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【52話】
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「で、説明して貰おうか。何でそんな訳の分からない事になったんだ?」
現在、深夜1時。
場所、クオンの自室。
怒っている人、クオン。
怒られている人、サイヒ。
そんな光景だ。
王宮にあるクオンの自室にサイヒは【空間転移】でやって来た。
何時に来るかも言われていなかったので、クオンは待った。
窓の鍵を開けておけと言った癖に、部屋の中に突如現れるとは何事か。
来るなら普通は窓からだろう。
いや、クオンの自室は王宮内の3階にあるので窓から来るのは普通ではないが。
窓の鍵を開けた意味は何だったのか…。
「いや、この前の夜にバルコニーからルークを連れだしたのでな。ルークに秘密裏に来るなら自室に直接【空間転移】の方が良いと判断した。窓からだと部屋の近いルークに気付かれかねない」
確かにサイヒの気配に敏感なルークに気付かれかねない危険がある。
こんな遅い時間になったのもそのせいだろう。
だからと言って。
「着替え中に侵入者が突然現れた俺の身になれ」
「ソレはすまんかったと正直思っている」
あんまりにサイヒが遅いのでクオンは寝着に着替える途中だった。
マロンより先に素肌を見てしまって悪かったな、とサイヒは場違いな事を考えている。
取り合えずパンツを着替えている所で無くて良かった。
いくらクオンでも流石に生まれたままの姿をサイヒに晒したくない。
いや、サイヒに限らずパンツを履き替える瞬間など誰にも見られたくない。
「深夜に年頃の美少女が訪問したのだぞ。もう少し喜んでくれても良いだろう?」
「お前の顔の造形が常識を逸して端整なのは認めるが、俺はお前を美少女とは認めん。美は認めても少女は認めん。普通の少女は女を誑かさん」
「いや、私は意識して誑かしたつもりは無いぞ?そして顔の造形が整っている年頃の女なのだから美少女で良いだろうが」
「美少女と言うのはマロン様の様な可憐な方を言うのだ」
「へぇ、ふ~ん」
「何をニヤニヤしてる?」
「マロン妃からマロン様になった訳だ」
「お前もう帰るか?」
「親友が冷たい」
「お前と親友になった覚えはない。100歩譲って同盟者だ」
親友になってはいないが仲間意識はあるらしい。
だが女扱いはするつもりは無い様だ。
しかし胃痛の原因に仲間意識を持てるクオンの許容量の底の深さは計り知れない。
まぁそんな訳で今サイヒは絨毯の上に正座させられている。
クオンはそんなサイヒの前に立って怒っている。
そして冒頭のセリフに至る。
「いや、ちょっと用事があって街に出てな、気分の悪そうな者がいたので声をかけたらアンドュアイスだった」
「それで何故懐かれる?」
「声をかけたら暴言を吐かれたのでな…」
「それで?」
「脳天を殴った」
「は、はぁぁ?」
「で、酔い過ぎの様だから【解毒】の法術で回復してやってだな」
「あ、あぁ」
「礼を聞かれたので全て断ったら泣かれた」
「意味が分からん!?」
「いや、私もなんでソレで泣くのか意味は分からなかったんだが。泣いてるものを捨ておけ無いだろう?だから慰めたら懐かれたらしく”また会いたい”的なニュアンスの言葉を言われた」
「少し待て」
クオンがソファに用意してあったバスタオルを手に取り。
ゴフッ
手慣れた動作で吐血した。
白いバスタオルが紅白になっている。
実に縁起が良いバスタオルが仕上がった。
「お前も飲むか?」
ソファに座りポーションをティーカップに注ぎクオンが口を付ける。
マロン特性の【胃痛用増血効果促進ティーポーション】をクオンは喉の奥に流す。
ほぅ、と溜息をつく。
どうやら胃痛が引いたらしい。
素晴らしき愛の力だ。
「いや、普通の茶を貰いたい」
「茶を淹れる習慣は無い」
と言う事は、このティーセットはティーポーションを飲むためだけにあるらしい。
何と言うか、不憫だ…。
仕方ないのでサイヒは勝手に水差しの水をグラスに注いで口を濡らす。
ついでにシレッとソファに座る。
正座は足が地味に痛い。
「で、俺に相談と言う事はルーク様に隠してアンドュアイスと又会いたいと言う事だな?」
「鋭いな」
