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今日は王都の外れにある教会の掃除と結界の張り直しが仕事だった。
結界を治すために勿論、糞聖女も着いてくる。
正直居ない方が掃除ははかどるだろう。
結界も法力が多い神官が修復しても十分なのだが。
こう言ったパフォーマンスをする事で民から聖女への支持を集めているのだ。
なので森に入る時なんかとは違い、今日は聖女もお淑やかだ。
いや、聖女はルーシュ以外の前では酷い無茶振りはしないし、そこまで口も悪くない。
ただただルーシュの存在が気に入らないだけだろう。
聖女は”平民嫌い”なのだ。
コレは大抵の貴族に言える事なので聖女に限らないが。
実際、前回の結界の張り直しでも子爵家出身のイケメン騎士にはデレデレしていた事だし。
聖女である上、伯爵家令嬢である事が聖女の我儘を加速させている。
その専らのはけ口が平民のルーシュなのである。
平民の女で法力も無いくせに聖女付になったメイド。
これが聖女は気に喰わないのだ。
ルーシュの父親が新たな戸籍を”平民”で作成した余波がここに来ている。
父親を半殺し(×数十回)したルーシュの気持ちも分かると言うものだ。
そして最近、これまでにも増して聖女がルーシュを罵倒する理由。
それは2週間前から神殿に居る”シスターハナ”の存在だった。
黒髪に青銀の瞳を持つ美麗のシスター。
同性でも見惚れるその美貌。
聖女も一目で夢中になった。
だがシスターハナが話をするのは何時もルーシュにだ。
聖女が傍に居てもルーシュと一緒にいる。
それが聖女は気に喰わない。
掃除もせずにサボる聖女が真っ先に気付いた。
「あ、何で、何で魔獣が王都に入り込んでいるのよーーーーっ!!」
聖女の言葉に教会から人がわらわら出てくる。
真っ白なグリフォンが人を乗せて教会に近づいて来ていた。
悲鳴を上げる神官にシスター。
だが距離が近づき、グリフォンに乗っているのが美麗の青年だと分かると、ざわめきが色めきだってきた。
シスターハナが前へ歩みでる。
グリフォンはソレを迎え、騎乗していた人物は降りるとシスターハナを抱きしめた。
そして重なる唇。
美しいシスターへ口づけする美しい迎え人。
ほぅ、と誰もがその美しい光景に溜息をついた。
そこで帰ってくれればルーシュの身にも災厄は降りかからなかっただろう。
だがシスターハナはルーシュを呼びよせた。
そして迎え人とも会話をし、2人が去る頃には随分と親しくなってしまった。
それが聖女の怒りを買った。
「なんで平民のアンタがあんな位の高そうな方と話しするのよ」
「シスターハナの婚約者を紹介して頂いただけです」
「迎えに来た人、かなり位の高い貴族でしょ?その婚約者のシスターハナも位が高い訳よね?何でアンタみたいな平民と友人なんてしてるのよ!」
「昔別の国の教会に仕事で行った時に仲良くなったんです」
嘘はついていない。
当時は聖女と聖騎士と言う身分だったが。
パシャッ!
ルーシュの顔に聖女が飲んでいた果実酒がかけられた。
「どうせ身分の卑しいアンタがお人好しなシスターハナをしつこく追いかけまわしたんでしょ!魔獣も倒せるくらいの剣の使い手のアンタに迫られたら怖くて”迷惑だ”て言えなかったんだわ!剣1つで魔獣を殺しまくるこのバケモノ女!」
その言葉にルーシュの表情がすっ、と引いた。
雰囲気が変わったルーシュを見て聖女が怯える。
無表情な顔の中で双眸だけが剣呑な光を宿していた。
「人をバケモノと呼ぶなら、バケモノと今対峙している事は理解されていますよね…バケモノが剣を帯刀している事も分かってますよね?今この場に聖女様とバケモノ2人しか居ない事はご存じですよね……」
「ヒィッ!!」
ガタガタと聖女が震える。
口をパクパクと動かすが声が出ない。
”平民の癖に”と何時ものように罵倒できない。
目の前の存在が、この前命を奪われそうになった魔獣を剣の一振りで首を落としたのを自分は見たのだ。
ショロロロロロロ…
ソファが聖女の体液で濡れた。
プン、とアンモニア臭が鼻をつく。
「お話は終わりで宜しいですね?では私はまだ仕事がありますので」
ルーシュが部屋を出て行くと、聖女はルーシュの消えた扉を睨みつけながら「平民の癖に、許さない!」と呪詛を吐いていた。
:::
「あ~やっちゃった…これは仕事辞めさせられるかな?」
そうなったら冒険者になるのも良いかも知れない。
まぁ”お漏らし”をした聖女がこのまま黙っているとは思わないが。
何せ性格が悪い。
ルーシュが剣を抜かない範囲での嫌がらせが増えるだろう。
「面倒臭い事になったな…ま、良いか。今日はもう寝よう。サイヒのせいで疲れた……」
自室に戻ると己のベッドの向かいには空のベッド。
つい昨日までソコにはサイヒが居たのだ。
静かな自室に溜息が出る。
「私、結構楽しんでいたんだなぁ」
ゴロリとベッドに寝転がって、そのまま意識を夢の中に落とす。
サイヒとの文通に使っている魔道具が発動している事を、ルーシュは気付かないまま眠りについた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
サイヒが出て行ってしましました。
が、魔道具が反応しております。
これからは「聖女の力を姉に~」と時間系列もリンクしながら書いていくので、両方読んで下さると片方では意味の分かりにくい所も説明されていたりとかもします。
