているんですよ。あなたのサイズに合うものは……この辺りかしら」
今年度から新品になったなんて、やっぱり私がヒロインだからよね。私が学校のドレスをレンタルすることはゲーム通りの行動だもん。私のための新品のドレスなんだわ。
「……え? これで全部ですか?」
「えぇ、そうよ?」
「私に似合うドレスが無いわ……」
初めてセレストと踊ったスチルのドレスが無い。私の瞳と同じスミレ色の綺麗なドレス。あれじゃないとゲーム通りにならないのに。
「そんなことありませんよ。あなたには……ほら、これなんてどうかしら? とても華やかで綺麗ですよ?」
「綺麗は綺麗ですけど、私らしくないというか」
「そう言わずに。あなたなら何を着ても似合うわ」
「それは……そうだけど……」
結局、先生に勧められたドレスを借りることになった。当日またここへ来れば、その日は特別にメイクまでしてくれるらしい。私のように侍女もいないしドレスも無い生徒のための制度だそうだ。ヒロインがこういう役どころだから仕方ないけれど、正直言って恥ずかしい。この私がこんな思いをするなんて……6歳から我慢して、ようやくゲームがスタートしたのに、全然楽しくない。
ダンスパーティーではアドリアーナにギャフンと言わせられるよね。そのあとセレストと踊って、それからは楽しくなるわ。もう少しだけ我慢すればいい。もう少しだけ。
ブラウン男爵令息を探して、食堂で昼食をとっているところに話しかけてパートナーを組みましょうと言ったのだが、断られてしまった。
「申し訳ないけど、もう他の令嬢と組むことにしたんだ」
「でも最初は私を望んでくれていたんだし、その人には悪いけれど断ってくれたら……」
「いや、そういう不誠実なことはしたくないから」
は? 私がまだ返事してないのに他の女とパートナー組むことは不誠実なじゃないわけ?
私がイラッとした顔をするとブラウン男爵令息は『そういうことだから』と言ってそそくさとどこかへ行ってしまった。
でもジェイデンの言う通り、みんな焦ってパートナーを組み始める頃なんだと思い直し、ブラウン男爵令息のことは忘れて他の人も探すことにした。
少し見渡しただけで、私をパートナーにと誘ってきた人が何人か食堂にいることが分かった。何とかなりそうだと少しホッとする。
「あの、」
「あ、ユウカ嬢、パートナーのことだったら僕ももう決まったから……」
「えっ、そんな」
「じゃあ!」
今度は逃げるように去って行ってしまった。そのあとも一人声を掛けたけれど、素気無く避けられてしまった。
「どういうこと……」
そう口から気持ちが漏れ出た途端に閃いた。これはきっとアドリアーナの仕業だ。私が誰ともパートナーを組めないように嫌がらせをしているんだ。
なーんだ、全然悪役っぽいことしてくれないと思ったら、こんな陰険なやり口で仕掛けてきたのね。そうじゃなきゃこの私にパートナーができないわけないもの。
そうと分かればもうパートナーを探すのなんてやめるわ。パートナーがいない場合はどうするのか先生に聞いて、あとはゲーム通りドレスを貸してもらわなきゃ。ヒロインらしいスミレ色のドレスをね。
「パートナーが決まっていなくても大丈夫です。一年生のダンスパーティーは謂わばデビュタントの予行演習ですから。当日にパートナーがいない生徒達で組んで入場してもらいます。ただ、一年後にはちゃんとパートナーを見つけられる程度には関係を作っておきましょうね。まぁデビュタントの際は今回のように一年生だけで組むのではなく、貴族であればどの男性でも構いませんから大丈夫だと思いますが」
「はい、分かりました。あとダンスパーティーで着られるようなドレスも持ってなくて」
「学校の貸し出し品がありますよ。今日の放課後に見に行きますか? 貸し出しは先約順なので早めに……と言ってももう遅めなのですが」
「そうなんですね。じゃあ今日の放課後にお願いします」
先生から向けられる同情的な視線にむかついた。私だってアドリアーナの妨害が無ければパートナーを組めないなんてことなかったはずだし。大体、こうやってイジメられるからヒロインは攻略対象から大切に思われるんだから。これでいいのよ。これがヒロインとしての正解なの。
そして放課後。先生に声を掛けて、ドレスが保管されている部屋に連れて行ってもらった。パッと見ても私が持っている中で一番上等なドレスより質が良いものだと分かる。学校の貸し出しするドレスでこれって……どんだけうちは貧乏なのよ。
「綺麗でしょう。今年度から全て新しいドレスに入れ替わっているんですよ。あなたのサイズに合うものは……この辺りかしら」
今年度から新品になったなんて、やっぱり私がヒロインだからよね。私が学校のドレスをレンタルすることはゲーム通りの行動だもん。私のための新品のドレスなんだわ。
「……え? これで全部ですか?」
「えぇ、そうよ?」
「私に似合うドレスが無いわ……」
初めてセレストと踊ったスチルのドレスが無い。私の瞳と同じスミレ色の綺麗なドレス。あれじゃないとゲーム通りにならないのに。
「そんなことありませんよ。あなたには……ほら、これなんてどうかしら? とても華やかで綺麗ですよ?」
「綺麗は綺麗ですけど、私らしくないというか」
「そう言わずに。あなたなら何を着ても似合うわ」
「それは……そうだけど……」
結局、先生に勧められたドレスを借りることになった。当日またここへ来れば、その日は特別にメイクまでしてくれるらしい。私のように侍女もいないしドレスも無い生徒のための制度だそうだ。ヒロインがこういう役どころだから仕方ないけれど、正直言って恥ずかしい。この私がこんな思いをするなんて……6歳から我慢して、ようやくゲームがスタートしたのに、全然楽しくない。
ダンスパーティーではアドリアーナにギャフンと言わせられるよね。そのあとセレストと踊って、それからは楽しくなるわ。もう少しだけ我慢すればいい。もう少しだけ。
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