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【6話】
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後宮に来て2か月。
サイヒは昼食の前に裏の広場に行くのが習慣づいていた。
主にモフモフに会うためである。
「あれ?アンタまた来たのか?」
太陽の光を受けて銀色の髪がキラキラと光っていた。
身長はサイヒより10センチ強高めだろうか。
シンプルだが上質な生地の服装に包まれた体は細い。
長年の毒物の摂取で余分どころか必要な筋肉すら足りていないのだろう。
サイヒの声に振り向いたのは3日前に【回復】させてやった美形の青年だ。
年齢はサイヒより2、3歳は上か?
青年はエメラルドのような瞳を輝かせて満面の笑みを浮かべた。
「其方にコレを返さねばと思って」
その手に抱えられているのはサイヒのストールだ。
「そんな事のためにわざわざ来たのか?別に貰ってくれての構わなかったのだが」
「こんな国宝級のアイテムをおいそれとは貰る訳にはいかないだろう!」
「国宝級?安もののストールに【適温】の術を付与しただけだぞ?」
「其方、付与も出来るのか?しかし法術にそんな都合の良い術はあったであろうか?」
「付与したのは法術じゃなくて付与術だ。まぁ魔術でも似たようなことは出来るが」
「法術と魔術と付与術の両方が使えるのか!?其方は賢者殿だったのか!?」
「いや、ただの宦官だ」
「普通の宦官は魔術も法術も扱えないと思うが…」
「大陸中探せば居るんじゃないか?実際目の前にいるだろう?」
「そんなものなのか?」
「そんなものだ。それより、私はアンタに忠告したはずだぞ?こんなオオカミの群れに居ては喰われてしまうと。後宮の女は男に飢えている。アンタみたいな美形が歩いていたら飢えた肉食獣にどこぞの部屋に引きずり込まれても文句は言えないぞ?」
「其方は引きずり込まれたのか!?」
「いや、私のような平凡な宦官に興味をしめす女はいないだろう?アンタみたいな綺麗な顔ならともかく」
「私は其方の方が美しいと思う……」
「アンタ目も悪かったのか?それとも脳か?どう考えても綺麗なのはアンタだろう?もしかして美的感覚が狂っているんじゃないか?」
目の前の美形の青年は大丈夫かとサイヒは心配した。
どう考えても青年は自分より美形だとサイヒは思う。
これが女であったら傾国の美貌と謳われたであろう。
「美的感覚は普通のつもりだが…あぁそうだ。それでこのストールを返しに来たのだが返さなくて良いのか?」
「別に良い。欲しければ又作ればいい」
「だったら洗うのではなかったな…」
青年が落ち込んでいる。
何故洗ったことを後悔するのか?
「あぁ使用感があった方が肌に馴染むからな。使っているうちに馴染んでくる」
「いや、そうではなく…洗ったので其方の匂いが落ちてしまった……」
とんでもない爆弾発言をして青年が肩を落とす。
本気で落ち込んでいる。
「私の匂いがあった方が良いのか?」
「其方の匂いは落ち着くのだ。この3日間、久方ぶりに良く寝れた…」
「アンタ、そう言う事あまり言わない方が良いぞ?」
「何故だ?」
「世の女が卒倒し男が新たな扉を開きかねんからな」
「???」
「うん、アンタが天然だと言うことが良く分かった。まぁ寝不足が治るのなら私の匂いが付いたものを渡すのは別にかまわんよ。まだ未使用だからこのハンカチで良いか?」
サイヒが懐からハンカチを取り出す。
確かに使われた形跡はない。
「良いのか!?」
「不眠症なんだろう?今日はそれをもって帰ったら良い。次の日違うハンカチをまた渡す」
「毎日来て良いのか!?」
「ただしここの女はオオカミで自分はウサギだと言うことをしっかり認識していろ。部屋に連れ込まれても媚薬を盛られても私は責任を取れないからな」
「分かった。其方の言うように出来るだけ隠密に行動しよう」
サイヒの手からハンカチを受け取り青年は蕩けるような笑顔を浮かべた。
(これはこれは眼福だな。ローズ様も美形だったが流石にこれには負ける。性別を飛び越えて美形だ)
手に受け取ったハンカチの香りを確かめるべく、青年は鼻先にハンカチを持っていく。
「ちょっと待て。本人の前でそれはちょっと止めておけ。どういった反応をして良いか判断に困る」
「では其方の匂いを直接嗅ぐのは良いのか?」
「はっ?」
言うが否や青年はサイヒを抱き込み首筋に頭を埋めた。
腰に腕が回されがっちりとホールドされている。
(直接匂いを嗅ぐ方が変態的な行為だと思うのだが……?)
「やはり其方の匂いは落ち着く。太陽の、香…り……だ………」
体重がズン、とサイヒの方にかかる。
痩せすぎとは言え成人男性の体重を支えることなど女のサイヒには……全く問題なかった。
耳のすぐ後ろでスヤスヤと寝息が聞こえる。
「とりあえず体勢を立て直すか」
青年をヒョイ、と抱え建物の壁に背を預け座りながら青年を抱きかかえる。
「子供をあやしている気分だな。まぁこれ程の美形に引っ付くことそうそう無いだろうし役得と思っておこう。しかし本当に体が軽いな。もう少し食べさせねば。後で食堂でたらふく食べさせよう」
サイヒは青年の存在が気づかれないよう、【防音】【隠匿】の魔術を展開させる。
「では私も昼食迄寝るか。式神を作って来ておいて良かった。掃除はあちらに任せておけば大丈夫だしな」
そうしてサイヒも意識を落とした。
目が覚めた後、青年が真っ赤になってサイヒに謝罪するのはこの1時間後の事である。
サイヒは昼食の前に裏の広場に行くのが習慣づいていた。
主にモフモフに会うためである。
「あれ?アンタまた来たのか?」
太陽の光を受けて銀色の髪がキラキラと光っていた。
身長はサイヒより10センチ強高めだろうか。
シンプルだが上質な生地の服装に包まれた体は細い。
長年の毒物の摂取で余分どころか必要な筋肉すら足りていないのだろう。
サイヒの声に振り向いたのは3日前に【回復】させてやった美形の青年だ。
年齢はサイヒより2、3歳は上か?
