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【53話】
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※生々しい描写があります。
苦手な方はお読みにならないで下さい。
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街の裏通り。
待った時間は5日間。
日が昇り始める早朝。
アンドュアイスはようやく待ち人に出会えた。
「フワーラ……」
「2度目まして皇子様」
「私の事を調べてきたようだな、サイヒ・レイラン・フワーラ」
「そちらもしっかりと私の事を調べたようではないか。あまり女の秘密を嗅ぎまわると嫌われるぞ?」
「女になど好かれたくはない」
「なら、何故私を待っていた」
「………私にも分からない」
「喋りやすい口調で良いぞ?」
「そこまで調べているのか。なら僕の過去は全て君に筒抜けと言う事で当たっているのかな?」
「他人の過去を覗くのは主義に反するのだがな、ルークの身の安全のためだ。仕方ないだろう?」
「あぁルークの為か…それなら仕方ないね」
諦めたかのような笑みをアンドュアイスが浮かべる。
それは悟りを開いた老人の様な顔だった。
「女嫌いは母親のせいか?」
「うん、そうだね」
「母親を恨んでいるのか?」
「僕にもよく分からないんだ…僕は母様を恨んでいるのかな?愛していたのかな?」
「アンタにした事を思うと恨んでも仕方ないと思うぞ?」
「そうか、僕は母様を恨んでいるのかもしれない…」
無表情でアンドュアイスは碧眼からポロポロ涙が零れる。
「恨んでも良いんだ。それだけの事をアンタはされた。辛かったのだろう?」
「7歳の時、母様の友達だと言う大人の女と2人きりにされた。女は服を脱いで、僕の服も脱がせて裸にした。体中を弄られて、まだ小さかった僕の手を性器に突っ込ませたんだ。
あの時の体温と柔らかい肉の感触は今でも忘れられない…気持ち悪かった……それから色んな女の相手をさせられた。母様が死ぬまで、ずっとずっと女の相手をさせられた。今でも、ぶよぶよと柔らかい女の肉が気持ち悪いんだ……」
「私は平気だったではないか」
「何でだろうね?君からは女の匂いがしない。ダンスの時もそうだ。君からあんなに挑発されて嫌な女だと思ったのに、体は拒否反応を起こさなかった」
「それはそれは光栄、なのか?」
「僕的に最大の賛辞だよ。で、本当にルークとはもう寝たのかい?」
「心配するな。まだ交わってはいない。ルークはアンタが守り続けた通り綺麗なままだ。
アンタはルークを抱きたいのだと思っていたが、本当はルークを人と交わらせない様にしたかったのだろう?
王位継承権から降ろせばルークを綺麗でいさせてやれると思ったのだろう?だから一思いにルークを暗殺しなかった。チャンスなら幾らでもあったはずだ。
それをしなかったのはアンタの優しさだ」
「君は、何でそうやって僕の心の脆い所を暴いていくんだろうね?」
「頑張って鎧で固めても、アンタの心は脆い所が多すぎる。幼い時のトラウマが原因だろうな。何故アンタの母親はアンタを売る様な真似をしたんだ?」
「全ては僕の為らしいよ?僕が皇帝になるために横のパイプを作るためなんだって。僕は皇帝になりたくないし、女に触れられる事が嫌でたまらないのに僕の為なんだってさ」
「それでも母親に従ったのは、母親に認められたかったからか?」
「うん、母様に認められたかった。あの人が僕の事を復讐の道具としてしか見てないのは分かっていた筈なのにね。でもいつか何らかの形で認められるかもしれないと、それでも未だに母様の言いつけを守り続けている僕はどうしようもない馬鹿なんだろうね……」
「馬鹿でも良い。子供なんだから母親の愛を求めるのは仕方ない。馬鹿でも、私はアンタが愚かだとは思わんよ。アンタは馬鹿だが愚かじゃない、優しい子だ」
サイヒがアンドュアイスの金糸の髪を撫ぜる。
その感触が気持ち良いのかアンドュアイスはうっとりと目を瞑った。
その瞼は閉じられても双眸から流れる涙は止まらない。
「僕は人を騙したり呪いをかけたりした悪い子だよ?」
「毒見役の少年、シュマロは助けてやるつもりだったんだろう?」
「あの子の母はもう居ない…僕のせいだよ……」
「シュマロに母親の最期を伝えた男が気になって全て吐かせた。
アンタは約束通りシュマロの母へ莫大な金額を渡した。
親子が一生食べていけるだけの金額を。
