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そして全能神は愉快犯となった
【149話】
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「本命ほど落とすのが難しいとは本当ですね…」
はぁ、と溜息をつくのはドラジュである。
愁いを帯びたその表情に小さな溜息は、何と言うかやけに色気がある。
思わずドラジュに目が釘付けになった使用人たちを責めてはいけない。
それが女のメイドだけでなく男の使用人が含まれていたとしてもだ。
男も女も惑わす色気。
ドラジュは変なところがサイヒと似ている。
全体的にルークに似ている印象のドラジュだが、癖の強いところはサイヒ似なのだ。
双子のカマラとは反対である。
そのカマラは外見こそサイヒに似ているが、中身はルーク寄りだ。
受け身と言おうかなんと言おうか。
サイヒと似ているのにルークの純粋な性格を受け継ぐカマラは中々に庇護欲をそそる存在である。
今は地上に降りていて天界で見かける事はないが。
サイヒとルークの遺伝子を継ぐ子だけあって愛に生きる性なのだ。
今頃伴侶と仲良くやっている事だろう。
まぁそれはまた別の話で詳しく語ることもあるだろうが、今はカマラの話ではない。
ドラジュの話だ。
上手くやっているカマラに反してドラジュである。
幼いころから恋心を抱く年上の女性に愛の言葉を紡いできたが、今のところ落ちる気配なし。
彼女は自分を「モテない」と称しているが、モテないのではなく落ちないの間違いだ。
大概の異性なら落とす自信のあるドラジュだが、どんなに猛アタックしても彼女は落ちない。
「珍しく落ち込んでいるなドラジュ」
右側にルーク。
左側にセツナを侍らせたサイヒが問うた。
侍らせている。
サイヒほどこの言葉が似合う存在も居ないだろう。
ちなみにサイヒを挟んでルークとセツナは視線で火花を散らしている。
少し離れて給仕をしているマロンはニコニコ笑っているが、少し離れてみているクオンは胃をキリキリ痛めている。
己の娘が上司の恋敵になろうとしているのだ。
胃が痛むのもしょうがない。
本当に不憫な男である。
「おおよそ女性が喜びそうなことはして来たつもりなんですが…ユラさんは喜んだり照れたりはするものの、恋情は返してくれないですよ……」
コクリ、とカップの中の紅茶を飲む。
大変美味しい。
マロンが淹れたので当然である。
「ユラさんは異性慣れしてないからな」
「ユラさん、何億年も生きているんですけどね…何で男に慣れてないんでしょね…?いや、慣れてても嫌ですけど………」
ぶつぶつとドラジュの病んだ闘気が体からゆらゆらと揺らめく。
セツナはそれを見て「ヒィ」と小さな悲鳴を上げた。
『せんせー』はセツナの唯一の恐怖対象なのだ。
その『せんせー』が暗い闘気を垂れ流していれば失禁物の恐怖である。
3歳であろうと淑女のセツナは恋するものの前で失禁などしないが。
物凄い胆力の幼女である。
「女性は王子様に憧れるものですからね、ドラジュ様は王子様そのものですけど、物語に出てくる王子の様に着飾ってユラ様を正装のドラジュ様がエスコートするとかどうですか?」
ニコニコと柔らかい笑顔を浮かべたトワが進言する。
マロンの横でサイヒの空になった皿にケーキを盛りつけているところだ。
少女のような外見のトワに言われると、ソレもそうかもしれないと思う。
多分この中で1番乙女心に詳しいのはトワだ。
サイヒは例外だ。
マロンは良い女だが既に2人の子持ちの旦那アリ。
その点トワは年頃の少女めいた発言をする。
乙男と言おうか、やけに女子力が高いのだトワは。
「うむ、ソレは良いな。では宴でも開くとするか」
「久しぶりにサイヒのドレス姿が見れるな、それは良い!」
ルークが頬をバラ色に染めて笑顔を浮かべた。
トロンと蕩けた瞳でサイヒを見る。
恋する乙女の表情だ。
再程トワを1番乙女に近いかもしれないと言ったが前言撤回だ。
ドラジュの父親のルークが1番内面乙女であった。
「ドラジュ、やるからには本気を出せ良いな!私の子供だと言う事をユラさんを落とすことで証明して見せろ!」
「はい、母様!必ずユラさんを落として見せます!!」
ガッ、とサイヒとドラジュが手を握り合った。
美しい友情だ。
いや母子だが。
「サイヒは何時も格好良いな」
「お兄様素敵ですわ」
「サイヒさまにエスコートされたいですぅ」
「はぁ、全能神様は本当に素敵です」
