男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

文字の大きさ
8 / 109

しおりを挟む
「案ずるな、私は心は男だ」

「いや案ずりますよ!結局肉体の性別は同じじゃないですか!」

 ”冬の化身”の2つ名を持つ聖騎士団長ポラリスほぅ、と溜息を吐いた。
 そんな姿まで絵になる男装の麗人である。

「冷たいなルーシュ、お主が私に男体化の術を教えれば性別の問題は乗り越えられるだろう?」

「いえ、あれ男体化ではなくて限りなく肉体を男に近づけただけですから。ポラリス様が昔から欲しがっていた男のブツは生えませんから」

「だが見た目は今より男らしくなるのであろう?」

「まぁ男らしくなるんですけど…私はポラリス様の外見好きなんであんまりむさ苦しくはなって欲しくないですね。ポラリス様にすね毛が生えるとか勘弁して下さい」

「相変わらず女好きだなお主も」

「女が好きなんじゃなくて綺麗なものが好きなんです」

「つまり私の外見は好みなのだな?」

「それは認めます」

「ではこの外見のまま男になる術を探すか…お主の友人のカカンの聖女なら知っておらぬか?」

「知ってそうで怖いから敢えて聞いてませんよ…」

 ルーシュは男として育てられたため男勝りだが、決して男になりたい訳ではない。
 心の性別はちゃんと女だ。
 そしてポラリスは立ち振る舞いこそ優雅だが、心の性別は男だ。
 その嗅覚で本能的にルーシュの性別を看破し、ルーシュが聖騎士であった頃からこうして口説いてくるのだ。
 おかげでポラリスがルーシュに絡んだ後の居心地の悪さと言ったら。

 ポラリスは男装しているし心の性別は男だしだが、見た目は美女なのだ。
 それもめったにお目にかかれぬレベルの。
 身長が高く体の凹凸は乏しいが、顔だけでソレを補って余るおつりがくる。

 ルーシュだって自分が男だったらポラリスの求愛に脊髄反射で答えた事だろう。
 だがその場合、女が好きなポラリスがルーシュを好きになる可能性が無いので虚しい想像だが。

「それにしても、メイド姿。本当に愛らしい」

「ポラリス様、1度眼科を受診する事をお勧めします。こんなデカい女の何処が可愛いんですか?」

「審美眼は至って標準のつもりだが?お主こそ1度ちゃんと鏡を見た方が良いぞ。もれなく美少女が拝めるぞ」

「いや、精々良く出来た女装でしょ?鏡見る気になりません、マジで」

「相変わらず自己評価の低い女子だ」

「剣と魔術にはそこそこ自信があります」

「お主の実力でそこそこと言いう辺りで充分自己評価が低いぞ。1人で1軍隊滅ぼせる実力がありながら」

「私の友人に比べたら蟻とドラゴン位の差はありますよ」

「それは友人がおかしいと思うぞ…」

「仕方ないじゃないですか。心開ける友人がサイヒだけだったんですから!基準が全部サイヒ基準になるんです!」

「あの聖女が世の基準だったら世の中のほぼ全てが微生物だぞ…蟻な分、お主も十分規格外だ。そしてあの聖女は人外だから基準はするな」

「私の唯一の友人を人外扱いしないで下さいよ…」

「ちょっとした嫉妬だ。拗ねるな、可愛くて食べてしまいたくなる」

「ひぃっ!」

「そこまで怯えなくても良いだろう?こんな場所では襲ったりはせん。ちゃんとムードのある初体験を用意してやるから期待して待っておれ」

 白い騎士服に身を包んだ男装の王女は、手をひらひらと振りながら去っていく。
 そんな姿まで様になっていて、ついこの間まで男装していたルーシュはなんだか悔しい思いをする。

「私より身長低いくせにぃ~っ!」

 ルーシュ174センチ。
 ポラリス173センチである。
 
 ちなみに167センチのサイヒには会うたびに「縮め」と頭を押さえつけられるのは様式美である。

「って、早く帰らないとウチの聖女が五月蠅いな」

 :::

「何時までトイレに時間かかってるのよ!どんだけ糞詰まり起こしてたわけ!?」

「いえ、城内が広くて迷子になっておりました。申し訳ありません聖女様」

 今日だけは糞聖女のウザさも可愛いものだと思う。
 それほどポラリスとの会話に疲れたのだ。

(あの人と話すとドッと疲れるんだよなぁ…何で懐かれたんだ?)

 肩を落としルーシュは溜息を飲み込んだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 会うたびにサイヒに頭を押さえつけられるルーシュ。
 2人はお互い唯一の同性の友人なのでとても互いを大切に思っております。
 ルーシュはサイヒが基準で物事を考えるので自分を小さく見積もりがちですが、その実”類は友を呼ぶ”で規格外の戦闘能力を持った人誑しです(*´▽`*)
しおりを挟む
感想 197

あなたにおすすめの小説

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...