1人なら遊んで暮らせるだけの金額を。
シュマロの母親はその金を持って消えた。その事を隠してアンタに憎しみを抱かせるようにシュマロに伝える言葉を、あの男を金で雇って言わせたんだろう?」
「見てみたかったんだ…母親が自分より子供を取ると言うところを。1人で遊んで暮らせるより親子で慎ましやかに幸せに暮らす事を取るところを。
でも母親は1人で消えた。自分が遊んで暮らすのを選んだ。
そんな事をあの不幸な少年に伝えたくなかった。だから、僕を憎むことで生きる気力が湧くのならその方が良いと思ったんだ……」
サイヒがアンドュアイスの頭を抱きしめた。
女嫌いのアンドュアイスもサイヒの胸に抱かれるのは拒否感がないらしい。
サイヒの腰に手を廻し、ギュウ、と力を入れて抱きしめるとハラハラと涙を流す。
アンドュアイスの涙で服が濡れる。
それでもサイヒは気にせず胸にアンドュアイスの頭を抱きかかえ、その金糸を手で梳いてやる。
「私はアンタがルークを恋慕の情で愛しているのだ思った。でも違ったのだな。アンタはルークに重ねた幼い自分を愛していたのだな。幼い自分を汚れから、陰謀から、欲望から護ってやりたかったのだな」
「ふつ…うぅっ………」
「可哀想な、でも優しい良い子だよアンタは。他の誰が許さなくても、アンタの行いを、せめて私だけでも許すよ。哀れな子供たちを守りたかったアンタを、私は許すよ。よく頑張ったな、アンドュ」
「ふっ、うあぁぁぁぁ―――っ!!」
アンドュアイスが子供のように号泣した。
ソレをサイヒはただ抱きしめ髪を梳いてやる。
”優しい良い子”と子供をあやす様に。
この日、初めてアンドュアイスは心の底から涙を流した。
姿を現した太陽の光が、優しく2人を照らしていた。
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完全にアンド兄さんてばサイヒに懐いちゃいました…。
大型犬拾ってしまったのでまたオカn…じゃなくてクオンに相談ですね!!
苦手な方はお読みにならないで下さい。
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街の裏通り。
待った時間は5日間。
日が昇り始める早朝。
アンドュアイスはようやく待ち人に出会えた。
「フワーラ……」
「2度目まして皇子様」
「私の事を調べてきたようだな、サイヒ・レイラン・フワーラ」
「そちらもしっかりと私の事を調べたようではないか。あまり女の秘密を嗅ぎまわると嫌われるぞ?」
「女になど好かれたくはない」
「なら、何故私を待っていた」
「………私にも分からない」
「喋りやすい口調で良いぞ?」
「そこまで調べているのか。なら僕の過去は全て君に筒抜けと言う事で当たっているのかな?」
「他人の過去を覗くのは主義に反するのだがな、ルークの身の安全のためだ。仕方ないだろう?」
「あぁルークの為か…それなら仕方ないね」
諦めたかのような笑みをアンドュアイスが浮かべる。
それは悟りを開いた老人の様な顔だった。
「女嫌いは母親のせいか?」
「うん、そうだね」
「母親を恨んでいるのか?」
「僕にもよく分からないんだ…僕は母様を恨んでいるのかな?愛していたのかな?」
「アンタにした事を思うと恨んでも仕方ないと思うぞ?」
「そうか、僕は母様を恨んでいるのかもしれない…」
無表情でアンドュアイスは碧眼からポロポロ涙が零れる。
「恨んでも良いんだ。それだけの事をアンタはされた。辛かったのだろう?」
「7歳の時、母様の友達だと言う大人の女と2人きりにされた。女は服を脱いで、僕の服も脱がせて裸にした。体中を弄られて、まだ小さかった僕の手を性器に突っ込ませたんだ。
あの時の体温と柔らかい肉の感触は今でも忘れられない…気持ち悪かった……それから色んな女の相手をさせられた。母様が死ぬまで、ずっとずっと女の相手をさせられた。今でも、ぶよぶよと柔らかい女の肉が気持ち悪いんだ……」
「私は平気だったではないか」
「何でだろうね?君からは女の匂いがしない。ダンスの時もそうだ。君からあんなに挑発されて嫌な女だと思ったのに、体は拒否反応を起こさなかった」
「それはそれは光栄、なのか?」
「僕的に最大の賛辞だよ。で、本当にルークとはもう寝たのかい?」
「心配するな。まだ交わってはいない。ルークはアンタが守り続けた通り綺麗なままだ。
アンタはルークを抱きたいのだと思っていたが、本当はルークを人と交わらせない様にしたかったのだろう?
