男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

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 私には2つ年上の友人がいる。
 出会ったのは3年前。
 私が仕事でカカン王国へ行ったときに出会った。
 その時のことは今でも鮮明に思い出す。

 神殿に貴族の護衛として行った時に出会った少女。

 夜の闇のような黒髪。
 光を受けた海の水面のような切れ長の青銀の瞳。
 性別を感じさせない端整な顔立ち。
 体のラインを現さないゆったりとした紺碧色のローブ。

 カカンの当代の聖女であるその人物は”サイヒ・レイラン・フワーラ”と名乗った。

 その声すら落ち着いたアルトで性別を感じさせない。
 まるで神様が作った芸術品の様だと思った。
 性別のない美しさ。
 
 まるで宗教画から飛び出した天の使いの様だ。

 カカンの聖女は私をジッ、と見てふわりと花が綻ぶ様に笑った。
 見かけのせいか感情の起伏も無いのではないかと思ったのは、その笑顔1つで覆される。
 なんと抱擁力のある笑顔か。
 まるで地母神のようだ。
 まさに聖女の名に相応しい。

 そして驚くことに聖女は私をお茶にと誘った。
 同僚共は”イケメン爆発しろ!”と私をポカスカと揉みくちゃにして送り出してくれた。
 私の何が聖女の興味をかったのだろうか?

 やはりイケメンの顔か?
 まぁ私は自分で言うのも何なのだがイケメン細マッチョだしな。
 年齢は最年少だがそれも母性を擽る要因だったかもしれない。

 と、その時の私は思った訳だが…。

「女の身で騎士になれるとは羨ましい」

 アフタヌーンティーのセットを挟んで向かいに座った私に発せられた聖女の1言目がソレだった。
 言葉に詰まる私を聖女が宥める。

「驚かなくていい。他の者には気づかれていない。それにしても上手く化けたモノだ。魔力で脳内ホルモンでも操作したのか?」

 男のような喋り方は妙に聖女に似合っていた。
 それにしても1発で見破られるとは。

「この事はご内密にして頂きたいのですが…」

「あぁ、勿論だ。何か理由があるのだろう?その辺りを含め色々なお前と話をしてみたい。何せ聖女の仕事は忙しくもあるが退屈でもあってな…」

 聖女が疲れたような顔を一瞬した。
 まるで年老いた者の悟りにも似た表情。
 それを消したくて私はいっぱい自分の事を話した。
 私の出生についてまで話してしまった。

 どうやら私はこの聖女に心奪われたらしい。
 私でなくともこの聖女と時を共にしたら心奪われる者は少なくないだろう。
 それも男女問わず。
 とんでもない誑しの才能だ。

 だがそれで私と聖女の心の距離は縮まった。
 帰る頃にはお互いを名前で呼び合うようになった。
 何時の間にか文通の約束まで取りつけていた。

 そして魔道具を介して続けられた文通に「国を出て自由を満喫する事にした」と届いた。
 やはり1国に収まる器で無かったらしい。
 その辺りの事もまた返信で聞いておこう。
 きっと自由に生きると決めたサイヒは男も女も誑かしているのだろう、と想像しながら。

 :::

「ちょっと!もう少し優しく髪を梳かしてよ!!やたらめったらデカいアンタと違って私は繊細に作られてるんだからねっ!!」

 ウザい!
 サイヒとは全然違うぞこの聖女!!
 そんだけ図太い性格しておいて何処が繊細なんだか。
 まぁカカンとフレイムアーチャじゃ聖女の重要性も違うから、性格が歪むのも仕方ないのかも知れけど。
 
 気に入らんなら自分でしろや糞聖女!!
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