「お前がルーク様至上主義なのは知っているつもりだ。一見ルーク様がお前に執着している様だが、お前がルーク様を溺愛しているのは見ていれば分かる。
そんなお前が俺に相談すると言う事は、ルーク様を悲しませたくないと言う事だろう?俺はお前を信用はしていないが信頼はしている」
「クオン、やはり私たちは親友で良いのではないか?」
「お断りだ」
「冷たいな、だがお前の言う通りだ。アンドュアイスと接点を持ちたい。あの子は意外と悪い子では無いんじゃないかと思うのだよ」
「王位継承権第2位をあの子呼ばわりか…お前相当アンドュアイスに気を許していないか?」
「仕方無いだろう?あの子は何処かルークに似ている所がある。無下に放っておけん。それにあの子にはまだ何かある気がする」
「どうやって近づくつもりだ?」
「多分出会った場所で待っていると思う」
「根拠は?」
「勘だ」
勘とは随分あやふやなモノに頼っていると思うだろう。
だがサイヒの勘は自分に係わる事なら予知レベルなのだと、出会って割とすぐに聞かされた。
そのサイヒがアンドュアイスに何かがある気がするから又会いたいと言うのだ。
ならその勘を信じてみるのも1つの手だろう。
「適当にルーク様に用事を入れる。出来るだけ早く仕事を終わらせろ」
「協力感謝する。ところでやっぱり私とお前は親友で良くないか?」
「100歩譲って協力者止まりだ…まぁ200歩譲るなら悪友に格上げしてやる」
「私にココまで冷たいのはお前くらいだな。だからこそ面白いのだが。100歩譲って友人に格上げして貰えるよう頑張ろう」
ニヤリと笑ってサイヒは【空間転移】で帰って行った。
「親友などと言ったらルーク様が又厄介だろうが…」
小さな呟きがポツリと静かな部屋に響いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ルークとマロンがサイヒを中心に仲が良い様に、サイヒとクオンもルークを中心に仲が良いって事なのです。
親友に拘るサイヒと親友とは認めないクオン。
ほっこり4人組でいるとカースト最底辺に見えて、クオンはサイヒには意外と強く出れる珍しい人物です。
だからこそサイヒもクオンがお気に入りなんですけどね(*´▽`*)
次回からアンド兄さんを中心に据えてのお話になって行きそうです。
現在、深夜1時。
場所、クオンの自室。
怒っている人、クオン。
怒られている人、サイヒ。
そんな光景だ。
王宮にあるクオンの自室にサイヒは【空間転移】でやって来た。
何時に来るかも言われていなかったので、クオンは待った。
窓の鍵を開けておけと言った癖に、部屋の中に突如現れるとは何事か。
来るなら普通は窓からだろう。
いや、クオンの自室は王宮内の3階にあるので窓から来るのは普通ではないが。
窓の鍵を開けた意味は何だったのか…。
「いや、この前の夜にバルコニーからルークを連れだしたのでな。ルークに秘密裏に来るなら自室に直接【空間転移】の方が良いと判断した。窓からだと部屋の近いルークに気付かれかねない」
確かにサイヒの気配に敏感なルークに気付かれかねない危険がある。
こんな遅い時間になったのもそのせいだろう。
だからと言って。
「着替え中に侵入者が突然現れた俺の身になれ」
「ソレはすまんかったと正直思っている」
あんまりにサイヒが遅いのでクオンは寝着に着替える途中だった。
マロンより先に素肌を見てしまって悪かったな、とサイヒは場違いな事を考えている。
取り合えずパンツを着替えている所で無くて良かった。
いくらクオンでも流石に生まれたままの姿をサイヒに晒したくない。
いや、サイヒに限らずパンツを履き替える瞬間など誰にも見られたくない。
「深夜に年頃の美少女が訪問したのだぞ。もう少し喜んでくれても良いだろう?」
「お前の顔の造形が常識を逸して端整なのは認めるが、俺はお前を美少女とは認めん。美は認めても少女は認めん。普通の少女は女を誑かさん」
「いや、私は意識して誑かしたつもりは無いぞ?そして顔の造形が整っている年頃の女なのだから美少女で良いだろうが」
「美少女と言うのはマロン様の様な可憐な方を言うのだ」
「へぇ、ふ~ん」
「何をニヤニヤしてる?」
「マロン妃からマロン様になった訳だ」
「お前もう帰るか?」
「親友が冷たい」