どうぞお付き合いください(*´▽`*)
結界を治すために勿論、糞聖女も着いてくる。
正直居ない方が掃除ははかどるだろう。
結界も法力が多い神官が修復しても十分なのだが。
こう言ったパフォーマンスをする事で民から聖女への支持を集めているのだ。
なので森に入る時なんかとは違い、今日は聖女もお淑やかだ。
いや、聖女はルーシュ以外の前では酷い無茶振りはしないし、そこまで口も悪くない。
ただただルーシュの存在が気に入らないだけだろう。
聖女は”平民嫌い”なのだ。
コレは大抵の貴族に言える事なので聖女に限らないが。
実際、前回の結界の張り直しでも子爵家出身のイケメン騎士にはデレデレしていた事だし。
聖女である上、伯爵家令嬢である事が聖女の我儘を加速させている。
その専らのはけ口が平民のルーシュなのである。
平民の女で法力も無いくせに聖女付になったメイド。
これが聖女は気に喰わないのだ。
ルーシュの父親が新たな戸籍を”平民”で作成した余波がここに来ている。
父親を半殺し(×数十回)したルーシュの気持ちも分かると言うものだ。
そして最近、これまでにも増して聖女がルーシュを罵倒する理由。
それは2週間前から神殿に居る”シスターハナ”の存在だった。
黒髪に青銀の瞳を持つ美麗のシスター。
同性でも見惚れるその美貌。
聖女も一目で夢中になった。
だがシスターハナが話をするのは何時もルーシュにだ。
聖女が傍に居てもルーシュと一緒にいる。
それが聖女は気に喰わない。
掃除もせずにサボる聖女が真っ先に気付いた。
「あ、何で、何で魔獣が王都に入り込んでいるのよーーーーっ!!」
聖女の言葉に教会から人がわらわら出てくる。
真っ白なグリフォンが人を乗せて教会に近づいて来ていた。
悲鳴を上げる神官にシスター。
だが距離が近づき、グリフォンに乗っているのが美麗の青年だと分かると、ざわめきが色めきだってきた。
シスターハナが前へ歩みでる。
グリフォンはソレを迎え、騎乗していた人物は降りるとシスターハナを抱きしめた。
そして重なる唇。
美しいシスターへ口づけする美しい迎え人。
ほぅ、と誰もがその美しい光景に溜息をついた。
そこで帰ってくれればルーシュの身にも災厄は降りかからなかっただろう。
だがシスターハナはルーシュを呼びよせた。
そして迎え人とも会話をし、2人が去る頃には随分と親しくなってしまった。
それが聖女の怒りを買った。
「なんで平民のアンタがあんな位の高そうな方と話しするのよ」
「シスターハナの婚約者を紹介して頂いただけです」
「迎えに来た人、かなり位の高い貴族でしょ?その婚約者のシスターハナも位が高い訳よね?何でアンタみたいな平民と友人なんてしてるのよ!」
「昔別の国の教会に仕事で行った時に仲良くなったんです」
嘘はついていない。
当時は聖女と聖騎士と言う身分だったが。
パシャッ!
ルーシュの顔に聖女が飲んでいた果実酒がかけられた。
「どうせ身分の卑しいアンタがお人好しなシスターハナをしつこく追いかけまわしたんでしょ!魔獣も倒せるくらいの剣の使い手のアンタに迫られたら怖くて”迷惑だ”て言えなかったんだわ!剣1つで魔獣を殺しまくるこのバケモノ女!」
その言葉にルーシュの表情がすっ、と引いた。
雰囲気が変わったルーシュを見て聖女が怯える。
無表情な顔の中で双眸だけが剣呑な光を宿していた。
「人をバケモノと呼ぶなら、バケモノと今対峙している事は理解されていますよね…バケモノが剣を帯刀している事も分かってますよね?今この場に聖女様とバケモノ2人しか居ない事はご存じですよね……」
「ヒィッ!!」
ガタガタと聖女が震える。
口をパクパクと動かすが声が出ない。
”平民の癖に”と何時ものように罵倒できない。
目の前の存在が、この前命を奪われそうになった魔獣を剣の一振りで首を落としたのを自分は見たのだ。
ショロロロロロロ…
ソファが聖女の体液で濡れた。
プン、とアンモニア臭が鼻をつく。
「お話は終わりで宜しいですね?では私はまだ仕事がありますので」
ルーシュが部屋を出て行くと、聖女はルーシュの消えた扉を睨みつけながら「平民の癖に、許さない!」と呪詛を吐いていた。
:::
「あ~やっちゃった…これは仕事辞めさせられるかな?」
そうなったら冒険者になるのも良いかも知れない。
まぁ”お漏らし”をした聖女がこのまま黙っているとは思わないが。
何せ性格が悪い。
ルーシュが剣を抜かない範囲での嫌がらせが増えるだろう。
「面倒臭い事になったな…ま、良いか。今日はもう寝よう。サイヒのせいで疲れた……」
自室に戻ると己のベッドの向かいには空のベッド。
つい昨日までソコにはサイヒが居たのだ。
静かな自室に溜息が出る。
「私、結構楽しんでいたんだなぁ」
ゴロリとベッドに寝転がって、そのまま意識を夢の中に落とす。
サイヒとの文通に使っている魔道具が発動している事を、ルーシュは気付かないまま眠りについた。
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サイヒが出て行ってしましました。
が、魔道具が反応しております。
これからは「聖女の力を姉に~」と時間系列もリンクしながら書いていくので、両方読んで下さると片方では意味の分かりにくい所も説明されていたりとかもします。
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