聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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2章

【219話】

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「あぁ、やはり其方は美しい………」

 うっとりとエメラルドの瞳が細められた。
 眼の奥に歓喜の光を宿して。

「其方がここに居ると言う事は、他の悪魔たちは殲滅されたか…だが1滴の血にすら汚れていないとは、想像以上だぞリリィ・オブ・ザ・ヴァリー。
其方こそ私が求めるモノに他ならない。其方さえいれば、他には何もいらない。さぁこの魔界で2人、何時までも生きていこうぞ」

 リリィ・オブ・ザ・ヴァリーは玉座の間に居た。
 魔王が座する、玉座の間にリリィ・オブ・ザ・ヴァリーは傷の1つも付けず、血の1滴にも汚れずにこの場に着いたのだ。
 その強さがまた魔王を魅了する。

「私は殺しなぞしておらん。皆気を失っているだけだ。まぁ魔術で寝こけている輩もいるだろうがな」

 ほぅ、と魔王は嬉し気に吐息を漏らした。

「殺しをしないのは信条か?それとも全能神にそう命じられたのか?」

「それすら分からないか魔王?」

「?」

「全能神が何であるか、私が何であるか、もう忘れ去ってしまったか?」

「??????」

 ズキズキ頭が痛む。
 魔王は己の頭を抱え込む。

「何だ?コレは、―――――誰だ?リリィ、ではない?いや、其方だ…私が求めるのは、其方なのに……別の誰かの姿がチラつく―――――私が、欲しいのはっ!!」

「戻って来い」

「リリィ………?」

「私の下に戻ってこいルークっ!!!」

 翡翠の瞳のその奥に、魔王は青銀の瞳を見た。

 パキィィィィィィンッ!!

 魔王を、いや、ルークを絡め取っていた、見えない枷が壊れた。

「サイ、ヒ………?」

「ルーク」

「サイヒッ!!」

 ギュウ

 ルークがサイヒに駆け寄りその身体に抱き着いた。
 あぁ、この香り。
 このしなやかな身体。
 サラリと流れる髪。
 ルークが求めて止まなかった存在。

「サイヒッサイヒッ!!好きだ!愛してる!私の、私のサイヒ!もう離さない!何人たりとも私たちを引き裂くものなどに負けはしない!だから、そばに居てくれサイヒッ!!!」

「あぁ私の半身、運命の番、もう私の傍から放しはせぬ!!」

 抱き締めあって、唇を重ねた。

 青銀とエメラルドの光が交じり合って空にはぜる。
 そして魔界の暗雲が光に切り裂かれた。
 暗雲が引き裂かれた隙間から、太陽のような光が魔界を照らす。
 暗雲は光に飲まれ、魔界は光が照らす地へと姿を変えた。

 魔王とその愛する伴侶が、魔界の成り立ちを変えたのだ。

 その光は地上の太陽のように爛々と輝くものではなく、大木から溢れ出る木漏れ日のような光。
 優しい光。
 悪魔たちはその光に触れると、体が軽くなった気がした。
 それは体から黒い靄が抜け出し、その光に当てられて浄化されたからだ。
 『悪意の概念』の思念体は、魔王だけではなく悪魔全てに寄生していた。
 それが全て浄化された。
 魔界は血で血を洗う世界ではもうないのだ。
 木漏れ日の光が悪魔たちを照らす優しい世界がここに誕生した。

『オノレ、セメテ、オマエラガヒキハナセヌノナラ、セメテ、セメテ、アンコクニオチロォォォォォォッォォッォッォオオオオオッ!!!!』

 抱き合う2人を、暗黒の闇が包み込んで。
 そしてサイヒとルークの姿は消え去った。
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