「お前と親友になった覚えはない。100歩譲って同盟者だ」
親友になってはいないが仲間意識はあるらしい。
だが女扱いはするつもりは無い様だ。
しかし胃痛の原因に仲間意識を持てるクオンの許容量の底の深さは計り知れない。
まぁそんな訳で今サイヒは絨毯の上に正座させられている。
クオンはそんなサイヒの前に立って怒っている。
そして冒頭のセリフに至る。
「いや、ちょっと用事があって街に出てな、気分の悪そうな者がいたので声をかけたらアンドュアイスだった」
「それで何故懐かれる?」
「声をかけたら暴言を吐かれたのでな…」
「それで?」
「脳天を殴った」
「は、はぁぁ?」
「で、酔い過ぎの様だから【解毒】の法術で回復してやってだな」
「あ、あぁ」
「礼を聞かれたので全て断ったら泣かれた」
「意味が分からん!?」
「いや、私もなんでソレで泣くのか意味は分からなかったんだが。泣いてるものを捨ておけ無いだろう?だから慰めたら懐かれたらしく”また会いたい”的なニュアンスの言葉を言われた」
「少し待て」
クオンがソファに用意してあったバスタオルを手に取り。
ゴフッ
手慣れた動作で吐血した。
白いバスタオルが紅白になっている。
実に縁起が良いバスタオルが仕上がった。
「お前も飲むか?」
ソファに座りポーションをティーカップに注ぎクオンが口を付ける。
マロン特性の【胃痛用増血効果促進ティーポーション】をクオンは喉の奥に流す。
ほぅ、と溜息をつく。
どうやら胃痛が引いたらしい。
素晴らしき愛の力だ。
「いや、普通の茶を貰いたい」
「茶を淹れる習慣は無い」
と言う事は、このティーセットはティーポーションを飲むためだけにあるらしい。
何と言うか、不憫だ…。
仕方ないのでサイヒは勝手に水差しの水をグラスに注いで口を濡らす。
ついでにシレッとソファに座る。
正座は足が地味に痛い。
「で、俺に相談と言う事はルーク様に隠してアンドュアイスと又会いたいと言う事だな?」
「鋭いな」
「お前がルーク様至上主義なのは知っているつもりだ。一見ルーク様がお前に執着している様だが、お前がルーク様を溺愛しているのは見ていれば分かる。
そんなお前が俺に相談すると言う事は、ルーク様を悲しませたくないと言う事だろう?俺はお前を信用はしていないが信頼はしている」
「クオン、やはり私たちは親友で良いのではないか?」
「お断りだ」
「冷たいな、だがお前の言う通りだ。アンドュアイスと接点を持ちたい。あの子は意外と悪い子では無いんじゃないかと思うのだよ」
「王位継承権第2位をあの子呼ばわりか…お前相当アンドュアイスに気を許していないか?」
「仕方無いだろう?あの子は何処かルークに似ている所がある。無下に放っておけん。それにあの子にはまだ何かある気がする」
「どうやって近づくつもりだ?」
「多分出会った場所で待っていると思う」
「根拠は?」
「勘だ」
勘とは随分あやふやなモノに頼っていると思うだろう。
だがサイヒの勘は自分に係わる事なら予知レベルなのだと、出会って割とすぐに聞かされた。
そのサイヒがアンドュアイスに何かがある気がするから又会いたいと言うのだ。
ならその勘を信じてみるのも1つの手だろう。
「適当にルーク様に用事を入れる。出来るだけ早く仕事を終わらせろ」
「協力感謝する。ところでやっぱり私とお前は親友で良くないか?」
「100歩譲って協力者止まりだ…まぁ200歩譲るなら悪友に格上げしてやる」
「私にココまで冷たいのはお前くらいだな。だからこそ面白いのだが。100歩譲って友人に格上げして貰えるよう頑張ろう」
ニヤリと笑ってサイヒは【空間転移】で帰って行った。
「親友などと言ったらルーク様が又厄介だろうが…」
小さな呟きがポツリと静かな部屋に響いた。
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ルークとマロンがサイヒを中心に仲が良い様に、サイヒとクオンもルークを中心に仲が良いって事なのです。
親友に拘るサイヒと親友とは認めないクオン。
ほっこり4人組でいるとカースト最底辺に見えて、クオンはサイヒには意外と強く出れる珍しい人物です。
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