男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

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 本日の聖女の仕事は城での王への謁見だ。
 そののち、王家、聖騎士たちへ加護を与える。
 騎士ではなく聖騎士と銘打っている事に、本当に上流階級の者たちは身分への拘りがお強いもんだとルーシュは溜息を吐いた。

 城への聖女の護衛はルーシュが役を授けられた。
 正直嬉しくない。
 だが剣を帯刀した者を傍付として城へ行く訳にはいかない。
 なので今日のルーシュはメイド服に、スカートの下に仕込んだ暗器の短刀だけが護衛の装備だ。
 正直殺す気なのかと問いたい。

 何処の世界にメイド服に短刀だけで護衛をさせる輩が居る?
 いや、此処に居た。
 馬鹿なの?
 いや、馬鹿に違いない。
 何も起こらないのを祈るだけだ。

 :::

 聖女はご機嫌だ。
 王族だって聖女を無下にできない。
 謁見の間で言葉を受け賜わって、聖女は詠唱をし光の加護を授けた。
 光が降り注ぐその光景に謁見の間に居た誰もが「流石は聖女様だ!」と聖女が調子に乗る様な事を興奮して口に出す。

 正直サイヒの能力を知っているルーシュとしては、”目に見える”かたちでしか加護を授けられない聖女が何とも無力だと思う。
 サイヒなら指を鳴らすだけで王都全土の生物に加護を与えられてだろう。
 与えられた者もそのことに気付かない間に。

 力を具現化させねばならぬなど強者にはありえない。
 ましてや詠唱を必要とする聖女など論外だ。

 ルーシュは法力こそないが魔力はそこそこ自信を持っている。
 魔術の構築にも自信がある。
 魔術を使う際、ルーシュは詠唱を必要としない。
 ノーモーションで大規模魔術を放つことなど造作もない。

(この糞聖女はサイヒの言ってたとおり、すぐに解雇になりそうだな)

 欠伸をかみ殺して、ルーシュは誇らしげな顔をしている勘違い聖女の旋毛を眺めた。

 :::

 聖騎士団が訓練を積む広場は王宮内でもかなり内部にある。
 騎士団ならもう少し城の入り口に近い所にあるのだが。
 ルーシュはこの制度も嫌いであった。
 王族は聖騎士が守る、市民は騎士が守ると言う考えそのものではないか。
 血統至上主義に嫌気がさす。

 上流階級の者に碌な者は居ない。
 税で食っている癖に、肝心な時には民を守らない。
 そんな貴族をルーシュは短い人生の中で幾人も見て来た。
 まぁ自分の父親みたいに善意しかない馬鹿貴族もいるが…それはそれで問題な気がする。

「キャー!聖騎士団長様、こっち見たわ!ポラリス様が私を見て笑った!!」

 訓練所に付けば聖騎士団長であるポラリスが、コチラに向けて優し気な微笑みを浮かべていた。
 聖女はそれが自分に向けられたものだと思ったらしい。
 ルーシュだってそうであれば良いな、なんて現実逃避をした。
 だが現実は虚しく…。

「ルーシュ!会いたかったぞ!!」

 聖女がポラリスに礼をしようとした瞬間、ポラリスが聖女をスルーしてルーシュに抱き着いてきたのだ。

「な、なななななな何でアンタが抱き締められているのよ――――――っ!!」

 聖女の大声が訓練所に響いた。
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