上司、妻、娘、息子の発言を聴きながら、クオンは使用人のモンラーンから吐血用のバスタオルを受け取った。
クオン吐血まだ後5秒………。
はぁ、と溜息をつくのはドラジュである。
愁いを帯びたその表情に小さな溜息は、何と言うかやけに色気がある。
思わずドラジュに目が釘付けになった使用人たちを責めてはいけない。
それが女のメイドだけでなく男の使用人が含まれていたとしてもだ。
男も女も惑わす色気。
ドラジュは変なところがサイヒと似ている。
全体的にルークに似ている印象のドラジュだが、癖の強いところはサイヒ似なのだ。
双子のカマラとは反対である。
そのカマラは外見こそサイヒに似ているが、中身はルーク寄りだ。
受け身と言おうかなんと言おうか。
サイヒと似ているのにルークの純粋な性格を受け継ぐカマラは中々に庇護欲をそそる存在である。
今は地上に降りていて天界で見かける事はないが。
サイヒとルークの遺伝子を継ぐ子だけあって愛に生きる性なのだ。
今頃伴侶と仲良くやっている事だろう。
まぁそれはまた別の話で詳しく語ることもあるだろうが、今はカマラの話ではない。
ドラジュの話だ。
上手くやっているカマラに反してドラジュである。
幼いころから恋心を抱く年上の女性に愛の言葉を紡いできたが、今のところ落ちる気配なし。
彼女は自分を「モテない」と称しているが、モテないのではなく落ちないの間違いだ。
大概の異性なら落とす自信のあるドラジュだが、どんなに猛アタックしても彼女は落ちない。
「珍しく落ち込んでいるなドラジュ」
右側にルーク。
左側にセツナを侍らせたサイヒが問うた。
侍らせている。
サイヒほどこの言葉が似合う存在も居ないだろう。
ちなみにサイヒを挟んでルークとセツナは視線で火花を散らしている。
少し離れて給仕をしているマロンはニコニコ笑っているが、少し離れてみているクオンは胃をキリキリ痛めている。
己の娘が上司の恋敵になろうとしているのだ。
胃が痛むのもしょうがない。
本当に不憫な男である。
「おおよそ女性が喜びそうなことはして来たつもりなんですが…ユラさんは喜んだり照れたりはするものの、恋情は返してくれないですよ……」
コクリ、とカップの中の紅茶を飲む。
大変美味しい。
マロンが淹れたので当然である。
「ユラさんは異性慣れしてないからな」
「ユラさん、何億年も生きているんですけどね…何で男に慣れてないんでしょね…?いや、慣れてても嫌ですけど………」
ぶつぶつとドラジュの病んだ闘気が体からゆらゆらと揺らめく。
セツナはそれを見て「ヒィ」と小さな悲鳴を上げた。
『せんせー』はセツナの唯一の恐怖対象なのだ。
その『せんせー』が暗い闘気を垂れ流していれば失禁物の恐怖である。
3歳であろうと淑女のセツナは恋するものの前で失禁などしないが。
物凄い胆力の幼女である。
「女性は王子様に憧れるものですからね、ドラジュ様は王子様そのものですけど、物語に出てくる王子の様に着飾ってユラ様を正装のドラジュ様がエスコートするとかどうですか?」
ニコニコと柔らかい笑顔を浮かべたトワが進言する。
マロンの横でサイヒの空になった皿にケーキを盛りつけているところだ。
少女のような外見のトワに言われると、ソレもそうかもしれないと思う。
多分この中で1番乙女心に詳しいのはトワだ。
サイヒは例外だ。
マロンは良い女だが既に2人の子持ちの旦那アリ。
その点トワは年頃の少女めいた発言をする。
乙男と言おうか、やけに女子力が高いのだトワは。
「うむ、ソレは良いな。では宴でも開くとするか」
「久しぶりにサイヒのドレス姿が見れるな、それは良い!」
ルークが頬をバラ色に染めて笑顔を浮かべた。
トロンと蕩けた瞳でサイヒを見る。
恋する乙女の表情だ。
再程トワを1番乙女に近いかもしれないと言ったが前言撤回だ。
ドラジュの父親のルークが1番内面乙女であった。
「ドラジュ、やるからには本気を出せ良いな!私の子供だと言う事をユラさんを落とすことで証明して見せろ!」
「はい、母様!必ずユラさんを落として見せます!!」
ガッ、とサイヒとドラジュが手を握り合った。
美しい友情だ。
いや母子だが。
「サイヒは何時も格好良いな」
「お兄様素敵ですわ」
「サイヒさまにエスコートされたいですぅ」
「はぁ、全能神様は本当に素敵です」
上司、妻、娘、息子の発言を聴きながら、クオンは使用人のモンラーンから吐血用のバスタオルを受け取った。
クオン吐血まだ後5秒………。
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