青年はエメラルドのような瞳を輝かせて満面の笑みを浮かべた。
「其方にコレを返さねばと思って」
その手に抱えられているのはサイヒのストールだ。
「そんな事のためにわざわざ来たのか?別に貰ってくれての構わなかったのだが」
「こんな国宝級のアイテムをおいそれとは貰る訳にはいかないだろう!」
「国宝級?安もののストールに【適温】の術を付与しただけだぞ?」
「其方、付与も出来るのか?しかし法術にそんな都合の良い術はあったであろうか?」
「付与したのは法術じゃなくて付与術だ。まぁ魔術でも似たようなことは出来るが」
「法術と魔術と付与術の両方が使えるのか!?其方は賢者殿だったのか!?」
「いや、ただの宦官だ」
「普通の宦官は魔術も法術も扱えないと思うが…」
「大陸中探せば居るんじゃないか?実際目の前にいるだろう?」
「そんなものなのか?」
「そんなものだ。それより、私はアンタに忠告したはずだぞ?こんなオオカミの群れに居ては喰われてしまうと。後宮の女は男に飢えている。アンタみたいな美形が歩いていたら飢えた肉食獣にどこぞの部屋に引きずり込まれても文句は言えないぞ?」
「其方は引きずり込まれたのか!?」
「いや、私のような平凡な宦官に興味をしめす女はいないだろう?アンタみたいな綺麗な顔ならともかく」
「私は其方の方が美しいと思う……」
「アンタ目も悪かったのか?それとも脳か?どう考えても綺麗なのはアンタだろう?もしかして美的感覚が狂っているんじゃないか?」
目の前の美形の青年は大丈夫かとサイヒは心配した。
どう考えても青年は自分より美形だとサイヒは思う。
これが女であったら傾国の美貌と謳われたであろう。
「美的感覚は普通のつもりだが…あぁそうだ。それでこのストールを返しに来たのだが返さなくて良いのか?」
「別に良い。欲しければ又作ればいい」
「だったら洗うのではなかったな…」
青年が落ち込んでいる。
何故洗ったことを後悔するのか?
「あぁ使用感があった方が肌に馴染むからな。使っているうちに馴染んでくる」
「いや、そうではなく…洗ったので其方の匂いが落ちてしまった……」
とんでもない爆弾発言をして青年が肩を落とす。
本気で落ち込んでいる。
「私の匂いがあった方が良いのか?」
「其方の匂いは落ち着くのだ。この3日間、久方ぶりに良く寝れた…」
「アンタ、そう言う事あまり言わない方が良いぞ?」
「何故だ?」
「世の女が卒倒し男が新たな扉を開きかねんからな」
「???」
「うん、アンタが天然だと言うことが良く分かった。まぁ寝不足が治るのなら私の匂いが付いたものを渡すのは別にかまわんよ。まだ未使用だからこのハンカチで良いか?」
サイヒが懐からハンカチを取り出す。
確かに使われた形跡はない。
「良いのか!?」
「不眠症なんだろう?今日はそれをもって帰ったら良い。次の日違うハンカチをまた渡す」
「毎日来て良いのか!?」
「ただしここの女はオオカミで自分はウサギだと言うことをしっかり認識していろ。部屋に連れ込まれても媚薬を盛られても私は責任を取れないからな」
「分かった。其方の言うように出来るだけ隠密に行動しよう」
サイヒの手からハンカチを受け取り青年は蕩けるような笑顔を浮かべた。
(これはこれは眼福だな。ローズ様も美形だったが流石にこれには負ける。性別を飛び越えて美形だ)
手に受け取ったハンカチの香りを確かめるべく、青年は鼻先にハンカチを持っていく。
「ちょっと待て。本人の前でそれはちょっと止めておけ。どういった反応をして良いか判断に困る」
「では其方の匂いを直接嗅ぐのは良いのか?」
「はっ?」
言うが否や青年はサイヒを抱き込み首筋に頭を埋めた。
腰に腕が回されがっちりとホールドされている。
(直接匂いを嗅ぐ方が変態的な行為だと思うのだが……?)
「やはり其方の匂いは落ち着く。太陽の、香…り……だ………」
体重がズン、とサイヒの方にかかる。
痩せすぎとは言え成人男性の体重を支えることなど女のサイヒには……全く問題なかった。
耳のすぐ後ろでスヤスヤと寝息が聞こえる。
「とりあえず体勢を立て直すか」
青年をヒョイ、と抱え建物の壁に背を預け座りながら青年を抱きかかえる。
「子供をあやしている気分だな。まぁこれ程の美形に引っ付くことそうそう無いだろうし役得と思っておこう。しかし本当に体が軽いな。もう少し食べさせねば。後で食堂でたらふく食べさせよう」
サイヒは青年の存在が気づかれないよう、【防音】【隠匿】の魔術を展開させる。
「では私も昼食迄寝るか。式神を作って来ておいて良かった。掃除はあちらに任せておけば大丈夫だしな」
そうしてサイヒも意識を落とした。
目が覚めた後、青年が真っ赤になってサイヒに謝罪するのはこの1時間後の事である。
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