聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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そして全能神は愉快犯となった

【126話】

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 その日珍しくサイヒは女装していた。
 いや、サイヒは女なのだから女装と言うのは少し違うのだが、その言葉が見事にしっくり当て嵌まるのでしようがない。

 何故そのような恰好をしているのか?

 それは女でないと入れない店に入る為だ。
 女でないと入れない店。
 様々な愛らしいからセクシー迄の身に付けるものを売っているお店。
 下着屋であった。

「ユラさん、下着くらい1人で買いましょうよ」

「無理!絶対無理!可愛い下着とか、1人で買うとか無理!!」

 コミュ障気味の喪女、ユラにはブランド品の下着屋に入るのはハードルが高すぎたのだ。
 そしてサイヒが付き添いとして着ている訳である。
 
 ちなみに今のサイヒは黒髪はそのままに、瞳の色は若葉色に変えている。
 髪まで変えると『リリー・オブ・ザ・ヴァリー』と同色になってしまうので瞳の色だけ変えてあるわけだ。
 『リリー・オブ・ザ・ヴァリー』は男で通しているので、女ではないかと疑いの目が向けられるのは少しでも減らしたい。
 なので瞳だけなのだ。
 ちゃんと【認識阻害・中】をかけているので全能神が王都の下着屋迄足を運んでいると気付く者は居ないだろう。

「で、何で下着を新調したいのですか?」

 ニヨニヨと笑いながら尋ねる。
 理由など分かっている癖に、この愉快犯は先祖の友人を揶揄いたくて仕方ないらしい。
 先祖も愉快犯だが子孫のサイヒも十分愉快犯である。

「だって…下着が可愛くなくてがっかりされたらイヤだし………」

「ほぅ、下着を見せる相手が出来たと?」

「出来てない!相手できてないから!!まだ全然そんなんじゃないから!!」

「はいはい、”まだ”ですね」

「うぅぅぅぅ~」

 ユラの顔は真っ赤である。
 このぶんなら体の方も真っ赤かも知れない。
 まぁ今の状態では見れないので確認できないが。
 それでも店に入ってしまえば試着があるし、肌を見る機会もあるだろう。
 サイヒはそこまでユラの肌に執着はしていないが。
 揶揄えるならその状況は大変面白そうである。
 サイヒは愉快犯で少々外道であった。

 :::

「お客様~良いのは見つかりましたか~?」

 アパレル店あるある”やたらと話しかけてくる量産型従業員”が現れた。

 【コマンド】
  ・話す
 ▶・逃げる

 ユラは逃げようとした。
 だが回り込まれてしまった。

「サイズの確認はいかがですか~?ちゃんとサイズの合ってるものを付けないと形も崩れますよ~」

 さすがは量産型店員。
 脅しをジャブに打ってくる。
 サイズを計られたら最後、サイズの合う下着を全て持って来られる危険性がある。

「あぅあぅ…」

「アンダー65のCカップだ。しばらくは下着をゆっくり見たいから2人にしてくれると有難い。試着の際には声をかけよう」

 ニコリ、とサイヒが微笑んで店員に告げた

「は、はははははいぃ~」

 【サイヒは敵を追い払った】

「ありがとうサイヒちゃん~~~グズッ」

「泣くような事ですか?」

「だって~だって~……」

「まぁ理解してくれる者で良かったです」

「いや、あんなに色気振りまいて…あの店員さん腰砕けになってフラフラしながら帰って行ったわよ。あれは理解じゃなくて色仕掛けだと思うのだけど」

「色気、振りまいてましたか?今日はちゃんと女に見える格好をしてきたのですが」

 確かに女に見える格好である。
 服装はユニセックスのものだが、布を押し上げて主張する胸元で女だと分かる。
 なのに何処か女を堕とす、性別をものともしないフェロモンが発生しているのだ。
 何この全能神、怖い…。
 そう思ったユラは悪くない。
 サイヒの質が悪過ぎるはずだ。
 だが今回はその質の悪さに救われた。
 もう量産型店員は現れないだろう。

「さて下着を選びましょうか。どういったのが欲しいんですか?」

「う~ん、下手に若作りしてないけど、それなりに可愛い奴、かな?」

「可愛い系ですね。セクシー系は選択肢には無いんですか?」

「せ、せせせせセクシーはまだ私には早い、です……」

(う~ん、真っ赤だ。ドラジュが見たら喜ぶのだろうなぁ)

「じゃぁコレとか?」

「それ紐じゃない!?」

「じゃぁこっち?」

「なんでそんな違和感のある所にリボン付いているの!?それリボン解いたら全部見えちゃうじゃない!!」

「ではコレ?」

「全体レースは履いてないも同然じゃないの?違うの!?」

(面白い、大変面白い。ドラジュの気持ちが少し分かったな)

 揶揄い易すぎる。
 リアクションもこちらが求めたモノが帰って来る。
 ユラへのアプローチが少々意地悪な行動なドラジュの気持ちが少し分かってしまったサイヒだった。

 結局セクシー系は一切購入せず、幼過ぎない愛らしいデザインのブラとショーツを数枚購入した。
 ついでにサイヒも下着を購入した。
 ユラに勧めていたセクシー系の物ばかりを。
 今夜のルークはケダモノルークかも知れない。

「早く見せる機会があったら良いですね」

「べ、別に見せるために買った訳じゃなくて!万が一見えた時がっかりされたくないだけだから!特に誰かに見せるために買った訳じゃないから!!」

「はいはい、ドラジュには下着の柄を伝えるのは止めておきますよ」

 ニッ、とサイヒが唇を吊り上げた。

 その言葉に真っ赤になって、ユラはショートしてしまうのだった。
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