聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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そして全能神は愉快犯となった

【125話】

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 ダダダダダッ!!

 廊下を誰かが走る音がする。
 随分と焦っているようである。
 それを止める声は聞こえない。

 バンッ!

 ルーシュの部屋の扉が力強く開かれた。

「わぁ、やっぱりサイヒだぁ!!」

 そこには瞳を輝かす大型犬…否、ガフティラベル帝国皇帝アンドュアイスが居た。

「アンドュ、元気にしていたか?ルーシュの胸は順調か?」

「うん、順調にちっさいよー。僕大好き♡」

「そうかそうか、アンドゥはルーシュの小さな胸が大好きなんだなぁ」

「うん、僕ルーシュのちっさい胸が好きなんだー♡あ、でも胸大きくてもサイヒは好きだよ」

「それは嬉しいな。私もアンドュが大好きだぞ」

「わぁーい」

 サイヒに抱き着いたアンドュアイスに尻尾が見える。
 はち切れんばかりに振られている。
 久しぶりにご主人様に会った犬の様である。
 どうみても大型犬にしか見えないくなるこの組み合わせの不思議である。

「妻の前でどうどうと他の女といちゃつきながら、ついでに胸をディスってくるこの上級テクニックとか止めてよねん!!」

「何を言っているんだ、褒めているぞ?」

「ルーシュの胸は1番だよ!」

「………うん、お前ら2人が一緒にいるとそうなるんよね…知ってた……」

 ルーシュがはぁ、と大きな溜息をついた。

 :::

「おとーしゃん、このキレイなひとがかみさまなの?」

「神様のサイヒ様だ。兄様の保護者でもある。ちゃんと敬うのだぞ?」

「久しぶりなのじゃサイヒ殿!主殿と違い、相変わらずに美しいのじゃ」

 純白のグリフォンと濃い紅のドラゴンと、純白の体に際の方が紅色の、ドラゴンの翼を持ったチビの3匹が興味深そうにサイヒを見ていた。

「立派になったなオグリ、それから美しくなったなルイン」

「人間の言葉もルインに教えて貰いながら喋れるようになりました。お陰で兄様と意外ともお話が出来るようになりましたよ。今ではこの帝国の神獣扱いです。我ながら柄じゃなくて恥ずかしいんですけどね」

「サイヒ殿にお褒めいただき光栄なのじゃ」

「この子はオグリとルインの子供か?」

「キャップなの!とーちゃとかーちゃの子どもで、せかいに1匹のドラフォンなの!」

「性格はオグリ似か」

「妾の厳格さはあまり受け継いでおらんようなのじゃ。だがオグリの血も優秀だから将来が母は楽しみなのじゃ。主殿の子供よりキャップの方が将来有望なのじゃ」

 幼い頃のオグリに中身がそっくりなキャップ。
 自分に似ていないと言いながらもルインも溺愛しているらしい。
 そしてシレッとオグリの事を惚気るついでに、主を貶める。
 相変わらずの主従関係らしい。
 何故か主の方がディスられる謎な関係は20年以上続いている。

「ルインさん言葉の端々で主貶めるの止めよーね!」

「それよりサイヒ殿と2人でお茶会とはズルいのじゃ。妾だって加わりたいのじゃ」

「ルインはルーシュさんが大好きだから、サイヒ様に取られたみたいに感じるんですよ」

「変な事を言うではないわオグリ!」

 人間でいうところのクスクス笑いのような小さな笑い声を漏らして、オグリが額をルインの首に擦り付けた。

「でもルインの1番は私だよね?」

「~~~~~っ!」

 ルインが紅色のドラゴンで良かった。
 別の色なら今頃真っ赤に染まっているのが皆に確認できただろう。

 確かにルインが言うようにオグリは将来有望であったらしい。
 その結果が出ている。
 今のオグリはその風貌に風格、威厳に美しさ、どれをとっても神獣と言うのに相応しい。
 ルインが惚気たくなるのも良く分かると言うものだ。

「ルーシュ―」

 スリスリ

 オグリとルインの様子を見て羨ましくなったのだろう。
 アンドュアイスもルーシュに抱き着いて額をぐりぐり胸元に擦り付けている。
 膨らみが緩やかなため肌の抵抗が少ないのでやり易い。

「サイヒはもう良いんですか?」

「うん、サイヒにはもうちゃんと挨拶したからいーの。だから僕もオグリに負けない様にルーシュにスリスリするね♪」

 甘いテノールボイスで舌足らずに言われると、腰にクル。
 相変わらずの多属性ボイスである。

 バルコニーから入って来たオグリ家族も加えて、この日は月が真上に戻るまで3人と3匹は茶会を楽しんだのだった。
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