聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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そして全能神は愉快犯となった

【131話】

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 【獅子の鉤爪亭】はその日も昼から賑わっていた。
 昼間から酒も提供しているこの宿屋は冒険者が好んで泊まる。
 1階の酒場で出される食事も格安で美味い。
 宿代もリーズナブル。
 なので全能神が住まう天界の中心区では、この酒場は常に繁盛していた。

 そしてこの店の常連客で一際目立つ人物がいた。

 空色の髪に翡翠色の瞳の中性的な美少年『リリー・オブ・ザ・ヴァリー』である。
 この少年、信じられないくらい整った顔をしているが気安い性格で誰とでもすぐに打ち解ける。
 他の常連客からも良く可愛がられている。
 本人は成年なのだから子ども扱いされたくないらしいのだが、肉体年齢が18歳で止まっている事もあって皆ついつい子供を相手にするような態度をとってしまう。
 常連客におっさんが多いのも理由の1つだろう。
 綺麗所なら男でも可愛がりたくなるものなのだ。
 日頃の生活がむさ苦しければ苦しいほど。

 そしてリリー・オブ・ザ・ヴァリーは女性人気も高かった。

 良く目端が利くのだ。
 女性が髪を切ればすぐに気付くところから初めて、シャンプーの匂いが変わったの迄気付く。
 新しいネイルは褒めてくれる。
 女性に対して褒め上手なのだ。
 「可愛い」だとか「綺麗」だとか、そういった言葉もテレもせず口にする。
 褒められて嬉しくない女が居るはずない。
 何よりリリーは物凄い美少年だ。

 貢がせてくれとばかりに女性からプレゼント替わりのメニューが届くので、リリーのテーブルは何時も食べ物であふれている。
 ソレを美味しそうに完食するのだから料理人だって気分が良い。

 リリーは舌も良いのか、味付けを変えたらすぐに気付く。
 使っているスパイスを少し変えただけで何をどう変えたかまで気付くのだ。
 この舌の肥えたリリーを唸らせる料理を作れるかどうかが【獅子の鉤爪亭】の料理人たちの1人前の見極めにもなっている。

 そうリリー・オブ・ザ・ヴァリーは兎に角人に影響を与える人物だ。
 姿を現したのは20年程前である。
 天界人は地上に人間と年の取り方が違うので、その時から姿が変わらないリリーを不思議に思うものは居ない。
 法力が多ければ多いほど老化の進行が遅いのだ。
 
 これは地上の人間にも言える。
 法力が強いほど、魔力が強いほど老化の進行が遅い。
 聖女や大魔導士などと呼ばれるものは、純粋な人間であっても数百年生きる者も居る。

 そしてリリーを慕う者たちは、リリー・オブ・ザ・ヴァリーは人間ではないかと考えている者が多数いた。
 リリーが法力を持たないからだ。
 だがリリーは年を取らない。
 だから大魔導士に相当する魔力の持ち主ではないかと囁かれていた。
 天界人に他人の魔力量を測定する能力者はいない。
 全能神の住まう王宮ならそう言ったアイテムもあるかも知れないが。
 だが【獅子の鉤爪亭】は街の中だ。
 調べたくても調べようがない。

 それにリリーが人間であろうが魔族であろうがどうでも良いと皆思っていた。
 一緒に飯を食べて楽しく話が出来るなら人種は気にしない。

 コレは現在の全能神の伴侶が魔王であることから、人種差別と言うものが天界で無くなったのだ。

 美しい全能神の横に並ぶ美しい魔王。
 2人の並んだ姿は絵にも起こせぬほど麗しかった。
 20年たった今でもその結婚式は語り継がれている。

 そんな天界で、リリー・オブ・ザ・ヴァリーがあんなこんなで小さなもめ事を解決する手助けをする。
 遊び人のリリーさんのお話がこれから始まろうとしているのであった。
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