聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

文字の大きさ
173 / 297
そして全能神は愉快犯となった

【150話】

しおりを挟む
 まぁクオンの吐血があったりなかったり。
 マロンは宮廷中を走り回り。
 トワはドラジュのお付きで街へ出かけたり。
 セツナは『せんせー』のしごきが無くて一時的な平和を過ごしたり、ととにかく天界は平和だった。
 王宮中はひっくり返るような騒ぎだが。

 何せ王子のためのパーティーなのである。

 あの、男も女も赤子も老人も誑かす全能神の息子ドラジュのためのパーティーなのだ。
 気が抜ける筈が無い。
 全能神の誑し属性を受け継ぎながらも意中の女性を落とせないドラジュ。
 これは全能神に仕えている者として何とかしたい案件だった。
 我らの全能神様のご子息が堕とせない?
 そんな事はあってはならない。

 ドラジュの願いは使用人の悲願。

 使用人たちもまたサイヒに誑かされており、絶対的な神聖視をしていた。
 そしてその息子ドラジュにもまた。

 絶対に負けられない戦いがここにはあるのだ。

 マロンは料理長とメニューを考え。
 クオンは招待客のリストを片手に業務をこなし。
 トワはドラジュと共にユラへのプレゼントを探しに。
 セツナは無邪気にユラに『せんせー』の素敵なところをプレゼンした。

 そしてパーティーの日がやって来た。

 美し着飾った全能神に皆が見惚れた。
 メイクを担当した者も、髪をセットした者も、ドレスを着せた者も皆サイヒに見惚れている。
 今日の主役はドラジュのはずなのに完全に存在を食ってしまっている。
 サイヒの女装はソレだけの迫力がある。
 人間美しすぎる者には同時に恐怖すら抱く。
 サイヒはそんな美しさを兼ね備えていた。

「サイヒが着飾るのを見るのは嬉しいが、ドラジュが霞みはしないか?」

 着替えが終わり部屋で寛いでいると愛猫がすり寄ってくる。
 コテリ、と銀色の毛並みにエメラルドの瞳のサイヒの愛猫が小首を傾げて尋ねた。
 愛らしい。
 大型犬も可愛いが、やはりサイヒは猫派である。
 まぁこの場合猫は比喩で銀色の髪とエメラルドの瞳を持つ美青年はサイヒの伴侶にして魔王、ルークなのであるが。

「私が男装すると”リリー・オブ・ザ・ヴァリー”に似てしまうからな。無駄な騒ぎは起こしたくない」

 そうリリー・オブ・ザ・ヴァリーの姿でないとサイヒは暴〇ん坊〇軍ごっこが出来なくなるので、リリー・オブ・ザ・ヴァリー=全能神の思考の可能性を出来るだけ削りたいのだ。
 我が子の為ではなく己の為と言うのがサイヒらしい。
 毒親ではない。
 子供たちも見事にサイヒの誑かしの能力と愉快犯の気質を受け継いでいる。
 子は親を見て育つものなのだ。
 ルーク成分は何処に行った、おい。
 大丈夫、色彩にルーク成分がある、問題ない。

「ドラジュはちゃんとプレゼントを見つけられたのだろうか?」

「私たちの子が出来ない分けないだろうルーク?」

 クッ、と赤い唇を三日月の様に笑んだ。
 それにルークはくらり、と色香に充てられ首まで真っ赤に染まる。
 もう新婚さんではない。
 子供も成人している。
 姿こそ出会った頃とそんなに変わってない(サイヒは胸が成長したが)のだが、ルークの心は相変わらずあの頃のまま純白の綺麗な心らしい。
 これくらい無垢でないとサイヒの夫は務まらない。
 ただ側近が代わりに胃を痛めて吐血を繰り返すが、それで世界が平穏なら良いであろう。

「ルーク様、客人たちは会場に揃いました」

 扉の向こうでクオンが声をかける。
 すぐに扉を開けないのは流石である。
 何処でも発情する全能神は何時何処でルークに何を致すか分からない。
 そんなとこに関わりたくないのでクオンは自己防衛能力が数段に上がった。
 ついでに胃もちょっぴ強くなった。
 今日こそはクオンが吐血をしないように祈ろうではないか。

「そうか、では行こうとするかルーク」

「サイヒ♡」

 ドレス姿でメイクもばっちりなのに挙動の1つ1つが男前なサイヒである。
 自然にルークをエスコートする。
 そんなサイヒにルークの瞳はもうハートだ。

「さて、楽しいパーティーになる事を祈ろうではないか」

 ニヤリとサイヒが微笑んだ。
 その横でルークがあわあわしているのは何時もの事なので気にしないで欲しい。

 こうして《ドラジュ様の恋を応援しようパーティー》が始まったのであった。

 今日も天界は平和である。
しおりを挟む
感想 1,137

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました

夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。 全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。 持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……? これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。

処理中です...