王位継承権から降ろせばルークを綺麗でいさせてやれると思ったのだろう?だから一思いにルークを暗殺しなかった。チャンスなら幾らでもあったはずだ。
それをしなかったのはアンタの優しさだ」
「君は、何でそうやって僕の心の脆い所を暴いていくんだろうね?」
「頑張って鎧で固めても、アンタの心は脆い所が多すぎる。幼い時のトラウマが原因だろうな。何故アンタの母親はアンタを売る様な真似をしたんだ?」
「全ては僕の為らしいよ?僕が皇帝になるために横のパイプを作るためなんだって。僕は皇帝になりたくないし、女に触れられる事が嫌でたまらないのに僕の為なんだってさ」
「それでも母親に従ったのは、母親に認められたかったからか?」
「うん、母様に認められたかった。あの人が僕の事を復讐の道具としてしか見てないのは分かっていた筈なのにね。でもいつか何らかの形で認められるかもしれないと、それでも未だに母様の言いつけを守り続けている僕はどうしようもない馬鹿なんだろうね……」
「馬鹿でも良い。子供なんだから母親の愛を求めるのは仕方ない。馬鹿でも、私はアンタが愚かだとは思わんよ。アンタは馬鹿だが愚かじゃない、優しい子だ」
サイヒがアンドュアイスの金糸の髪を撫ぜる。
その感触が気持ち良いのかアンドュアイスはうっとりと目を瞑った。
その瞼は閉じられても双眸から流れる涙は止まらない。
「僕は人を騙したり呪いをかけたりした悪い子だよ?」
「毒見役の少年、シュマロは助けてやるつもりだったんだろう?」
「あの子の母はもう居ない…僕のせいだよ……」
「シュマロに母親の最期を伝えた男が気になって全て吐かせた。
アンタは約束通りシュマロの母へ莫大な金額を渡した。
親子が一生食べていけるだけの金額を。
1人なら遊んで暮らせるだけの金額を。
シュマロの母親はその金を持って消えた。その事を隠してアンタに憎しみを抱かせるようにシュマロに伝える言葉を、あの男を金で雇って言わせたんだろう?」
「見てみたかったんだ…母親が自分より子供を取ると言うところを。1人で遊んで暮らせるより親子で慎ましやかに幸せに暮らす事を取るところを。
でも母親は1人で消えた。自分が遊んで暮らすのを選んだ。
そんな事をあの不幸な少年に伝えたくなかった。だから、僕を憎むことで生きる気力が湧くのならその方が良いと思ったんだ……」
サイヒがアンドュアイスの頭を抱きしめた。
女嫌いのアンドュアイスもサイヒの胸に抱かれるのは拒否感がないらしい。
サイヒの腰に手を廻し、ギュウ、と力を入れて抱きしめるとハラハラと涙を流す。
アンドュアイスの涙で服が濡れる。
それでもサイヒは気にせず胸にアンドュアイスの頭を抱きかかえ、その金糸を手で梳いてやる。
「私はアンタがルークを恋慕の情で愛しているのだ思った。でも違ったのだな。アンタはルークに重ねた幼い自分を愛していたのだな。幼い自分を汚れから、陰謀から、欲望から護ってやりたかったのだな」
「ふつ…うぅっ………」
「可哀想な、でも優しい良い子だよアンタは。他の誰が許さなくても、アンタの行いを、せめて私だけでも許すよ。哀れな子供たちを守りたかったアンタを、私は許すよ。よく頑張ったな、アンドュ」
「ふっ、うあぁぁぁぁ―――っ!!」
アンドュアイスが子供のように号泣した。
ソレをサイヒはただ抱きしめ髪を梳いてやる。
”優しい良い子”と子供をあやす様に。
この日、初めてアンドュアイスは心の底から涙を流した。
姿を現した太陽の光が、優しく2人を照らしていた。
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完全にアンド兄さんてばサイヒに懐いちゃいました…。
大型犬拾ってしまったのでまたオカn…じゃなくてクオンに相談ですね!!
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