聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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【90話】

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「久しいな皆!」

 性別を感じさせぬアルトの落ち着いた声が空からした。
 純白の衣装を纏った人物がゆっくりと降りてくる。
 高い位置で括られた漆黒の黒髪がたなびき、切れ長の青銀の瞳で光を照り返し輝いて見える。
 少年にも少女にも見える中性的な端整な顔立ち。
 神が丹精込めて作ったであろう美しいパーツが完璧な位置に配置されいる。
 これ以上無いだろう美しい美貌の存在がソコには存在した。

「「「「サイヒ!!」」」」

 すぐに反応したのはサイヒとの仲が深い姉のマーガレット、元婚約者のローズ、サイヒに懐いているアンドュアイス、サイヒが唯二の心友と呼ぶルーシュの4人だ。


「ふぁぁぁぁ、サイヒ様、また、綺麗になられた、です……」

「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇっ?何か神力感じるんですけど!?私駆除される!?」

「外見迄バケモノじみているのかよサイヒ様…女、だよな………?」

 ディノート組は混乱している。
 サラは顔を真っ赤にしながらオタオタし、ナナは命の危険に汗を流し、セブンはサイヒの美貌に驚きながらもその性別に疑問を抱いた。


「はは、相変わらずだな」

「何かサイヒ様ますます綺麗になりましたね~、あ、でも俺は女王様の方が好みですよ♬」

 ジャクタル聖女王とマガクは割と落ち着いている。
 聖女王が実年齢200歳オーバーなので大抵のことで驚く事が無いのと、その女王にしか興味が無いマガクだからだろう。


「また凛々しくなったわねサイヒ。で、貴女が花嫁で間違いないのよね?」

「勿論私が花嫁ですよ姉上」

「だったら何故男装なんだ?」

「ウェディングドレスででは抜け出せないですから、ローズ様」

 姉と義兄はサイヒの男装に特に驚いてはいないらしい。
 生まれてからの長付き合いが為せる技だろう。

 マーガレットはシャンパンゴールドの品のあるドレスを着ている。
 ローズの瞳の色に合わせたのだろう。
 ローズは光沢のあるチャコールグレーの正装。
 流石に白は控えた様だ。
 普段見慣れない色の衣装だが、美形のローズは見事に着こなしている。
 美形は服を選ばないらしい。

「サイヒのおねーさん?」

「あぁアンドュ、私の姉のマーガレットとその婚約者のカカン王太子ローズ様だ」

「サイヒ、コチラの方は?」

「ガフティラベル帝国の皇太子のアンドュアイスですローズ様」

「こんにちは(*´▽`*)」

「以後お見知りおきを…(やけに父性本能を擽られる方だな……)」

「サイヒ、お前の知人の身分が可笑しくないか?」

「まぁ身分の高い方は多いな。お前もメイド服など着ているが公爵令嬢の元聖騎士だったなルーシュ」

「今は平民だからメイド服なんだよ、悪かったな!服はこっちで貸してくれるんだから良いだろ!」

「うむ、胸の無いお前にも似合う衣装もより取り見取りだ。好きなのを着るが良いぞルーシュ」

「お前、私の扱いだけ悪くない!?」

「心置きなく砕けた話しの出来る心友だと思っているが?」

「その屈折した愛情表現何とかしよーね!んで心友枠あんがとね!!」

 相変わらずアンドュアイスの大型犬オーラとルーシュの不憫オーラは変わらない。
 何か安心する。
 サイヒもココの所仕事やら妊娠やらで少しばかり滅入っていたのかもしれない。
 2人の変わらなさが気分を高揚させる。
 やはりアニマルセラピーと心友との会話は良いものだとサイヒは思った。


「何か濃い連中と仲が良いようだなサイヒ様?」

「サイヒ様は、凄いお方、ですから!」

「いやっ、て言うか纏っている神力が物凄いんだけど!私本当に駆除されない!?知人もドラゴンとかグリフォン連れてるし!私美味しく食べるのは好きだけど美味しく食べられるのは勘弁よサラちゃん!!」

「はぅ~サイヒ様、凛々しい、です」

 もう目をハートにしているサラにナナの言葉は届いていない。
 それに伴ってセブンは不機嫌になるし、ナナは格上の魔獣やドラゴンが傍に居る上にサイヒが垂れ流している神力に恐怖で身がすくんでいる。
 ここは既にカオスな空間であった。


「あはは~何か賑やかで楽しいですね~女王様~」

「お前はこんな時でもマイペースだな?」

「あ、俺は女王様さえいれば良いですから~。服貸して貰えるなら折角だから普段気ない様な服借りましょ!女王様のフリフリドレス見たいです俺!!」

「いや、フリフリはちょっと……」

「んじゃ、あっちのサキュバスさんみたいにスリットがガッツリ入ったセクシードレス…は、俺以外が女王様の足見る事になるなんてあってはならないからダメだね~。みんなの目玉繰り抜かないと駄目になるからね~♬」

「無邪気な顔で怖い事言うなお前……」

 ジャクタル女王は連れてくる人選を間違えたかと額に手をやり、大きく溜息を吐いた。
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